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魔法少女かえで@agent 〜35歳サラリーマンが魔法少女やることになりました〜  作者: そらり@月宮悠人
第二章

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トラブルと楽屋

 ――とまあ、深夜会議で一日アイドルの許可が出たわけだが……。


「うわぁ……すごいなこれは……」


 まだ開場3時間前だというのに会場にはすでに多くの人で賑わっていた。そこら中にHuGFのポスターや映像や音楽が流れていて、まさにHuGF一色の世界だ。

 S市にあるスーパーアリーナ。収容人数30,000人を誇る巨大な会場はすでに全席完売ということからもHuGFの人気の高さが窺える。

 

 まさかそのアリーナ会場に招待されるとは……。俺が出演するのはまだ先の話だが、慣らすためにリハーサルから本番まで全部見せてくれるのだそうだ。しかもタダで。

 それだけでも役得なのに、楽屋に自由に出入りできるVIPパスも貰った。


「あれ? あの子めっちゃ可愛くね?」


 俺の危機回避センサーが誰かの一言を拾った。

 ぷに助の言う通り、一般人に見えないようにするステルス機能をオフにするとちゃんと見えるようだ。


「そんなに目立つのかな……」


 もう一つ、衣装変更機能(オート・コーデ)を追加してもらったから魔法少女のロリータ・ファッションではなく大人しめの服にしたはずなんだが……。

 ちなみに女の子のファッションに(うと)い俺でも大丈夫なように、1000を超える衣装データの中から目的やシーンに合わせて自動でコーディネートしてくれる。もちろん自分で選ぶこともできる。天界の技術者に感謝だ。


「ホントだ、超かわいいじゃん!」

「お前、声掛けてこいよ」

「無理だろ、ぜってー彼氏と来てるに決まってんじゃん!」

「チキンな奴め」

「ならお前が行けよ!」

「俺は神谷瑠夏ちゃん一筋だからな」


 なんだか騒がしくなってきた。ここに居たらトラブルが起こるぞ。と、俺の危機回避センサーはずっと訴えている。

 しかしどこに避難していいやら分からない。アイドルのコンサートなんて初めてだし、こんなデカい会場に来たのも初めてだから、完全にフリーズしてしまった。


「よう、嬢ちゃん。一人かい?」


 そこへ現れたのはチャラ男を体現したような10代後半らしき男。そういえば女の子(この)状態で男に会うのは宅配便のあの人以来か。やはり身長差があって見上げる格好になる。


「えーと、なんでしょうか……」

「嬢ちゃんもHuGFのファンなんだろ? 仲良くしようぜ」


 明らかに下心丸見えのナンパ野郎だな……やろうと思えば魔法少女のフィジカルでぶっ飛ばせるが、流石にそれは目立ちすぎる。


「あの……友だちと待ち合わせてるので……」

「へー、じゃあ俺に友だち紹介してよ」


 あ、ダメだこいつ。殴りたい。


「いや、その……」


 どう穏便に切り抜けようかと思案していると、「お待たせ、こっちだよ」といきなり手を掴まれる。


「へ?」

「なんだぁ? てめぇ」

「ぼ、ぼくはこの子の友だちだよ」

「あァ!?」


 これは渡りに舟とばかりに、「もう、遅いよ! 早く行こう!」と逆にその男を引っ張る。


「おいこらっ、俺を無視してんじゃねぇーよ!」


 ナンパ野郎がキレて襲い掛かった瞬間、待ってましたとばかりに力を少し解放する。女の子らしく「きゃあーっ!!」と声を上げて強めに男の頬をビンタすると、5メートルくらい吹っ飛んだ。


「あ……やりすぎた、かな……?」


 ま、いいか。センサーで生体反応は確認できるし。


「き、君は……」

「ありがとね、おかげで助かったよ」


 ギャラリーがざわついて混乱している隙に楽屋へ向かおうとして、助けてくれたテンパ頭のメガネくんが「あの! ぼくは野木涼太っていいます!」と叫ぶので、少し気恥ずかしいが俺も「私は姫嶋かえで! またね!」と返した。


*   *   *

  

 楽屋を探して彷徨っていると、「かえでさん?」と後ろから声を掛けられた。


「東山さん!」

「どうしたの? 迷っちゃった?」

「えーと、……お恥ずかしながら」

「あら、連絡してくれればいいのに。ところでなにかあった?」

「え?」

「外がざわついてるし、誰か倒れたっていうし……」

「ああー、えーと……」


 事の顛末を語ると、東山は「あっははは!」と楽しそうに笑う。


「いいわね、ナイスビンタ! その男の子もカッコいいじゃない。――だから言ったでしょ? あなたにはアイドルの資質があるって。なんの実績もない誰も知らない無名の子が一瞬で有名人よ。これで私たちと同じステージに立ったらどうなるか……想像を絶するわ」

「……っ!」


 一瞬、想像したらゾクッとして体が熱くなった。俺がHuGFと同じステージに立って何万人もの人を熱狂の渦に巻き込む。それは確かに夢のようで……でもなんだか怖くもある。

 ……というか有名になったのはアイドル的な要素とは別な気もするが。

 

「助けてくれた男の子にステージからお礼を言う?」

「いやいや! そんな勇気ないですよ!」

「ふふ、どのみち来月にはステージに上がるんだし、その時にでも……ね? おいで、皆に紹介するから」


 楽しんでるなこいつ……。

 東山に案内してもらったら、あっという間に楽屋に着いた。楽屋のプレートには【HuGF 様】という紙が挟まっている。グループ名全部は長いから略にしたんだろうか?


「ただいま」

「お邪魔します……」


 中に入ると、HuGFのメンバー勢揃いだった。佐々木とライブ観に行くことになったから、一応メンバーは覚えてきた。


「あら、きらちゃんが言ってた子?」


 卯月響子。メンバー最年長で――といっても19歳――綺麗な高音が持ち味。ソロパートも持つほど歌唱力が高い。

 黒髪に紫のメッシュが入った大人っぽい顔立ちで女子ウケが良いらしい。


「初めまして……」


 岩清水明音。歌と踊りのバランスが良く、ライブ会場ではしばしば盛り上げ役を担当。オフだとこんな大人しいとは……。

 茶髪に銀色のメッシュでカッコよさがありつつ可愛らしい雰囲気だ。


「へぇー、けっこう可愛いじゃん!」


 古間麗美。とにかく踊りが上手くてステージではキレッキレのダンスを披露することが多い。

 こちらは黒髪にインナーカラーで青が入っている。可愛いというよりは小悪魔っぽさが滲み出てる。


「……こんにちは」


 神谷瑠夏。普段はあまり目立たないがライブでは力強い歌声で観客を魅了する。

 ピンクレッドのショートヘアが印象的だが、こちらもオフ状態はかなりテンション低めのようだ。


「皆、揃ってるわね」


 そしてHuGFのリーダーで、歌も踊りもずば抜けているのが東山煌梨。まさに天才というやつだ。

 メンバー皆さんが個性的な髪色なのに対してセミロングの黒髪。身長も高いほうではないが、それでも圧倒的な存在感を放つ。


ハピネス(H)アンド(u)グッド(G)フォーチュン(F)へようこそ!」


To be continued→

最後まで読んで頂いてありがとうございます。

応援よろしくお願いします。


オートコーデとかいう神機能ですが、実はリアルでもAIがコーデを提案してくれるアプリがあります。便利な時代ですよねー

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