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まだ、明日になる前に  作者: 桃柿モノ木
33/50

『七人の魔女』

『七人の魔女』とは、アレク連合国内で流行った絵本の名前だ。

 幼い頃から魔法を使う者に対しての心向きを教えようと、連合国が内容を編集したもので、話自体は何てことは無い、どこにでもあるような勧善懲悪の物語が描かれている。

 とある地方に悪い魔法使いが居て、ふらっと立ち寄った少年がそこで暮らす人々と協力して打倒する。

 寝物語にしても珍しく、登場する主人公が十代の子どもという事もあり、この連合国では知らない者はいないという程に有名な話だ。


 「わざわざ魔法使いが倒される話から名前を取るのって、何でかなって思って」


 「・・・まぁ、それも当然な疑問だわな」


 と、そんな背景もあって、レノは疑問を呈された。


 「あー・・・まず聞いておきたいんだが。 お前はその『七人の魔女』って話をどこまで知ってるんだ?」


 「どこまで・・? 話は全部読みましたよ?」


 「いや、そういう意味じゃなくてだな・・・」

 

 「フム・・」とレノは唸り、「まず、この物語には原典があるって知ってたか?」


 「・・・原典?」


 「えーっとだな・・・・つまりは物語の元になった書物の事だ。 知ってたか?」


 「いえ・・」


 緩々と首を振るカザリ。


 「・・・・・・。」


 「何ですか・・」

 

 「いや。 長くなりそうだなーと思ってな」

 

 不満そうにするカザリを尻目に、レノはどこから話をしたものかと考えて、


 「・・・んんっ」


 咳ばらいを一つ。

 レノは口を開いた。


                    ▽▽▽


 「まずこの『七人の魔女』が書かれたのが何年か知っているか、カザリ」


 「いえ・・・物心ついた時には手に取って読んでて。 おばあ・・・祖母も子どもの頃に読んでいたって聞きましたけど」


 「ま、そこら辺は知る必要もないからな。 というか、知っていると不都合がある場合が多いってのもあるし」


 「・・? 不都合、ですか?」


 「まぁ、隠すことは無いんだが。 ―――その物語が執筆されたのは今から百年ほど前。 アレク連合国が樹立して間もなくの事だ」


 「へぇー・・・そんなに前からあったんですね」


 「まぁ、新しい国の樹立に合わせて編集されたんだろうな。 その当時では貴族連中が支配する世の中が常であって、魔法を脱却した人のための国ってのが考えられなかったからな。 その後を見据えた養育の方針だったんだろうさ」


 「は、え・・? そうなんですね・・・?」


 「・・・分からない事は正直に言っていいんだぞ」


 「別に・・・知ってますから・・・・」


 「はいはい・・・・んんっ。 それでだな、『七人の魔女』と題された物語は百年前に執筆されているんだが、その原典はというと現代から更に四百年ほど遡っての事になる」


 「・・・・四百年、ですか」


 「嫌そうな声だな」


 「・・・この国の人間がエルクシア王国について話されて楽しそうにする訳無いでしょ」


 「ま、それもそうだよな。 何しろアレク連合国の前身、人類史における最初の魔法国家だものな――イテッ! 悪かった、悪かった。 後ろから蹴らないでくれ」


 「・・・・・・。」


 「・・・そこら辺は本当にデリケートだな」


 「なら悪戯に刺激しないで欲しいんですけど? これでも押さえてるんです」


 「流石は連合国の徒・・・思想が行き届いてらっしゃる」


 「いいから続けて下さい」


 「はいはい。 そんで今から四百年前・・・エルクシア王国の西方で生まれた商人、ユセフ・カルマンによって執筆された『エノア地方見聞録』って本が、この話の主題となってくる」


