139 テントの中のハーレム①
儂はルージュの手を引っ張り、テントの中に押し込んだ。
「風邪を引かないようにしっかり拭いてやってくれ」
儂はテントから離れようとする。
「クロスくんはどうするの。あの小屋は……ちょっと雨よけにならないよねぇ」
天井が陥没しており、小屋はもう使えそうにない。
「気にするでない。そこらの陰で休むとしよう」
雨の中での睡眠など慣れきっておるわ。ちゃんと体を暖めれば問題ない。冬の時期でもないしな。ファーシラとメルヤが見合う。
「良かったら今日はここで寝る? 一人ぐらいならスペースもあるし」
「良いのか?」
「あんたが悪い人間じゃないのは分かってるし、今回だけサービスよ」
「そうか。なら遠慮無く」
許可をもらったので汚れを拭いて三人娘のテントに侵入することにした。
「堂々と女の園に入ってきたわね。少しくらい躊躇しなさいよ」
「チャンスは逃さないというのが家訓なのでな」
長旅をするためか大きくて頑丈なテントを使用している。実際はテント型の魔法具であり、外から見るより中は広く普通に住めるのはないかと思うくらい広くなっていた。
おまけに外からは開けられないので外敵からの攻撃にも強い。女三人で旅している以上当然か。ファーシラもメルヤも旅の服を脱いで身軽な緩い寝間着となっている。じろっと見るとファーシラが反応した。
「ふーん、クロスもやっぱり男の子なのね」
「おねーさん達が膝枕してあげようかなぁ」
成人したての儂はこの中で一番年下じゃ。元来年下というのは一番からかわれるもの。
じゃが真実は違う。いくら三人娘が無防備な格好をしていても儂は一ミリも惑わされることはない。儂にはこの三人娘が幼女にしか見えてない。
二十歳以下は儂にとって少女、幼女カテゴリーじゃ。幼女が何をしたって可愛い以外の感情は浮かばない。そういうもんじゃよ。じゃが意識する気もないが、まったく意識してないと告げるのも相手にとって失礼。儂は大人じゃからな。よく知っている。
「おぬし達はとても魅力的じゃからな。こうやって親密に話せることを嬉しく思っておるよ」
にこりと笑ってみる。するとメルヤとファーシラが顔を赤くして背けた。
「そ、そう。それなら良かったけど」
「もう! そんな笑顔は駄目よぅ。年下好きがバレちゃう」
ルージュも儂も随分ずぶ濡れになってしまった。しかし気になることがある。
「ルージュ。髪は濡れているのに服は濡れておらんな。どうなっておる」
ルージュの着ている虹色の服はあれだけの雨にもかかわらずすぐに乾いていた。
「これは虹の羽衣。ボクのお家には家宝となる魔法の装備が残されているの。あらゆる属性の魔法に耐性を持っていて、装備者の年齢に応じて姿を変える伝説級の防具。ボクのお気に入りでとても可愛いから子供の頃からいつも着てるの」
可愛いのは間違いないが肌色面積が多すぎて若者の目に毒なのも事実。
「年齢に応じてと言っておったがその割に小さすぎないか」
「ん。作製者が貧乳だったんじゃないかって言われてる」
作製者の十六歳がベースじゃったのか。逆だったら着れないし、小さく作って正解だったのかも。
その後は濡れた体をファーシラの魔法で温めてもらい、寝るまでの間雑談が始まる。
お互いの故郷のことを話し合った。メルヤやファーシラは代々ルージュの一族を守護する家系で攻撃魔法や回復魔法に長けていたそうだ。
ルージュが旅に出る時に一緒に行くのは決められていたようで三人の絆は非常に強いのも頷ける。
「ふぅ……」
メルヤは少し疲れたようなため息をついた。
「まだ早いけどもう寝る?」
「眠たいわけじゃないのぉ。どうにも最近体がこっててね」
「分かる分かる、あたしもなの。街に戻ったらエステに行こうかしら」
確かに三人全員疲れがたまっているように見える。いくら外の旅に慣れているといっても十年単位ではない。疲れは少しずつたまってしまうもの。テントでの睡眠では疲れを取り切ることはできぬ。
「ならば儂がマッサージしてやろうか? 筋肉の流れを読めばある程度どこが悪いか見えてくる」
「え」
メルヤとファーシラは目をぱちくりとさせた。
「故郷でも良くやっておったからな。儂の指使いは男女変わらず好評じゃぞ」
父上も母上も村の若造達みんな施術をしてやったからのう。儂は薬術を覚える過程で人類の体を熟知するようになった。ツボを刺激させて体を活性化させる術を得意としている。
「じゃ、じゃあお願いしようかしら」
「メルヤ! いいの? 相手は一応男の子よ」
「疲れてるのは事実だし……クロスくんに邪な気持ちが無いのは分かってるからぁ。それに年下の子相手に断るのはおねーさんらしくないじゃない?」
「それはそうだけど」
何やら二人でこそこそ話をしているが儂としてどっちでも良い。施術するには変わらんからな。
メルヤをマットの上にうつ伏せで寝かせる。薬草を混ぜて作ったジェルを手にすり込ませて、メルヤの背中に塗りたくる。
「ひゃうっ」
甘美な声を上げるが気にしない。儂には産声にしか聞こえんからな。
ぬりぬり白い肌に触れ、体を少しずつ暖めていく。ファーシラが横から監視するように見てくるが……儂はやることをやるだけよ。
「なるほどな。補助魔法の使いすぎで血行が悪くなっておる。安心せい、これならすぐ良くなるぞ」
「ほ、ほんと?」
「では行くぞ」
「ひゃああああああっ!」
思いっきり肩を揉んでツボに指を入れてぐりぐりとまわす。
「メルヤ大丈夫!?」
「あ、あ、あ……キモチイイっ」
「へ」
「儂の施術は痛まんように快楽に溺れるようにしておる。クセになるぞ」
「快楽!?」
「すけべえな意味ではないぞ。施術の本懐は安らぎじゃからな」
「わ、分かってるわよ」
ファーシラは顔を赤くして訴えてくるがそうには見えんな。ま、この年頃の小娘の脳内なんてそんなもんじゃろう。施術は無事終わった。
「ふぇぇぇ……とても良かったよぉ」
「おっとりお姉さんキャラのメルヤが幼児化してる」
「このままゆっくり眠れば明日は快適のはずじゃ。で、ファーシラはどうする」
「えっと……。お願いしようかしら。変な所はなかったし」
ファーシラは顔を赤くしてドギマギとする。
「あたしも気持ちよくして欲しい」
「あい分かった。横で寝るといい」
同じようにファーシラにも施術を行う。魔術師ゆえに魔法を使う臓器が疲れておるな。
そのあたりを揉むようにする。
「うぅ! こ、これは凄いわ。メルヤが骨抜きにされる理由が分かるかも」
「おらおら我慢するでない。もっと気持ちよさそうにせんかい」
「ああっ! だめぇ。これ以上されたらあたし……もうっ!」
「さて本気で行くぞ」
「う、嘘。これからが本気? ああっ! らめぇえええええっ!」
施術完了。
「はぁ……はぁ……。こんなの初めてぇ」
「凄かったわよねぇ。クロスくんの手技。やみつきになりそう……」
良い顔になったな。この前社長にもしてやったら一瞬邪気が飛んで明るくなったからのう。マッサージを商いにしても良いのかもしれん。さて……最後は。
ただのマッサージです。
何一つえっちなことはしていません。





