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【書籍化】老練の時空剣士、若返る〜二度目の人生、弱きを救うため爺は若い体で無双する〜  作者: 鉄人じゅす
間章 幼年編

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112 どうしてこうなった(※父親視点)

 口の中のもん全部吹いたわ。こいつ今なんつった!? プロポーズって、こいつミランダ婆さんが好きなのか!


「おまえいくつだっけ」

「もうすぐ2歳じゃ」


「ミランダ婆さんは?」

「今年で72歳と言っておる」


「年の差70じゃねぇか!」

「年の差などさしたる問題ではなかろう」


「その年齢差は今まで聞いた中でも最長だよ! それを自分の息子から聞くことになるとは……。おまえ、本当にミランダ婆さんがいいのか」

「うむ。どうやら儂はミランダに恋をしているようだ。初恋じゃな」


 早すぎんだろ。2歳で恋してる奴なんて聞いたことないぞ。

 クロスが2歳らしかぬ深いため息をつく。今時の若者ってここまで進んでいるものなのか。


「まだエレナが好きとかなら分かるんだが」

「母上も悪くはないがもう少し骨盤の成長が良くないとな。せめてあと30年は老いねば足らんよ」

「おまえ絶対それエレナに言うなよ」


 エレナは最高の女だぞ。里の女で一番美人だし、胸も大きいし、尻もでかい。

 侯爵令嬢だけあって本当に美しいんだ。

 王都で一目惚れして口説きまくってからエレナ以上の人間なんて存在しないくらい愛しているんだ。

 って今はそんなことはいいか。


「ほら、テレーゼとかどうだよ。あの子多分可愛くなるぞ」

「あぁ? 赤子に興味はない。目に入らんよ乳幼児は」

「おまえと一年しか変わねーよ!」


 だがクロスの意志は頑なだった。

 とにかくミランダ婆さんに想いを寄せている。


「運命とは残酷よ。もう少し若ければ積極的にいけたんじゃろうか」

「それ以上若くなったら乳飲み子じゃねぇか」

「父上、儂はどうすればよい」


 2歳の初恋なんてあまりに前例がなさ過ぎて回答に悩む。

 しかも相手が70歳年上の婆さんの時点でもう冗談だろ。

 しかし父としてはっきり答えてやらねばならん。


「婆さんはクロスのことをどんな風に見てるんだ」

「儂のことを一人の男としては見てないようだ。そう簡単にいかぬから落とし甲斐があるというもの」


 単純にどこかピントが合ってないような気がする。

 恋愛感がズレてるというか……。初恋なら仕方ないのか? 何となく長年恋愛をしてないような拗らせ方だ。

 まぁクロスが2歳である以上、気のせいだと思うが。


「クロスは魔法を婆さんから学んでいるんだよな。婆さんに見惚れて何も聞いてないとかないよな」


 クロスはぐわっと強い目で睨み付ける。


「そんなことはせぬ! ミランダはずっとこの集落の行く末を気にしておった。儂は残念ながら魔法の才はない。しかしミランダから学んだことは絶対無駄にはせぬ!」

「だったらそのまま余計なことはせず、行く末を安心させてやれ」

「え?」

「婆さんはきっとクロスを最期の弟子だと思っているはずだ。だから最期の時まで弟子らしくいった方がいい。婆さんを想うならな」


 実際、恋愛感情を吐いた所でどうにもならないだろう。

 さすがに婆さんも驚くだろうし、70歳差が成就するなんてまずはない。だったら魔法の師弟の関係のままで終わらせた方が良い。


「男なら惚れた女を喜ばせてやれ。それが一番大事だ」

「……」


 クロスは静まったように熟考し始めた。

 年齢の割に聡い子だからいろいろと考えているんだろう。

 ばっと立ち上がる。


「父上、もう日が暮れてしまっているが……ミランダの所に行ってきては良いだろうか」


 エレナだったらもう遅いからダメというだろうが、自分なりの答えを出した息子に対して俺は否定をしたくなかった。


「エレナはあと一時間くらいで帰ってくるはずだ。それまでに帰ってこい。それが条件だ」


 クロスは俺の言葉にぱぁっと明るくさせる。そんな笑顔は年相応だよな。

 あっと言う間に玄関まで走り出してしまった。


「やはり父上は父上じゃな。初めて尊敬の念を覚えたぞい」

「そうかそうか。っておい!」


 初めてってなんだ! と言うつもりも我が子はあっと言う間に外へ走り出してしまった。

 俺結構家族のために頑張ってるんだけどなぁ……。それも父親としての役割なのかもな。

 結局クロスは一時間で帰ってこず、行かせた俺共々エレナに思いっきり叱られ、正座させられるハメとなった。

 怒られている中もクロスは良い顔をしていた。きっと納得できる答えを見つけたんだろう。

 エレナの説教が終わった後、クロスは俺にこう言った。


「儂はまだ知らぬことが多いな。人生とは学ぶことだらけじゃ」


 おまえ本当に2歳だよな!? 達観しすぎじゃないか!


 それから1週間が経ち、ミランダ婆さんはみんなに惜しまれつつ見守られて亡くなった。

 本当に惜しい人で集落中の人々がその死を悲しんだ。

 そして何よりも悲しんでいたのがクロス。

 やはり強く慕っていたんだなって思う。婆さんの前では笑顔で居続けたクロスが塞ぎ込んでしまった。


「あのクロスでも大事な人を亡くすと塞ぎ込むのか」


 人よりも成長の早い子が見せる涙。

 身近な人の死は辛く悲しいものなんだ。

 だからこそこう思う。


「近いうちに……《《大事な人が亡くなるかもしれない》》なんて言えないよな」


 その時が迫った時、クロスがどんな顔をするか俺は想像することを止めた。

 そして春が来る。

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『老練の時空剣士、若返る~二度目の人生、弱きを救うため爺は若い体で無双する~』

2024年5月24日 発売です!

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