 「・・・。」


 「まぁ、色々と疑問は浮かんでるだろうが・・・まずは題名から説明していこう。 カザリはエノア地方という名称に心当たりはあったりするか?」


 「・・・ギノア地方、だったら知ってますけど」


 「あー・・・場所としては大体あってるか・・な? ・・まぁいい。 知っての通り、かつての王国はそれはそれは巨大な領土を召し抱えていた。 初期の頃は王の威光もあって通常の王制でもって運営出来ていたんだが・・・考えなしに近隣諸国を征服していくもんだから燻る因縁ってのは計り知れなかったのさ」


 「それで、どうしたんですか?」


 「単純だ。 支配領に近親者を配置し、王の血族として貴族の称号を与えた。 つまり、各地に支配を巡らせる中継として貴族制を取り入れたのさ。 そんなこんなで王は支配力を盤石とした」


 「・・・更に魔法っていう凶悪な力を使って・・でしょ?」


 「ぷっ・・・あぁその通り、正に凶悪な力だ。 自らを毒し、周囲まで汚染する程に」


 「・・・馬鹿にしてます?」


 「いいや、断じて。 だが、お前の言いようが面白くてな。 あの王国が滅んだ顛末を考えると皮肉にもなっていなくて笑ったのさ」


 「・・・・・・・たいへん、良い趣味をされているようですね」


 「ふっふっふっ・・・んぁ、いや悪い。 んんっ、それでエノアという名称だが、各地に散らばった貴族――王の血を引く分家たちの家名から取って名づけられたものになる。 首都から四方に四分割・・・エノアは東方の土地になる」


 「・・・東? 作者は西の生まれなんですよね?」


 「あぁ、その通り。 ってか、だから見聞録なんだよ」


 「だから、と言われても・・・」


 「・・・つまりだな。 作者であるユセフは西側の商戦に見切りを付けて、東側へと渡って一旗揚げようとしたって事だ」


 「・・・・・?」


 「先生ー。 更に難解にしてますよー」


 「・・・ジルバは黙っとれ。 ・・・・えーっとだな。 ユセフは王国の西側、小さな商家の一人息子として生まれたんだ」


 「はい」


 「両親は子宝に恵まれなくてな。 たった一人生まれた息子を徹底的に甘やかしてしまって・・・それで生まれた無鉄砲・・・・考えなしの・・・あー、っと」


 「・・別に、いい風に言わなくてもいいんじゃないですか?」


 「・・・・・そうだな。 まぁ、若者特有の勢いに任せた鉄砲玉小僧が完成してしまった訳だ」


 「・・・・・わぁ・・」


 「そんで、その小僧曰く『オレはこんなド田舎で埋もれる器じゃねぇ。 もっと都会へ出てビッグになるんだぜ!』と・・・両親が引き留めるのも聞かずに東側、エノアへと出奔してしまった。 ・・そんで見聞録だなんて仰々しい見出しの本になったのは、そうした彼の出自と行動力によるものなんだ」


 「つまり・・・その『エノア地方見聞録』って本は、家出少年の自伝って事ですか」


 「認識としては、それで間違いない。 ま、それも最初の内だけだったんだがな」


 「最初?」


 「言ったろ、この本は『七人の魔女』の原典だって。 始めこそ、世間知らずの自尊心ばかりが高いガキが思いの丈を書きなぐっただけの書物だったんだが・・・彼はその題名の通りに七人の女性と出会う事になるのさ」


 「・・・・。」


 「さて、書物の説明をもう少し続けるとして・・・・では、何故それほど前に書かれたものが絵本の原作なんかになったのか、についてから話そう」


 「・・・それも、王国時代の書物を引き合いに出して。 そこも気になります」


 「あぁ、そこも合わせて話そうか。 ・・・まず、その本の内容だが見聞録と銘打っているだけあって、エノア地方独特の習慣や食べ物、文化、細やかなマナーにまで仔細に書かれている。 西側生まれのお坊ちゃんには何もかもが物珍しかったんだろうな、それはもう丁寧に、西側との違いを織り交ぜつつ語られているんだ」


