140 テントの中のハーレム②
「ルージュ、おぬしもどうじゃ」
「……」
ちらちらとこちらを見ていたルージュ。どうやらかなり気になっているようじゃ。儂の見立てだとこの二人よりもルージュの体の方が負荷が大きいように見える。雷鳴の力に前衛として剣を振っておるんじゃ。体に疲れがたまって当然か。伸び悩んでいる理由の一つとも言える。
「ボクはいい」
無理にやれとは言わん。断るならそれも仕方なし。疲れているのは見て分かるのに何でじゃろうな。そんな様子にメルヤが声を上げる。
「ごめんねクロスくん。本当はルージュちゃんもマッサージを受けたいんだけど理由があるの」
「理由?」
「実はルージュちゃん。すっごくくすぐったがり屋だから触られるのが駄目なの。肩とか触れるだけで震えちゃうから遠慮してるのよ」
「そうじゃったか。安心せい。儂の施術はそのようなことはない。ちゃんと気持ちいいだけじゃ」
「ほんと?」
「うむ」
百年以上磨いた儂の施術に失敗などない。ルージュにもちゃんと安らぎと快楽を与えてやろう。
ルージュはかなり躊躇していたが二人に進められマッサージを受けることになった。
ルージュをマットに寝かせる。ううむ、これは思ったよりひどいな。しっかりと施術してやらねば三十代くらいで体を壊してしまうぞ。
魔王を倒すため、父を探すために過剰に鍛錬をしているんじゃろう。儂はルージュの背中に手をやった。
「あひゃっ!? だめっだめぇっ!」
「まだ何もやっておらんが」
「ルージュちゃん、敏感体質だから」
「いくらなんでも限度があるじゃろ」
次は肩に手をやる。
「ひゃあっ。やめてっくすぐったい!」
ルージュは首をくねらせて逃げ惑う。いつもは無表情くせに随分と反応がいいな。これだけ動かれるとさすがにやりづらい。試しに脇腹をつついてみる。
「ふひひっ!」
思いっきり跳ねた。まな板の上の鯉のごとし。
こやつ……。儂の施術を上回る敏感体質じゃと……。このままではちゃんとした施術が出来ぬ。まぁ良い。最終条件はルージュの体に安らぎを与えることじゃ。そんなわけでルージュの脇腹をぐにぐにと揉むことにする。
「っ!? あひゃひゃひゃ! なになに、やめてぇっ!」
凄い反応じゃな。だがそれでいい。ちっ、暴れるでない。儂はルージュの背中のツボをグリっと押す。するとルージュはぴくりと動かなくなった。
「十分動けなくなるツボを押した。これで暴れることはできん。だがこの状態では施術効果が半分になるのでな。続けるぞ」
「あははは!? なんでなんでぇ!?」
再びルージュの脇腹を揉み続け、ルージュは笑い狂い続ける。
「く、クロス……何やってるの?」
「くすぐったさはある程度続ければ慣れるらしい。なので徹底的にくすぐって疲れさせてから施術を行えばよい」
「さっき儂の施術は大丈夫って言ってなかったっけ?」
「くすぐったくないと言ってない」
「あんた都合のいい性格してるわね」
「ああっ! わ、脇はだめっ。きゃははははははっ。メルヤ、ファーシラ助けてぇっ!」
「ほうここが一番弱いのか」
脇の下を五本の指でコリコリしてるととても嬉しそうに反応する。
「きゃはははは! 死んじゃうっ!」
「この後死ぬほど気持ちよくしてやるから今は笑うとよい」
ルージュを仰向けに寝かせ腋を攻め続ける。動けないルージュはビクビク震え、胸を揺らしていた。同年代の男子が見たら発情してしまうじゃろうな。儂は何も感じないが。さて気にせずもっと攻めよう。
「あああああっ!」
「ルージュちゃんがこんなにうるさいの久しぶりかも」
「そうね。十年前の件で勇者として自制する性格になったけど昔はこんな感じだったものね」
昔を思い出し二人はほろりと涙ぐむ。
「よし、二人は足の裏をやってくれ。これで終わりじゃ」
「分かったわ」
二人が足の裏に指を走らせ、ルージュの反応がさらに上がる。
「あああっ! 三人は駄目っ! 死ぬっ、死ぬっ! あははははははっ!」
最後はルージュの体中に指を走らせて終了。これで施術を行うことができるな。
「あへぇ……無理ぃ」
汗だらけで涙目のルージュを見据える。脇の下に手を入れるとびくっと反応するがさっきまでのように暴れることはない。疲れ切って動かなくなったな。よしここから気持ちよくさせてやろう。雷鳴の力の源は……心臓か。筋力と体の筋からして……ここじゃな。施術開始。
モミモミモミ。
「クロス、何をやってるよ」
「マッサージじゃが」
「あたしにはルージュの胸を普通に揉んでるようにしか見えないんだけど」
「大胸筋とスペンス乳腺の接合部を揉みほぐすことで血行と雷鳴の力の源を同時に治療しているんじゃ。リンパ節の方をしっかり施術してやれば最大級の快感と治療が同じ」
「あぁん……。だめぇ」
「本当に大丈夫なのよねっ! ただエロいことしてるだけないわよねっ!」
幼女相手にするわけがなかろう。明日起きれば儂に感謝するはずじゃ。こうして騒がしい施術は終わりを迎える。
「ぐぅ……すぅ……」
「どうなるかと思ったけど気持ちよさそうに眠ってるわね」
「だから言ったじゃろう」
「胸だけならまだしもいきなり鼠径部とかお尻とか触り出すだから戸惑うわよ」
「仕方あるまい。雷鳴の力の源がそのあたりに集中しておったんじゃ」
「最初の施術がルージュだったら絶対にやらせてないわね」
ファーシラのため息と共に隣にいたメルヤも目が虚ろになってきた。
「今日はもう寝ましょうか。明日は街に戻らなきゃだし……」
「そうね。でも布団が三つで四人。どうやって寝よっか」
「儂は布団じゃなくても良いぞ。おぬしらが自由に使うといい」
「クロスくんにはいろいろしてもらったしあなたも疲れているわよねぇ。だったら」
どうしてこうなる……と思ったがまぁええか。そう、儂はファーシラとメルヤの間に挟まれて眠ることになってしまった。
「美女二人に挟まれるんだからいい夢見なさいよね」
「そーじゃのう」
少女二人ではいい夢は見れないのう。せめて五十歳まで老いてくれれば違うんじゃが。だがまぁくっつけ合って寝るのも良いか。儂も人肌が恋しいと思うことはある。
明かりは消され、儂は目を瞑った。
「ぐぅ」
「ねぇ……メルヤ起きてる?」
「……起きてるわぁ」
「クロス、爆睡してるんだけどあたしとメルヤに挟まれて一瞬で寝るってどんな感性してるの」
「私達のこと女の子と見てないんじゃないかしらぁ。あ、でもクロスくんって体つきしっかりしてるし、顔も悪くないし、がっついてこないから結構いい」
「ちょ、意識するようなこと言わないで! あたし達……お姉さんぶってるけど異性と付き合ったことなんてないものね。こんなに近くに男の子なんて初めてなんだけど」
「今日、寝れるかしら」
「寝るしかないのよっ! おやすみっ!」
「ふむ、二人とも良い匂いがする。もっと嗅がせてくれ」
「(ちょっと何か抱き寄せてくるんだけど!)」
「(あわわ……どうなっちゃうのかしら)」
「(眠れない!)」
そして朝、目覚めた。
ただのマッサージです(2回目)
コミカライズがここまで続けばすごく楽しい絵になるでしょうね
。





