謎の結界と二人の孤立④
「かえでちゃんって、本当は何者なの?」
「え……?」
困ったな……曖昧に誤魔化すわけにはいかなそうだ。かといって実は楓香が魔法少女になるはずで、俺が代行しているなんて流石に口が裂けても言えない。いや、そもそも口が裂けて上手く喋れるのか?
「かえでちゃんが私の味方っていうのは信じてる。あの日の傷は忘れてないよ。でも、私の身になにが起きてるのか、どうしてこんなことに巻き込まれているのか知りたいの。……かえでちゃんのことも」
「……」
俺が喋ってはいけないのは、次の3点
1. 実はオッサンという俺の正体。
2. 楓香が魔法少女候補であること。
3. 楓香の代わりに魔法少女をやってること。
ということは、魔法少女という存在と魔物についてなら話しても大丈夫か? 魔王については、なんとなくそんな存在がいる程度でいいだろう。だが一つ大きな問題がある。
なぜ楓香が狙われるのか? という点だ。
魔法少女としての強い器を持っているから狙われる。その事実を上手くぼかしながら、かつ楓香が納得できる理由を考えないといけないんだが……それが思いつかない。
「えーと、どこから話せばいいかな……」
姑息ではあるが時間稼ぎをするため悩むフリをする。いや、実際に悩んでいるんだけども。
「――ん?」
「どうしたの?」
どうしたものかと頭を悩ませていると、ふと影が落ちた。顔を上げると、そこにはとんでもない奴がいた。
おいおい……マジかよ。なんでコイツがこんなところに!?
「楓香、私から絶対に離れないでね」
「え? ――!」
振り向いて、それを見た楓香は声にならない悲鳴を上げた。
暗闇で待ち伏せて人を、魔法少女を狩る残忍な魔物。ランクA・ゼノークス。
「美味そうな人間と魔法少女がいるじゃないか……ハァァ……」
「ッ! ったく、人が思慮してたってのに」
明るいところでは初めて見る。全身黒い外殻で覆われていて、竜と蟹を足して2で割ったような外見はなかなかに威圧感がある。伊達にランクAじゃないな。
あの時は歩夢がボコボコにしてくれたが今戦えるのは俺だけ。しかも楓香を守りながらだから、かなり分が悪い。そして直感的に思ったのは、俺のマジカルスタイルとは相性がかなり悪そうだ。
「さーて、どうするかな……」
* * *
「ここか?」
「漆間と杉下、現着しました」
阿山千景本部長の指示で駆けつけた10キロメートルエリア担当の魔法少女二人、漆間華夜と杉下燐音は現場である公園周囲を警戒する。
『様子はどう?』
「……特に変わった様子は見られませんが」
オペレーターに訊かれ、華夜はぐるりと周囲を見渡すが魔物がいる気配は無く、魔法少女も見られない。
「うーん、なんか妙な感じはしますけどねー」
「妙だと?」
「うん。なんかこう、モワワワ〜って感じの」
「なんだそれは……」
『割り込み失礼ぃー、技術班の山田です。杉下氏のその感性、とても興味深いですねぇー。どの辺りがモワワワ〜ってしますかぁ?』
「えーと……」
燐音はキョロキョロしながらも、ビシッと指で方向を指す。
「あっちです!」
『北北東……なぁーるほどぉ、これは面白い』
「なんなんです? 面白いって」
『魔法の残滓です』
「ざんし??」
「確か、残りカスといった意味でしたか」
『その通りですよぉー、魔法というのは二つの痕跡を残します。一つは魔力反応、そしてもう一つが残滓というわけです』
「でも、その残滓っていうのが杉下のモワワワ〜となんの関係が?」
『ただの残滓ではありませんよぉー、これは空間魔法によるものです』
「空間魔法!?」
「それって確か、すっごい高度な魔法なんですよね?」
『今現在では空間魔法を使う魔法少女は二人だけです。うち一人は条件付きなので、実質一人しかいません』
「じゃ、じゃあその人が犯人なんですか!?」
『それはあとで詳しく調べてみないとなんとも言えません。ただ、とてつもなく貴重な現場であることは確かですねぇー。今から向かうので安全の確保をよろしくお願いしますよぉ……』
「了解。任務を続行します」
「相変わらずモノ好きな人ですねー、山田さん」
燐音がポツリと呟くと、華夜は肘で燐音の脇をつつく。
「やばっ! まだ通信中……!?」
「……いや、切れているようだ。良かったな」
「あーぶなかったー」
「とにかく警戒態勢だ。魔物の気配は無いが……油断するなよ」
「はーい!」
* * *
「せいっ!」
何度か片手剣で攻撃してみたが、外殻が思いの外堅くて薄っすら傷つく程度。やはり歩夢のような破壊力がないとキツイか……。
「ぐっ!」
それに太くて硬い尻尾が鞭のように超速で攻撃してきて避けづらい。仕方なく魔法の杖でガードするんだが――
「うあっ!? ……くそ!」
いちいち身体ごと飛ばされてしまう。魔法少女の身体は俺と違って軽いから、余計に吹っ飛ばされやすい。
「このままだと消耗戦になって、こっちが削り負けるぞ……」
一応ピュアラファイも試してはみたが効果は薄かったし、頼みの綱と言えばさっき聞こえた声の持ち主だ。
あの口ぶりだと、俺が楓香を守ってさえいればなんとかしてくれるんだろう。
「せめて私が倒れる前に来てくれよ、なっ!」
ゼノークスの攻撃を弾いて一歩下がろうとした、その瞬間。
「かえでちゃん!!」
「しま――!」
死角となった左から尻尾が伸びてきて直撃した。軽く数十メートル飛ばされた俺はボロ雑巾のように地面に倒れた。
「あぐ……っ!!」
ワュノード戦の経験からか、反射的に防御態勢を取ったおかげで今度は肋骨は無事のようだ。その代わりに腕が折れたんじゃないかってくらい痛い。多分ヒビ入ってる。
「……っ、はぁ、はぁ」
なんとか生きてる。でも次喰らったら確実に死ぬだろうな……。せめて楓香だけは守りたいところだが――
「はは……」
まったく、本当なら仕事してビール飲んで寝るだけの人生だったのが、命懸けで女の子を守るようになるなんて。
「本当に、人生……なにが起こるか分からねぇもんだな」
姿の見えない助っ人に繋ぐためにも、少しでも時間を稼ごう。
なんとか無事な右手で剣を構えると、違和感を覚える。
「……ん? 剣身の色って、こんな赤黒だったか?」
瞬間、俺の抜けていた記憶が一気に蘇った。
「――! そうだ、そうか、そうだった。……うん、これならいけるんじゃないか? いや、いける!」
気づきが確信に変わると、剣を強く握り直してカッコよくゼノークスに向けて切っ先を突きつける。
「お前に絶望を見せてやるよ。――冥府ノ誘!!」
To be continued→
最後まで読んで頂いてありがとうございます。
応援よろしくお願いします。
何気に新キャラ二人登場したのでキャラ情報載せておきます。
漆間華夜(14)
100キロメートルエリア担当tre'sの的場奏雨に憧れており、刀で戦うためにアタッカーを選択しました。とにかく奏雨に近づきたいので、衣装は和服テイストを取り入れたアレンジドレスにして髪を伸ばしてます。
杉下燐音(14)
感性豊かで派手好き。なので最初はマジカルだったんですが、派手さを優先しすぎてチームだと邪魔になりがちで、魔力消費も激しく燃費が悪いため渋々スタイル転向でアタッカーに。それからはハンマーを愛用しド派手な活躍を見せてます。髪色や衣装も派手。