 「それって珍しい事なんですか? そういう書き物ってどこにでもあるものなんじゃ」


 「いやいや、お前は自分の生活圏での習慣やら文化なんかを書き留められるか? 普通なら何が特殊な習慣なのかも分からず、ただの日常の延長でしかないだろ」


 「・・・・そう、かも」


 「な? だから、こうして事細かに、かつエノア地方の文化について書かれた書物は少ないし、何よりエルクシア王国時代の書物が残っている事が中々珍しい。 それもこの本が珍重されていた理由の一つだろうな」


 「でも、それだけじゃないんでしょ?」


 「あぁ勿論。 ・・・と、その前にカザリ」

 

 「はい?」


 「まず前提だが、『エノア地方見聞録』には七人の女性が登場する・・・が、その七人はただの人間だ」


 「・・・・・・・・・・・・・・・は?」


 「よし、それじゃ話していくが―――」


 「え、いや・・・・ちょ、ちょっと待ってください!? そこから違ったら『七人の魔女』を完全否定してるじゃないですか!」


 「だから、そう言ってるだろ? お前の知る物語と、その原典に描かれている話は同じじゃない。 寧ろ、魔法使いとして出てくるのは貴族、王族の男しかいないしな」


 「・・・・・・・・・・・・はぁ・・・?」


 「予測はしてたが、ここまで思い通りの反応が返ってくると不思議なかんじだなぁ。 ・・・んんっ、余計な事は置いておいて続けるぞ」


 「・・・・・・・え・・・あー・・・どうぞ」


 「先生ー。 カザリさんが思考を放棄しちゃってますよー」


 「耳だけ生きてれば問題なーい、よって続ける。 ・・・さて、故郷を飛び出したユセフ少年。 話にしか聞いた事のないエノア地方という新天地を前に、彼は自分の知ったる文化とは異なるものに触れ、それを手記に収集する事に没頭していた」


 「・・・・・・・・・・。」


 「そうして、両親が彼の将来のためにとため込んでいた貯金を路銀としてふんだんに使いこんでいたある日、彼はとある貴族の支配領へと足を踏み入れた。 そして、そこで出会ってしまったのがエルタ・ユぺラス。 今、オレたちが進んでいる森に付けた名前の元となった少女だ」


 「・・・・・・・・・・。」


 「方や西から来たというお坊ちゃん、もう一方は清貧に慎ましく小さな商店を切り盛りする少女。 当然、出会った時は水と油よろしく反発するしかなかったらしくてな・・・・・と、そこら辺のエピソードを語り始めると長いか。 少し省略して―――」


 「・・・・・・・・・・・・・。」


 「何やかんやとあって・・・二人は恋仲になった」


 「待って下さい」


 「おぉ・・・・・なんだ、黙ってたかと思えば」


 「何で、一番重要な所を省くんです?」


 「何でもなにも・・・本について話す上ではあまり関係のない――」

 

 「関係のない?」


 「・・・・関係ない・・・だろ?」


 「本当に、それが正しいと。 思っているんですか?」


 「ジルバー! オレなんか地雷でも踏んだのかなー?」


 「ノーコメントですー」


 「・・・・調子が悪いと逃げやがって」


 「それで? どうなんですか?」


 「圧すごい・・・・・あぁ、分かった! あとで、後でそこは詳しく話してやる!」


 「約束ですよ」


 「お、おう・・・・。 ええっと・・・どこまで話したか。 あぁ、そうそう、二人はいい中になったって所だな」


 「わくわく」


 「・・・何を期待してるのかは知らんが、本題を忘れてないだろうな」


 「・・・・本題?」


 「オレが今話しているのは『七人の魔女』の元になった本だぞ? 当然、恋仲になった二人は引き裂かれる運命にあるって事だ―――それも、かなり手酷い別れ方でな」


 「・・・・・・・・。」


 「世に言う悲哀の果ての恋物語は、叶わない恋だからこそ価値があるんだろうが・・・・果たしてこれは悲哀と言っていい物なのか。 そういう風に考えてしまう程度には、理不尽で、救いのない有様だったのさ・・・何があったかは割愛するが、その何かがあった後、ユセフは逃げ出すように街を後にしている。 彼が何を考えての事であったかは、想像に難くないが・・まぁ、それも言うだけ無駄だな」


