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謎の結界と二人の孤立②

「反応が消えた?」


 魔法(M)少女(G)協会(A)の執務室で仕事をしていた阿山千景は、技術班班長の山田一千花(いちか)から不可解な報告を受けて眉をひそめる。


「どういうことだ?」

「えーとぉ、10キロメートルエリア担当の葉道(はどう)歩夢氏がS区H公園にて魔物と遭遇して魔法少女に変身、そこに5キロメートルエリア担当の魔法少女が合流。おそらく応援に駆けつけたものと思われますが……そのすぐ後に反応が消失しました」


 ボサボサ頭に円縁眼鏡、ヨレヨレの白衣というお世辞にも綺麗な格好とは言えない一千花は頭をポリポリと掻きながらタブレット端末を千景に見せる。


「二人ともか?」

「はい、二人とも」

「魔法少女モードを解除しただけじゃないのか?」

「それがねぇ、魔法の杖の反応も消えてるんですよ」

「なに?」

「つまりですねぇ、歩夢氏と新人がどっかに消えちゃった。というわけです」

「待て待て、いくらファンタジーの世界だからといってそんな簡単に二人も人が消えてたまるか。センサーのエラーなどは考えられないのか?」

「まぁ、ほぼ100%あり得ないことですけどね、コンマ0002%くらいの可能性は否定しませんが」

「私だって我々の技術は信頼している。なんせ天界のバックアップがあるからな。しかし万に一つのこともある」

「それでは、調査しろと?」

「さすがにいきなり技術班を派遣するようなことはしない。10キロメートルエリア担当を数名現地調査に向かわせよう。現地の安全を確保したら向かってもらう。いいな?」

「ふむ……。仕方ないですねぇ、では準備してきます」

「すまんな、よろしく頼む。ああそれと、もう一つ頼みたいことがある。実はな――」

「――いいですけどぉ、別料金になりますよぉー?」

「分かっている。頼んだぞ」


――反応が消えた、か。

 歩夢はまだ全快していない。何事も無ければいいが……。


*   *   *


 信じられないものを見たような思いだった。

 さっきまで一切の人気(ひとけ)が無かった空間に、魔法少女代行(エージェント)として守る使命がある間宮楓香(ふうか)が突如として現れた。


「楓香!?」

「かえでちゃん……?」


 重い空気というか、なんとも気まずい。前回はなんとか色々と誤魔化したが今回はそうはいかない。逃げることができない。むしろ守らないといけない。


「えーと……ふ、楓香はなんでこんなところに?」

「え? えーと、友達と遊びに来てて……」


 そうか、このH公園は主にカップルが集うデートスポットだけど、周りにはお洒落な店もある。女子中高生が遊びに来ててもおかしくはないのか。


「そっか。ちなみにその友達は?」

「分かんない。なんか急に景色が変わって、気づいたら周りに誰もいなくて……」


 なるほど、この妙な空間に巻き込まれたのか。一般人がいないのは魔法少女の器が無いからか? でもそうすると楓香の友達も器が無いという事になるよな……?

 考えていると、耳元を何かが通り過ぎた。


「ん?」

「かえでちゃん! 頬から血が!」

「え!?」


 手で触れると確かに指が赤くなった。

 今さらだけど魔法少女に変身してても血が流れるんだな。トリ◯ン体みたいに特別な体で戦えればいいのに。


「なんだ?」


 なんの気配も感じなかった。遠くからの攻撃か?


「……!」


 センサーに意識を集中すると、ようやくその気配を捉える事ができた。


「アナライズ! ――て、あれ?」


 魔物があまりに速すぎるのか、アナライズが発動しなかった。


「よし、次こそ。楓香は私の後ろに」

「う、うん」

「……そこだっ!」


 アナライズを掛ける。が、またしてもタイミングが合わない。

 楓香が攻撃されないように守りつつ、超スピードの魔物を捉える。けっこう難しいぞこれ。


「なんなの? この虫」

「これは恐らく魔物だよ。アナライズしたいけど難しくて……え?」

「え?」

「今、なんて言ったの?」

「えと、……なんなの? この虫。って」

「見えたの!?」

「う、うん。私、目は良いから」


 魔法少女になって大幅に身体能力が向上しているはずの俺ですら、()()()()()()くらいにしか分からなかった。

 それを楓香は、魔法少女に変身しない素の状態で見極めた?


――聞いたことがある。

 格闘技などの達人は相手の身体の予備動作、起こりとも言ったか? それを見ることでどんな攻撃が来るのかを予測できると。野球で言えば究極的には投手がどんな球を投げるのかすら予測できるとか。

 もし楓香が魔法少女になったら、魔物の攻撃が当たらない最強のノーダメ魔法少女になるんじゃないか?


「来るよ!」


 楓香の声で我に返ると、魔法の杖を構える。アナライズしなければ対処法も分からない。ここで決めないと!


「私が合図するから、合わせて!」

「楓香……分かった!」


 まさかの協力プレイになるとは……。しかし今は楓香に頼るのが得策だろう。意識集中(コンセントレーション)


「……今だよ!」

「――アナライズ!」


 相変わらず一瞬しかタイミングが無かったが、今度はちゃんと発動していた。


「やった!」

「おめでとう!」

「ありがとう、楓香のおかげだよ」


【バヌッツ】

小型ランクCの魔物。蜂のような虫型で普段は単独行動をするが外敵が現れると集団で襲いかかる。巣から半径1キロメートルを縄張りとしており、侵入者には容赦ない。巣を破壊しない限りはほぼ無限に襲われる。


「バヌッツか。巣を破壊すればいいんだな? よーし! 楓香はここに――」

「私も行くよ」

「え!?」

「だって、かえでちゃんが頑張ってるのに、隠れてじっとしてなんていられないよ!」


 真っ直ぐ俺を見つめる楓香は、魔法少女に選ばれるだけあって意思の強さが目に宿っていて、燃えるように宝石のようにキラキラ光っている。これは俺ごときの説得が通じる相手じゃなさそうだ。


「……しょうがない。私の後ろにいて、離れないようにね!」

「うん、分かった!」


To be continued→

最後まで読んで頂いてありがとうございます。

応援よろしくお願いします。


書き溜めようかとも思いましたが、すでに一ヶ月以上、下手したら2ヶ月近くのブランクになってしまってたので更新しました。若干の軌道修正したつもりが新章一つ分くらいにまで膨らんでしまって、しかしストーリー上必要な事ではあるので書き進めて行きます。


オッサンだとバレた上に楓香まで迷い込んでしまったこの危機的状況を、楓人はいったいどうやって切り抜けるのか、お楽しみに。

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