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魔法少女かえで@agent 〜35歳サラリーマンが魔法少女やることになりました〜  作者: そらり@月宮悠人
第二章

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悪夢にうなされて・前編

「う……ぅん」


 もう朝か。会社に行かないと……。

 布団から起き上がると、なんだか身体が重い。すごく気怠い感じがある。


「……まさか」


 普段は滅多に使うことのない新品同様の耳式体温計で計ってみると、液晶画面に38.9℃と表示された。


「……マジかよ」


 思い当たる節は山ほどある。疲労で免疫力が落ちたんだろう。流石(さすが)にこの状態じゃ会社に行けない。

 布団に座り込むと、楓人用――というか普段使いのスマホで新島に電話する。


〈もしもし、先輩? どうしたんですか?〉

「悪い新島……ちょっと体調崩してな。今日は休む。上木か課長にも伝えてくれ」

〈え!? 大丈夫なんですか?〉

「ああ、大したことは――ゲホッゲホッ! はぁ、大したことはない」

〈本当に大丈夫ですか? ……ちゃんと寝てくださいね?〉

「ああ。悪いな、皆にもよろしく……」


 通話を終えて、バタッと倒れる。咳が止まらない。これは本格的に風邪だ。ていうか高熱なんだから風邪だ。なんだかもう考えがまとまらないな、頭の中がグチャグチャだ。


「まさか本当に体調崩すとはな……」


 東山が送ってくれたHuGFの集合写真を見る。友だちへのお見舞い感覚での写真なんだろうけど、こんなに嬉しいのは初めてかも知れない。

 それに、どうしてかHuGFは居心地良い。女性耐性ゼロな俺がアイドル5人に囲まれていても平気なのは、あまりに現実離れした空間だからか?


「とにかく、寝るか……」


 治すためには寝ることが一番だ。どのみち体が怠くて動きたくない。

 目を閉じると、あっという間に微睡(まどろ)みの中へと意識が落ちて行く――。


*   *   *


『マスター、応援要請が入ってます』

「ん? そんなの無視しとけ、今は風邪で……」

『マスターの体調に異変は見られませんが……』


 あれ? 体が軽い。熱もない。もう治ったのか?


「なんだか分からんが治ったならいいや、応援はどこから?」

『マスターの会社です。納期が間に合わないとのことです』

「マジか。仕方ないな、行くか!」


 魔法少女に変身すると一瞬で会社に到着する。職場である開発室に入ると、そこには優海さんがいた。


「楓人くん、来てくれたの?」

「もちろんですよ。それで仕事のほうは?」

「天界から頼まれたソフトがまだ間に合ってないから、お願いしていいかしら?」

「分かりました」

「せんぱーい!」

「おう、新島おはよう」

「見てくださいこれ!」

「なんだ、新島も魔法少女になったのか?」

「はい! 可愛い服とコスメ魔法で魔物もイチコロです!」

「頼もしいな、よし魔物は任せたぞ」

「先輩も行きましょうよー」

「でも俺は仕事があるから」

「もう、一緒に来てくれないなら先輩のこと天界にバラしますよ?」


*   *   *


「――はっ! ……夢かぁ」


 なんだかゴチャゴチャした夢だったなぁ……。会社に優海さんがいて新島が魔法少女とか。まあそんな世界線もあったのかな?

 とりあえず汗びっしょりなので起きて汗を拭いて着替える。スポーツドリンクなんかは買ってなかったから、水かビールしかない。


「いくらなんでもビールは飲めないよな」


 かといって、ただ水を飲むだけは芸がないので塩と砂糖を少し溶かして飲む。


「ふぅ……。さて、もう一眠りするか」


 大量の汗で一時的に熱は下がったが全体的に症状は残っている。今は大人しく寝ていよう。


*   *   *


「先輩……私……」


 暗く重い、今にも泣きそうな空はまるで新島の心を表してるようだった。どこか建物の屋上に俺と新島がいて、周りにも数人の気配はあるが、誰がいるかまでは分からない。


「すまない、新島……」

「謝らないで……ください。私、薄々は……気づいてたんです。私の中で、なにかが起きてるような、……私まだ子供は、産んでない……ですけど、子供がいたら……きっと、こんな感じなのかなって……!」


 次第に泣き声になり、涙が溢れ出る。


「私……今すごく、幸せなんです……。こうして最期に先輩が側にいてくれるから……」

「……」

「先輩……まだ、そこに……いますか?」

「……ああ」

「私が……眠るまで……手を、握って……」

「……ああ!」

「せ……ぱぃ……あい……ま――」


 最後の言葉は、あまりにか細く聞き取れなかったが、その想いは伝わってきた。


「新島……新島ぁ……!!」


 いくら抱きしめても、その体に温もりが戻ることはなかった。頬を伝うのが涙なのか雨なのか区別がつかないほど、悲しみを洗い流すように雨は強く降り続いた――


*   *   *


「新島ぁーっ!!」

「はい……? どうしました?」

「……え?」


 悪夢にうなされて目が覚めると、そこに新島がいた。


「……そうか、まだ夢の中か」

「いえ、現実ですけど」

「……現実なのか?」

「はい」

「……なんで新島がここに?」

「安西先輩に言われたんですよ、どうせ水しか飲んでないだろうからスポーツドリンクとか栄養ドリンクとか見舞いに持って行ってやれって」


 さすが雷都はお見通しだな。正確には砂糖と塩を混ぜた水だが。


「そうだったのか、すまんな」

「いえ。……ところで」

「ん? なんだ?」

「……いえ! なんでもないです」

「……?」

「わ、私まだ会社に用事があるので、帰りますね!」

「あ、ああ。見舞いありがとな」

「……では、また!」


 なんだ? 急に慌てて。

 それにしても助かった。これでなんとか乗り切れそうだ。栄養ドリンクを一本一気に飲んで再び布団に横になる。


「……そういや、変な夢見たな。新島が死ぬなんて縁起でもない」


 だが、このままだと現実になってしまうのもまた事実だ。なんとかして回避できないものか……。


『マスター、応援要請が来ていますが、体調はいかがですか?』

「さすがにまだ無理かな……緊急か?」

『いえ。ランクBですし、他にも手が空いてる魔法少女はいるようです』

「じゃあ、他のに任せるよ」

『分かりました』


 こんなフラフラの状態で出ていって逆に足手まといになったら申し訳ないしな。


*   *   *


 ……ここは、どこだ? 真っ暗だな。

 浮いてる……いや、沈んでいってる?


「ふん、ようやく()()()()来れたか」


 女の子の声……誰だ?


「それも風邪で体調を崩したことで一時的に乱れた魔力の波長がたまたま合うという奇跡によって、か」


 魔力の波長? 魔力制御のことか?


「ある種の魔力制御であることは間違いない。だが恐らく今回が最初で最後だろうな。――そうだな、もしまた()()()来れたら少しだけ力を解放してやろう」


 力を……解放? というか、誰なんだ君は?


「ふん、たまたま来れたような奴に名乗る義理はない。先ずは自力で()()()来い、話はそれからだ。……いや、最後に一つだけ忠告してやろう。――天界をあまり信用するな」


To be continued→

最後まで読んで頂いてありがとうございます。

応援よろしくお願いします。


悪夢というのは強いストレスによって見ると言われてます。特にネガティブなことを考えがちな人は悪夢を見やすいんだとか。楓人の場合も強いストレスが原因かもですね。


悪夢はまだ続きます……。

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