 「・・・・・・・・・・・・。」


 「・・・そんな出来事を皮切りにしてユセフは女性たちと出会っていく。 時には救いを、贖罪を、あるいは温もりを。 彼の求めるもとに彼女らと出会い、そして例外なく彼女らは去っていった。 ・・言いようによっては、七人との出会いではなく、ユセフと七人との死別を収集した物語であると表現できるかもしれないな」


 「・・・悪趣味ですね」


 「あぁ、それに関しては間違いなく、最低だとは自覚してるよ。 ・・・そうしてユセフは、路銀が尽きる頃にはエノア地方全土を踏破していた。 そして、彼は許さなかった。 その結実が『エノア地方見聞録』という訳だ」


 「許さなかった・・・・。 誰を、ですか?」


 「そりゃ、加害者である貴族、街の住人、国王・・・それと自分自身、って所だろ。 あと、『許さなかった』ってのはあくまでオレの所感だ。 彼は著作の中で怒りを露わにする事はただの一度も無かった」


 「・・・・・・・・。」


 「さて、疑問の一つはこれで答えられるな。 何故、そこまで昔の著書を引っ張り出して『七人の魔女』の原作としてのか―――即ち、この著作が王国や貴族を初めて大々的に批判したものであるから、だ」


 「・・地方の文化とかをまとめた本で、批判ですか?」


 「そう、『ここは素晴らしい場所です―――あとは貴族たちの支配下でなければ』みたいにな。 まぁ、そこまで直接的な表現でもないし、その当時は貴族らによって出版物への厳しい検閲が行われてたから上手く隠す必要があったんだがな」


 「上手く隠す?」


 「隠す・・・と言うと、何かしら巧妙な仕掛けを施したみたいに聞こえるが。 彼が仕掛けたものは単純至極、貴族たちの事を様々な美辞麗句でもって褒め称えたのさ」


 「・・・・・はい? えっと、単純・・・なんですよね?」


 「あぁ、そうとも。 ・・・カザリ、想像してみろ。 その時代は書籍だけじゃない、言論、思想に至るまで統制され、それを統制する側である貴族たちにとって都合のいい作話で溢れていた。 正しい事よりも、どれだけ貴族たちにとって利があるかが優先される・・・そんな状況で、お前ならどんな手法を使って本を書く?」


 「・・・・・突然、言われても・・・。 それに美辞麗句がって、それにどう関わってくるんですか?」


 「それを想像してみろって・・・・あぁ、分かった分かった。 言う、言うから」


 「・・・・・・・・・・。」


 「んとだな。 彼が取った手法というのは言った通り、著書に貴族たちを称える表現を多用するというものだった。 それ自体は別段珍しいものじゃないし、この時代に書かれた他の著書にも同様に貴族を慮った表現が見られていたらしい。 それでも、わざわざ特筆するものとして扱ったのは、それが過剰に表現がなされていたからだ」


 「過剰に、表現・・?」


 「ユセフは紛いなりにも商家の息子、それなりに上等な学を修めていたからだろうな。 時節の花々や美しい景色に例えたり、韻を踏んだ言葉遊びで表したり・・・読む側に飽きがこないように様々な気を配って貴族たちを褒めちぎった。 それも眩暈がするくらいに」


