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魔法少女かえで@agent 〜35歳サラリーマンが魔法少女やることになりました〜  作者: そらり@月宮悠人
第二章

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病院

 目が覚めると、見慣れた部屋にいた。


「……」


 腕を上げて自分が存在していることを確認する。手を握ったり開いたりして生きている感覚を実感する。


「夢……か」


 あまりにもリアルで生々しい、まるで未来に起こる最悪の出来事を実体験したかのようだ。まだ余韻すら残ってる気がする。


「あれは……歩夢だった、よな?」


 魔物化した歩夢? 俺の正体を知って裏切られた絶望感からローレスとなった、闇堕ちルートの歩夢ってことか?


「……いやいや、笑えねぇぞ」


 街一つを焦土と化す破壊力、魔法少女も大量に殺されて手がつけられない地獄絵図。100キロメートルエリア担当はいなかったけど、全員でやれば制圧できるのか……?


「まあ、今考えても仕方ないな、とりあえず熱計るか」


 体調はほとんど変わらないから今日も欠勤は確定しているが、報告するために体温を計る。


「……38.7℃」


 全然熱が下がらない。漫画みたいに都合よく一晩で全快しないのか。

 とりあえず体温計の写真をLINEで新島に送り、今日も休むと伝える。それと東山にも練習はまだ行けそうにないと伝える。


「病院行くか……」


 さすがに熱が下がらないままじゃ仕事にならないし迷惑掛けてしまう。しかし問題は病院が車で15分ほどの距離だということ。車は無いし電車に乗るほど元気は無い。


「裏技、使うか……」


 重い身体を引き摺って着替えると、財布をポケットに入れて魔法の杖を手に取る。


「ゲホッゲホッ! ……ハロー、メイプル」

『マスター、体調はいかがですか?』

「あ゛ぁ゛……これから病院行くわ」

『声が枯れてますね』

「さすがにな……魔法少女モードで飛んでくから、サポート頼むわ」

魔法(M)少女(G)協会(A)で治療しないのですか?』

「え゛? そんなことできるの?」

『リネさんが回復してくれるはずです』

「あ゛ー、でもいいや、診断書必要になる場合あるし()()()()行くわ」


 魔法少女に変身すると体調が良くなって身体が軽く――なるわけはなく、非常に怠い。

 頑張って窓から飛び出すが、気を抜くと落ちそうになる。


「うぅ……」


 やったことはないが、酒気帯び運転というのはこんな感じなんだろうか?


『どちらの病院へ行かれますか?』

「F病院へ……」

『分かりました。目的地へ誘導します』


 フラフラしながらも、なんとか病院へ着くと大事なことに気づく。


「やば、魔物倒さないとじゃん」

『院内に反応があります』

「院内? 戦って大丈夫なのか?」

『ランクCの小型が一体だけなので、マスターならすぐ済むと思います』


 普段ならそうかも知れないが、今はどうかなぁ……。

 病院に入ると魔物の気配はするものの、位置が特定できない。


「メイプル、魔物の位置は?」

『ちょうど真上です。まだ気づかれてはいません』

「真上か……マーカー付けられる?」

『はい。ターゲットを印を付けました』


 レーダーをマクロ表示に切り替えてできる限り正確な位置を掴む。


「ここら辺か……」


 フラフラしながらも魔法の杖を構えて魔力の(みち)を開放する。できる限り絞り込み圧縮された魔法(ピュアラファイ)は一筋の光となって建物を貫き天へと消えていく。


《魔物を浄化しました。15MPがチャージされます》

「よし、なんとかなった」

『お見事です』


 本当は面倒くさいから範囲大きめのピュアラファイ(魔法)で撃ち抜きたかったが、さすがに病院を壊すわけにはいかないし、一般人を巻き込む恐れがあるから止めた。


「さて、トイレにでも行くか……」


 トイレの個室に入って魔法少女モードを解除すると、受付けで総合診療科に案内される。久しぶりの病院はなんだか落ち着かない。


「はぁ……ゲホッゲホッ!」


 しまったな、マスクするのを忘れていた。

 仕方なく自販機で2枚組200円のマスクを購入して装着する。


《ピンポーン、……樋山さん、樋山楓人さん。5番診察室までお越しください》


 呼ばれて、5番の診察室へ入ると若いお兄さんが診てくれた。


「うーん、喉の炎症が酷いですね。しばらくはあまり喋らずに静養してください。お薬を出しておきますので」

「ありがとう……ございます……」


 診察が終わって出ようとしたら、「先生!」と女性の看護師が慌てた様子でやって来る。


「どうした?」

「患者さんが一人容態が急変して、暴れてるんです!」

「患者って、もしかしてさっきの?」

「はい! すぐに――」


 来てください、と言おうとしただろう瞬間。そう遠くない所から「グワオァァァッ!!」という人間のものとは思えない不気味な叫びが聞こえた。


「――メイプル」

『間違いありません、ランクAの寄生型です』


 参ったな……場合によっては俺だけじゃ対処できない。


「応援要請出してくれ、ゲホッゴホッ! ……いっそ緊急招集でもいい」

『分かりました。マスターは?』

「できる限り、食い止める。でもその前に……」


 会計を済ませないと後々厄介なことになるのが目に見えるので、魔物の様子は気になるが先に会計へ書類を提出する。


「5分ほど経ちましたら、あちらの機械でお支払いをお願いします」

「え? ああー、あれですか。ゴホッ! 分かりました」


 今は病院も自動化か。なら魔法少女に変身してても問題ないな。

 急いでトイレへ駆け込むと、魔法少女モードになって先ほどの声が聞こえた辺りへと向かう。するとそこには明らかに正気を失った男が暴れていた。


「ガアアアアッ!!」

「アナラ――ゴホッ! ケホッ!」


 アナライズしようにも集中できない。そうこうしてるうちに、魔法少女の気配に気づいたのか襲いかかってくる。なるべく病院の外に出したいところなんだが、身体が重くて思うように動けない。


「ウガァ! ガアッ!」


 まるで虎のように爪で襲ってくる。実際はそんなに爪が長いわけでも強いわけでもなく、魔力によって作られた武器のようなものだが、切れ味は鋭い。


「きゃあっ!」


 巻き添えを喰いそうな看護師を(すんで)のところで魔法の杖でガードする。


「こっちだよ!」


 横腹を蹴って診察室から叩き出すと、フラフラになりながらも外へと誘導する。病院のロータリーは人もいないし広くて戦いやすい。とはいっても今の俺には足止めが精々だが……。


「はぁ、はぁ、……ゲホッゲホッ、ゴホッ!」


 やばいな、目が霞んできた。今にも倒れそうだ。


「ガウッ! ウガァッ!」

「うるせ――ゲホッゲホッ!」


 咳が止まらない。足が動かない。これはやばいかもな……と思った時、男は左横に吹っ飛んだ。


「……え?」

「あら、かえでさんじゃない」


To be continued→

最後まで読んで頂いてありがとうございます。

応援よろしくお願いします。


私はけっこう病院にお世話になってるので、取材に行く必要もなくサラサラっと書けました。笑


今年は熱中症疑いでの救急出動が多いそうです。ちゃんと水分補給して外での活動は控えて熱中症対策しましょう。それと身内に高齢者がいる人は注意して見てあげてくださいね、真夏でも寒いと感じるそうですから。

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