表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女かえで@agent 〜35歳サラリーマンが魔法少女やることになりました〜  作者: そらり@月宮悠人
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

78/259

東山の双剣術

 魔法少女モードの東山は黒いドレス姿で両手に細身の剣を持っていた。


「かえでさん、大丈夫?」

「ゲホッゲホッ、助かりました……」

「体調が悪いとは聞いていたけど……診てもらったの?」

「はい。……安静にして声を出さないようにと」

「なら早く帰って寝ないと。帰れそう?」

「ゲホッ、少し……休んでからに……します。飛べそうにないので……」

「そう……。じゃあ、すぐ終わらせるから、待ってて」

「すみません……」


 離れたところで休憩していると、戦闘が始まった。

 そういえば東山が戦ってるところをまだ見たことがない。この前のドラゴン戦では満足に見れなかったからな。


「さて、かえでさんを早く帰してあげないとね」


 接近すると双剣を振るう。魔物は器用に魔力の爪で受けるが東山の斬撃に削られていく。

 一方、東山はアスファルトやコンクリートを砕くほどの破壊力がある魔物の爪を双剣で受ける。あんな細身の剣でよく折れないな……それだけ上手く受け流しているんだろう。流麗な動きはまるでステージで踊ってるようだ。


千散華(せんざんか)


 双剣に術式が走ると剣がブレたようなボヤけた感じになる。それを振るうと、ガガガ! ギキキィーン! と、ものすごい剣撃の多重奏が聞こえる。魔物への削りも倍以上になった。


「ウグ……! ガッ……アァッ……!」


 明らかに苦しむ魔物は後方へ跳んで逃れる。近接は不利だと判断したようだ。


「すごいな……ケホッ、……あんなに強かったのか」


 柳のように攻撃を受け流し、烈火の如く攻撃する。攻防一体の双剣術というわけか。ぷに助が一級品と言ってたのも頷ける。


「飛燕――」


 別の術式が双剣に走る。ブレが無くなりハッキリと見えた双剣を構えると、交差させながら素早く(くう)を切る。


双閃(そうせん)!」


 見えない刃が飛び、魔物――男の体をXの字に刻む。

 

「離れれば安全。そう考えてしまうのが罠なのよ」


 男は意識を失ったのか、膝をついてそのまま倒れた。だが魔物の気配は残っている。


「かえでさん、まだ動ける?」

「……はい、なんとか」

「そのままじゃ帰っても困るでしょ、そこからピュアラファイ撃って浄化しちゃって」

「いいんですか……?」

「うん。ほら、早く」


 魔法の杖を構えようとするが震えて狙いが定まらない。うつ伏せ(ブローン)で撃ちたいところだが、それはそれでなんとなく止めたほうがいい気がした。


「メイプル……頼む」

『分かりました。照準はお任せください』


 メイプルの言葉を信じてピュアラファイを撃つと、見事に魔物に命中した。


「すごいわ! さすがね、かえでさん」


 すると、なにを思ったのか東山は俺の――かえでの体をお姫様抱っこよろしく抱える。


「ひゃ!? ひ、東山さ、ゲホッゲホッ!」

「ほら、大人しくして。家まで送ってあげるから。家はどこ?」


 家まで!? まずいな……まだ準備できてないのに……。かといってあのボロアパートに行くわけにはいかないし……。


「……M区の――」


*   *   *


 ボロアパートか準備不十分な新居か、どちらか選ぶとしたら新居しかない。


「さすが三ツ矢学院に通ってるだけはあるわね、いいマンションじゃない」


 管理人に事情を話して鍵を開けてもらい、部屋に入る。まだ家具も電化製品も置いてない殺風景な部屋を見た東山は、「なにこれ? 泥棒に盗まれでもした?」と斜め上のコメントをした。


「まだ、引っ越し終わってないんです……ケホッ」

「冷蔵庫も無いじゃない。あるのは……ベッドだけ?」


 なにかあった時に床で寝るのは厳しいからと、一応ベッドの手配だけはしておいた。


「とりあえず変身解除して、ベッドに寝なさい」

「はい……」


 魔物を浄化してはいるが、東山がいるのでフェイク機能で衣装だけ変更する。


「本当になにもないわねー、買い物行ってくるわ」

「そんな、別に……」

「病人が遠慮するんじゃないの」


 遠慮じゃないんだけどなぁ……。


「そういえば薬は?」

「あー、ええと、まだ貰ってなくて……」

「じゃあ代わりに受け取りに行くわ。病院前の薬局でいいんでしょ?」


 これはまた困ったな……。俺の名前で受診したから処方箋も俺の名前だ。このままだと盛大にバレてしまう。


「あ、いえ、別の薬局です。ケホッ、あとで届けてくれるそうなので……」

「あらそうなの? じゃあ買い物行ってくるから、待ってて」

「すみません、お願いします……」


 参ったな……応援の魔法少女が来るでの間、時間稼ぎするつもりで魔法少女に変身したのが仇になるとは……。

 しかしあのまま放っておいたら確実に怪我人が出てたし、下手すれば死者も出かねなかった。俺の判断は間違ってなかったと思いたい。

 どちらかというと薬を受け取れてないのが後悔しかない。この姿で行くわけにはいかないし……。


「ハロー、メイプル」

『はい。大丈夫ですか?』

「ああ……一応まだ生きてるよ。ケホッ、……人形の楓人に連絡取れるか?」

『少々お待ち下さい。……繋がりました』

「もしもし」

『こちらスペア楓人。緊急でしょうか?』


 スペアっていうの、なんだか嫌だな……。


「今から言う薬局に行って、薬を受け取ってきて欲しい。場所は――」

『――分かりました。いつ頃お届けしますか?』

「なるべく早めで。……そうだ、薬の患者名のとこ偽装しといて、姫嶋かえでに、ゲホッゲホッ! ……書き換えて。それと、東山に出会したら兄とでも言って誤魔化しておいてくれ」

『分かりました』


 ふぅ……。これで偽装工作は完璧だろ。

 頭痛いし寒気するし節々痛いし……悪化したんじゃないかこれ? あとで天界に労災でも申請するか……。


 その後、東山が戻ってきてなにか言ってるようだったが、もう限界だった俺の意識はそこで途切れた――。


To be continued→

最後まで読んで頂いてありがとうございます。

応援よろしくお願いします。


双剣使いというのは何気に初めてです。ちなみに今回はランクAですが上位種ではないので一人でも余裕で勝てました。上位種とそうでないランクAとはけっこう難易度に開きがあるんですね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑にある☆を★★★★★にして応援していただけると嬉しいです。無限エンジンの燃料になります。 script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