145 勇者として④(ルージュ視点)
「う、うーん」
「いたた……」
ファーシラとメルヤが目覚めたのを見て、ボクは二人に抱きついた。二人はヘカロスに刺されて気を失っていたのだ。
あのままだったら二人は死んでいた。でもクロスが仙薬という薬を使って二人を助けてくれたのだ。
クロスがボクを含む三人を担いでとんでもないスピードで街へと運んでくれた。行きはかなりかかった道なのにあっという間に街に戻ってしまったのだ。
「突然現れたあの魔族の男はどうなったの!」
ファーシラの声にボクは返事をしようとしたがそれよりも早くクロスは喋った。
「ルージュが倒したんじゃ。さすが雷鳴の勇者じゃな。最後の一撃は見事だった」
確かに倒したのはボクかもしれない。でも剣を強化してくれたのはクロスだし、クロスがいなければ勇者パーティは全滅していた。
「クロスくんも無事だったのね」
「うむ、ボロボロだったおぬし達を介抱させてもらったわい」
大けがをしてまだ体力が戻っていないファーシラとメルヤをベッドで寝かせ、ボクとクロスは外へ出る。
「さて儂はそろそろ王都へ戻ろうかと思う」
「もう行くの?」
「学園へ戻らねばならん。仕事が残ってるからな」
まだまだ話したいことはいっぱいあった。剣のこと。その強さのこと。そして。
「魔王軍の三柱を打ち倒したことはボクだけの成果じゃないのに」
「いいんじゃよ。儂がしたくてしたことじゃ。それでおぬしの望みに繋がるなら儂は力になろう」
やはりクロスは自分の成果を公にしないようにしている。理由はあるんだけど、ボクがそれを阻止するわけにはいかない。クロスの言うとおりその成果を借りることにする。
「よく頑張った」
優しい顔で微笑んで頭をなでてくれた。やっぱりこの感情は間違いない。ボクは寂しくてクロスに抱きついていた。
「また会える?」
「うむ。儂は王都におる。運び屋として仕事を頼みたければまた依頼するが良い」
「だったら……」
◇◇◇
「ルージュ・ストラリバリティ。1週間だけだけど宜しく」
制服に身を包み、挨拶をする。
知り合いがシャルーンとクロスしかいないけど大丈夫かな。まぁいいか。
あの戦いの後、ファーシラとメルヤと一時的に別れて、ボクは王都へと来た。
目的はただ一つで、王城に行き、シャルーンに頼み込んで王立学園に短期入学させてもらえることになった。
「ルージュ、おぬし……まったく」
「これでまた一緒にいられるね」
教室でため息をつくクロスがそこにはいた。一緒にいられる時間が嬉しい。
うーん、でもこの制服窮屈でイヤ。虹の羽衣は着たままだし、脱いじゃおうっかな。
いっぱい彼にアプローチしなきゃね。
3章終了、ルージュ合流となります!
今回の更新はここで終了となります。
続刊が決まればまた書くことになりますのでその時は応援頂ければと思います。
しかし書籍版とWEB版の違いに苦しむことになりそう・・・。
それは追々ということで、発売した書籍版の方も応援頂けると嬉しいです。
ではでは!





