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魔法少女かえで@agent 〜35歳サラリーマンが魔法少女やることになりました〜  作者: そらり@月宮悠人
第一章

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緊急事態!?

「せんぱーい」

「……」

「せ・ん・ぱーい」

「……んん」

「起きないですね」

「こうすれば一発だ」


 耳元で「納期間に合わねーぞ」と聞こえた俺は、ほぼ条件反射で「うわぁぁー!!」と叫びながら飛び起きた。その拍子に目の前にいた雷都に頭突きしてしまった。


「ぐあっ!」


 わりと本気で痛かったらしく、雷都は頭を抱えて悶える。


「てめぇ! 殺す気か!」

「いや、悪い悪い……まさか目の前にいるとは」

「あー痛ぇ……。お前徹夜かよ?」

「ああ、まあな。おかげでかなり進んだよ。寝不足だけどな……ふぁ〜」

「……先輩これ、一人でこんなにやったんですか!?」

「ん? ああそうだよ」

「どれどれ……ああ、こりゃまたキレイに書いてあんなぁ、さすがコードの鬼」

「どうしてですか? 納期まで本当に時間無いのに」

「ああ……なんていうか、丁寧に書くと分かりやすいし気持ちいいだろ? それになんかあった時に対応がしやすいし」

「こいつは昔からコード書くのだけはキレイにやるんだよ。他はわりとズボラだけどな」

「へぇー……」

「さて、今日も頑張りますか」

楓人(あきと)は今日終わったらすぐ帰れよ」

「そうもいかない。最終チェックもあるし」

「あのなぁ、また倒れたりしたら、しわ寄せはこっちに来るんだからな? 分かってんのか?」


 寝起きの頭にボールペンをコツコツと当てられる。


「分かってるよ……」

「ったく、まず顔洗ってこい」

「ああ、そうするよ」


 こんな事もあろうかと、念のためロッカーに置いてあったタオルを持って顔を洗いにトイレへと向かう。


「ふぅ……」


 冷水で洗うと目が覚める。

 仮眠時間は2時間ほど。よく眠れたほうだ。一応スマホで目覚ましは設定しておいたが、新島と雷都のおかげで起きることができた。


「新島……か」


 新島が魔物化したら、他の魔物と同様に浄化しなくてはならない。すぐにではないが、そう遠くないうちに。

 なんとかならないものか。というのはぷに助にも聞いたが――


『どうにもならん。器は割れたら修復不可能なのだ。魔物化する汚染度は魂によって違うため、早いか遅いかしかない。魔物化は止められない』

『つまり……救う方法は無いってことか』

『残念ながらな』


「くそっ!」


 なんで新島なんだ? どうして……。

 これじゃまるで、余命宣告じゃないか――!


「おい、なにかあったのか?」

「え?」


 トイレに入ってきたのは、先輩諸氏の中で一番チャラくて仕事ができない小宮和史だった。

 女遊びが派手なことで有名で、この会社の中だけで10人は手を出したらしい。


「いえ、別に」

「なんだよ、俺には相談できねーってか? なんなら女紹介してやろうか? この前いい女見つけてよ、まだ18なんだけどな」

「ちょっ! 未成年じゃないですか!」

「んだよ、気にすんなそんなこと。今どきは16から()()()なんだからよ」

「――!」


 こいつ……女遊びが派手だとは聞いてたが、まさか未成年にまで手を出してるとは……!


「い、いえ、俺は別に……」

「あ? お前ホントつまらねぇなぁ、女くらい知らないでどうするんだよ?」

「いえ、その、仕事で手一杯なもので……」

「んだ? 俺は仕事してねーみたいじゃんよ?」


 その通りだよヤリ○ン野郎。


「いえいえ、また今度ということで」

「たーくよぉ、真面目ちゃんだなお前は。ま、お前には新島がいるからいいか」

「え?」

「え? なに? お前まさか……気づいてねぇの?」

「えーと……」

「かぁーっ! お前ヤバいぞそれ! まあ、俺の好みじゃねーから別にいいけどな、さっさと仕事戻れよー」

「は、はぁ」


 なんだったんだ? 確かに新島は職場の紅一点だけど……まさか狙ってるのか? でも好みじゃないと言ってたし……訳が分からん。

 開発室に戻ると、新島も雷都も黙々と仕事していた。俺も自分の席に座って仕事を再開する。

 山田商事の案件が最優先だが、十河(そごう)運輸の方も大枠くらいは作っておかないといけない。


「終わる気がしない……」


 ボヤきながらもキーボードを叩いていると、社内メッセンジャーに通知が入る。


「まさか案件追加とか言わないよな?」


 いくらなんでも追加されたら冗談抜きに死ぬ。今日も徹夜しないといけない。また過労で倒れるぞ。


「なんだ、新島からか」


『先輩、お手伝いできることがあったら言ってくださいね、なんでもしますからっ!』


「……なんでもか」


 分かっちゃいるけど妄想してしまうのは男の性だろう。詳しく書いたら官能小説になってしまうので残念ながら割愛する。

 気持ちはありがたく受け取る。今度飯でも奢ってくれ、と書いて返信した。


「緊急事態だ!」

「――!?」


 目の前にいきなり現れたぷに助に驚いて、危うく椅子から転げ落ちるところだった。


「てめ――!」


 反射的に叫びかけてハッとなる。

 昨夜とは違う。今は昼間で新島と雷都がいる。しかも新島にはぷに助が見える可能性がある。

 下手に騒いだらまずいので小声で話す。


「なんだコノヤロー、俺を殺す気か? 社会的に抹殺する気か?」

「アホが! ()()()()()()()()()知れんのだぞ!」

「はあ?」

「あの御方が会いたがっているんだ!」

「あの御方って、歩夢のことか。会えばいいのか?」

「そうだ。()の姿でな」

「素の姿って……?」

「つまり、()()()()()()姿()の姫嶋かえでと会いたいそうだ」

「い、いつ……?」

「明日だ!」

「ええー!?」


 思わず声を出してしまって慌てて口を閉じる。新島が「どうかしましたか?」と訊いてくるので「いや、ちょっとな、なんでもないよ」と笑って誤魔化す。


「あの御方の行動力はハンパじゃないからな。いいか? 明日夜9時にH公園だ!」

「夜9時!? H公園は近いからいいけど、9時かあ……仕事間に合わない――」

「アホか! 正体バレるかどうかの瀬戸際だというのに仕事してる場合か!」

「うっ……」

「いいか、しっかり伝えたからな!」

「え? おい待てよ、俺はどうすればいいんだ!?」

「私は忙しいのだ! 追ってまた連絡する!」

「連絡って、俺は今魔法の杖持ってないんだぞ!? おーい!!」


 しかしすでにぷに助の気配はなく、カタカタとキーボードを叩く音だけが聞こえていた。

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