 「あの・・・それのどこが可笑しいんですか?」


 「貴族たちにしてみれば何も可笑しな所はないのさ。 『そう言われる程に我らは高き血を持っている』と自負していたんだから、それはもう鼻を高々として喜んでいたはずだ」


 「じゃぁ――」


 「ただ、読ませたい相手・・・つまりは民衆には違った」


 「・・・・?」


 「少し遠回しな言い方になったな。 貴族の検閲を逃れるために貴族に良い顔をするのはその当時の常套手段でな。 一般に流通している本というのは、基本的にそういう性質を持ち合わせている事が普通だった。 ただ、その中においてもユセフが書いた著書というのが、それまで以上に抜きんでて過剰なまでに貴族へ迎合する表現を使っていた。 当世風に言うなら・・・浮いていた訳だ」


 「浮いていた・・・注目されたって事ですか?」


 「そう。 『何を考えて、こんな本を書いたんだよ』って、始めは批判交じりではあったんだが、貴族連中が大量に増版して配り歩いた。 その結果、どこの家庭でも一冊は置いてあるくらいの本になって・・・そして、読んでみたら『何やらおかしいぞ?』ってな」


 「その人、の真意は伝わったんですか?」


 「概ねは。 民衆たちには暗黙の了解として伝わってくれたんだろうさ。 少なからず、オレが聞き及んだ限りでそうした話はあるんだから、彼の思惑は叶ったと言ってもいいはずだ」


 「・・・・・・・・。」


 「さて、まとめると、だ。 『七人の魔女』の原典であるユセフ・カルマン著『エノア見聞録』は歴史上で初めて大々的に魔法による体制を批判した著作である。 そして、その背景から連合国はの幼児教育の一つとして取り入れた。 ・・・・こんな所だな」


 「・・待って下さい」


 「何だ。 なにか不足があるか?」


 「あります・・・・それだと、どうして『七人の魔女』は間違って描かれている事に――」

 

 「あぁ、その疑問か。 ・・・・んー、まぁ憶測でしかないが。 それは単に、話を考えるヤツが知らなかったんだろ」


 「・・・知らない? 何を、です?」


 「検閲されていても流通できるように内容を改変していた事を、だ。 『七人の魔女』は確か・・旅をしていた少年が行く先で出会った魔女たちを退治していく、って話だったよな?」


 「・・・・はい」


 「ならオレの知る『エノア見聞録』の話と似ているな。 見聞録では、その土地で悪さをする女なちを貴族たちが懲らしめて・・・それを旅人のユセフが褒め称えるって感じでな。 話の主題は変えずに、登場する人物を変更して手直ししたんだろ」


 「・・・・・・・・・・・・・・。」


 「まぁ、その当時はアレク連合の発足間もなくで激震の最中だったからな。 いざ新しい幼児教育の枢軸を決めようとして、魔法体制の否定をした本っていう話だけですっぱ抜かれたんだろ。 内容の精査と改変は今言った程度で、時代背景を考慮した変更はなされなかった・・・って所だろうさ」


 「・・・・・・・・・・・。」


 「・・・・・って、なにもお前が気に病む必要はないんだぞ。 何しろ、本が書かれたのは四百年も前。 本が現存してたってのも驚きなんだ。 著者の真意まで読み取れってのは酷な話だ」


 「・・・でも」


 「ん?」


 「でも・・・それだと、私たちは侮辱してきたって事になります。 それも、長い時間を掛けて」


 「・・・・・・・デリケートだなぁ、そういう所」


 「・・・・・・・・。」


 「まぁいいさ、お前が何を重荷に感じようが自由なんだから。 ・・その上で、人生の先輩として言わせてもらうのなら、無知は罪じゃない。 知りえない事が罪だと言うのなら、生まれてきた子どもは罪人という事になってしまうからな」


