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魔法少女かえで@agent 〜35歳サラリーマンが魔法少女やることになりました〜  作者: そらり@月宮悠人
第一章

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謎の結界と二人の孤立➄

 昔流行った大人気MMORPG(大規模多人数同時参加型オンラインRPG)において、最強の武器と(つい)となるゲームオリジナルの武器・(くれない)のヤシオ。

 攻撃力など武器性能としては並程度でメイン武器としては心許(こころもと)ないが、代わりに『冥府の(いざない)』という強力なスキルがある。


 ただし、そのスキルを発動する条件がなかなかにキツイ上に高度な戦術が求められる上級者向けのものだったので、頑張って手に入れても結局使わないという話もネットではよく見かけた。

 だがその分、戦術にハマった時のスキルはチート級の強さでプレイヤーをドン引きさせた。その効果というのが――


「お前に絶望を見せてやるよ。――冥府ノ(いざない)!!」


 赤黒くなった剣身から赤黒いオーラが噴出してゼノークスを包み込む。


「なんだァこれは? ――ぐぁっ……!!」


 スキルを受けたゼノークスは身動きが取れなくなり、地面に倒れた。


「体が動かない……? 力が抜ける……貴様、なにをした!?」

「確信はあったけど、本当に発動するとは……。これは『冥府ノ誘』って技だよ」

「メイフ……? そんな魔法聞いたことがないぞ!」

「それはそうだろうな、これ魔法じゃないし」

「なに!?」

「物理でも魔法でもない特殊スキル。ゆえに防御不可能。その効果はあらゆるステータスの大幅ダウンと全状態異常、そしておまけにバインド。つまり行動不能だ」

「そんな無茶苦茶が通るかァ!!」

「それが通るんだなー、(げん)にお前はバインド効果で拘束されて動けないし……」


 拘束されて動けないでいるゼノークスにゆっくりと近づいて、軽く剣を振る。


「ぐぁっ!」

「大幅なステータスダウンによって防御力――つまり自慢の外殻も(もろ)くなってこの通り、サクッと切れちゃう」


 思った通り、スキルがちゃんと再現されている。まあ、確信と言いつつ半信半疑だったが。

 どうしてゲームの武器スキルを再現できたのかは分からない。最初は魔法少女――というより魔法の杖?――の力かと思ったが、それなら他の魔法少女、特にゲーム好きという歩夢が着目しないはずがない。

 誰もやってないということは、やらないのではなく()()()()()()と考えるほうが自然だ。


 あるいは俺が魔法少女として例外的な存在だから、魔法少女のバグというか仕様の穴というか、そういったイレギュラーが起きたのか?


「おのれ魔法少女め、卑怯なァ!!」

「いやいや、普段闇に(まぎ)れて人を襲うお前に言われたくはないわ。それにこのスキルは条件厳しくてそう簡単には使えないんだよ。今回はたまたま条件クリアしたから使えただけだ」

「じょ、条件だと?」

「ああ。一つは体力が――」

『それ以上はいけない』

「……え?」


 またも不意に頭の中で声が響いた。さっきのと同じ声だ。


「どこにいるんですか!?」

『今、()()()()()()ところだ。今行く』

「え、行くって?」

「待たせたな」

「うわぁ!?」


 突然後ろから声がしてビックリした。振り向くとそこには見覚えのある女性がいた。


「あっ! あの時の!?」

「久しぶりだな、姫嶋」

「その節は大変お世話になりました」

「はは、そんな堅苦しくしなくていい」


 やばっ! またビジネスの感覚でやってしまった!


「あ、あはは、そうですね」

「それで、これは姫嶋がやったのか?」


 バインド効果でまだ身動きが取れないでいるゼノークスを見て、黒衣の魔法少女は訊ねる。


「あ、えと……まあそうですね」

「すごいな。こんな技は見たことがない」

「まあ、あはは……。ところで、どうして(さえぎ)ったんですか?」

「ああ、姫嶋の説明か。ゼノークスに限らず、魔物というのはある程度の情報共有機能を有しているんだよ」

「情報共有機能!?」


 そんな(すご)い機能があるのか……さすがは究極魔法(ウルティマギア)


「そうだ。大半の魔物は断片的でボンヤリとした情報らしいが、ゼノークスのような知能が高い魔物の場合、より具体的で鮮明な情報が共有されてしまう。そのために情報を引き出そうと仕掛けても来る」

「あ……」


 そういやさっき、ゼノークスに条件を話しかけた。あの流れをゼノークスが誘導したってことか?


「……具体的に共有されたら、他の魔物も私のスキルの発動条件を満たさないように立ち回れるようになる。だから止めたんですね?」

「その通りだよ。理解が早くて助かるよ」

「すみません」

「気にするな、狡猾(こうかつ)な魔物の罠には高位(ハイランク)魔法少女も時々引っ掛かる」

「……ところで」

「ん?」

魔物(ゼノークス)浄化しなくていいんですか?」


 拘束状態でも暴れていたのに、黒衣の魔法少女が登場してからゼノークスはやけに大人しい。しかしだからといって安全になったというわけじゃない。


「姫嶋が行動不能にしてくれたみたいだし、無理に浄化する必要はない」

「え? それはどういう……?」

「この空間は、ただの結界ではないということだ」


*   *   *


「よいしょっと!」


 大型ランクB・エイュロを倒した歩夢は小休止のため公園のベンチに腰を下ろす。


「ふぅ、あっつ」


 もう何体倒したのかすら分からない。倒しても倒してもキリがなく、さすがに汗をかいてしまった。


「……にしてもおかしいな、この空間」


 歩夢もこの謎の空間についておかしな点に気づいていた。

 そもそも結界魔法というのは通常、外界と空間隔離(かくり)する目的で使われる。しかしこの巨大な結界は明らかにその目的を(いっ)している。しかも、詳しく解析してみないと分からないが最低でも3つの魔法で構成されている。

 どう考えても異常で高度な魔法だ。


――それと、さっきの声。

 戦闘の合間、不意に聞こえた声は『まだいけるな? もうしばし持ちこたえてくれ』とだけ言って通信を切った。


「いったい誰だったんだろ? 聞き覚えのない声だったけど……」


 考えていると、再び魔物の気配を感じる。ランクB・シュノケッツが3体、こちらの様子を伺っていた。


「また厄介なのが現れたなぁ。……かえで大丈夫かな?」


 高位(ハイランク)魔法少女と同じくらい強い器と魔力があるとはいえ、長時間一人で戦闘になるのは初めてのはず。それに魔力の使い方がまだ下手だから、もしここと同じように魔物が無限湧きするなら危ない。


「でもアタシにはどうしようもないし、かえでを信じるしかないか」


 それと、持ちこたえろという声に期待するしかない。

 歩夢は立ち上がると、「うーん……!」と背伸びして戦闘態勢に入る。


「さて、もう少し遊んでやるか!」


To be continued→

最後まで読んで頂いてありがとうございます。

応援よろしくお願いします。


条件を満たしたことで発動した『冥府ノ誘』

要は超強力なデバフですね。行動不能にしてフルボッコにできるスキルです。なぜ楓人がそれを発動できたのかは後々。


そして14話以来の久々登場した黒衣の魔法少女。

彼女の正体もまた気になるところ。いったい何者なのか?


次回もお楽しみに。

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