 「・・・・・・・・。」


 「ほら、そう暗い顔をするな。 もう森が終わる・・・待ちに待った日差しだ」


 「あの・・・」


 「何だ?」


 「・・・・・どうして、森にその名前を使っているんですか?」


 「あぁ、それか――」


 「・・・・・・。」


 「オレなりの贖罪だ。 オレは知っていた側、だったからな」


 「贖罪・・?」


 「あぁ。 だって今がどれだけ間違っていても、魔法使いというだけで正せないんだ。 それじゃぁもう、全部間違えているしかないじゃないか」


 「・・・・なにを言っているのか分かりません」


 「ふっふっふ・・・・・あぁ、オレもだ。 ただの、無意味な衝動だよ」


                    ▽▽▽


 「さてっと、無事に出れたな」


 レノが体を伸ばして息を吐く。

 久方ぶりの温かな空気をめい一杯吸い込んで、体の緊張が抜けていくのを感じる。

 どうせなら、このまま倒れ込んでしまいたい、と半ば本気で考えて、


 「・・・・・。」


 「おーい。 まだ引きずってるのか?」


 くるりと振り向く先のカザリを見た。


 「そんな風に落ち込むとは思ってなかったんだが・・・・」


 「いえ、大丈夫です・・・」


 なら大丈夫そうな顔をしろよ、とレノは頭を掻く。

 何の気なしにしてみた話は、どうやら彼女の培っていた教育――もとい宗教を傷つけるものであったらしい。

 レノにしてみても四百年前の話。とうに時効は過ぎているだろう、と思ったりするのだが。

 

 「カザリさん、本当に大丈夫ですか?」


 「はい。 ちょっとだけ、考えがまとまらないだけで・・・」


 ジルバの心配に薄い笑みで答えるばかりのカザリ。

 

 「そこまでショックだったか・・・」


 レノの本音を言うならば『静かになったし放っておいてもいいんじゃない? てか、その原因はオレなんだから下手して尾を踏む事はないだろ』といった感じだ。

 なるほど、それは理性的な判断だと自画自賛するレノだが、


 「・・・・・・・・。」


 何も言わずに俯いているカザリを見る。

 

 「んー・・・・・・」


 この後、何も無かったとして、それは良好な関係と呼べるだろうか、と。

 

 「んー・・・・・・・・・・・・・!」


 そんでもって、落ち込んでいるカザリを見たレイラに何と言われるだろうか、と。


 「カザリ」


 「はい・・・」


 意を決して名前を呼び。


 「・・・・・・・・。」


 「・・・・・・・・・・・・・? ・・・・あの?」


 レノは動きを止めた。


 「どうしたんですか?」


 そうカザリがレノの肩を叩いて、


 「っ!」


 「は、え!?」


 レノは走り出していた。

 似たような事があったな、と一瞬頭によぎり、足に力を入れるのと同時に捨て去る。


 「ジルバ! カザリを頼んだぞ!」


 返事は待たず、そのままどんどんと加速していき―――


                    ▽▽▽


 「あの・・・行っちゃいました、けど」


 またしても置いてけぼりのカザリは訳が分からないとジルバの方を振り返る。

 が、そこにいるジルバも驚いた顔で固まっていて、


 「ジルバさん?」


 「・・・・てる」


 「・・え?」


 名を呼んでみると何かをジルバが呟く。


 「煙が・・・・」


 「煙?」


 言われて細橋の続いていく方を向いてみる。

 レノが走り去っていくのを見るに村はその方向らしいが・・・。


 「・・・確かに、煙が立ってる」


 黒々とした煙が上がっているのが見えた。

 ただ、


 「・・・・・・・・・。」


 レノ、ジルバの反応を見るに、カザリは嫌な予感ばかりで。


 「・・・・・・・・・・・。」


 ゆっくりと、落ち込んでもいられないらしい、と。

 それだけは確かに覚悟するカザリだった。

お久しぶりです・・・・・。

すいません、こうも時間が掛かってしまいました。


また年を超えてしまいましたが、どうか今年もよろしくお願いします。

・・・・一章にいつまで掛かるのだか。

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