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魔法少女かえで@agent 〜35歳サラリーマンが魔法少女やることになりました〜  作者: そらり@月宮悠人
第三章

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昇格試験⑥ 帰来の眼力

 本部ロビーに行くと、試験官の帰来と阿山本部長もいた。


「阿山本部長、お久しぶりです」

「姫嶋、学院は大変だったようだな」

「はい。でも、協力者の皆さんに助けていただきました」

「今後はこちらとしても全面的にバックアップする。なにかあったら遠慮なく言うといい」

「ありがとうございます」

「姫嶋さん、魔力管理をミスったと言ってましたね」


 視線だけで殺せるような眼力で俺を睨む帰来にビクッとなる。


「は、はい……」

「あなたの魔力量は知ってます。ポートフォリオにピュアラファイしかないことも。それでどうして魔力管理をミスるのか、私には判然としません」

「あの……。実はですね」

「ボクのせいにゃ」


 ニャースケが俺の肩にピョンと飛び乗る。それを見て、阿山さんが目を見張る。


「お前は……トリックスター!?」

「え? 阿山さんご存知なんですか?」

「ああ……昔先輩に聞いたことがあった。どこでそれを?」

「前回使用者の友人である北見校長先生から」

「そうか! 継承魔法だな!?」

「はい」

「阿山本部長、トリックスターってなんですか?」

「私も詳しくは知らんが、()()()()()の魔法だとは聞いたよ」

「いわく付き?」

「トリックスターを使おうとする魔法少女は、器が枯れるんだそうだ」


 ああー、それはきっと創造魔法とかで魔力使い過ぎたせいだろうなぁ。今なら分かるわ。


「なるほど。制御できず魔力を使い果たしてしまった。ということですか」

「しかし、花織の弟子である姫嶋がトリックスターの継承者になるとはな」

「え? 花織さんトリックスターとなにか関係があるんですか?」

「昔、花織が継承者の有力候補とされていたんだよ」

「ええええええ!?」

「だが選ばれなかった」

「それは少し違うにゃ」

「どういうことだ?」

「花織灯は自ら辞退したんだにゃ」

「なんだって? 聞いてないぞ!」

「花織灯はトリックスターに触れただけで継承者は自分じゃないと悟ったにゃ。だけど使ってもないのに辞退したら色々言われると思ったにゃ。だからボクが選ばなかったことにしたんだにゃ」

「そう……だったのか」


 ニャースケの機転だったわけか。それにしても花織さんはどうして使わないのに、触っただけで自分は違うと思ったんだ? あとで訊いてみるか。


「だが、使わなくて良かったと思うよ。もしトリックスターを使っていたら100キロメートルエリア担当まで上り詰めることも無かったろう」

「どうしてですか?」

「トリックスターはかなりピーキーな魔法だと聞く。マジカルスタイルにはピーキーな魔法は向かないと昔から言われているんだよ」


 確かに、トリックスターほど尖りまくって扱いづらい魔法もないだろうしな……。


「でも、私もマジカルスタイルですよ?」

「今はそうだが、実は向いてなかった。ということもある。帰来はどう思う?」

「そうですね……。私も姫嶋さんにマジカルは合わない気がしてました」

「そうなんですか!?」

「姫嶋さんは何度かアタッカーでも戦闘してますよね?」

「あ、はい」

「今回の試験に来たシャルロット・高槻さんのように、スタイルのコンバートは珍しくありません。だからマジカルに拘る必要はないんです」

「そうなんですか」


 そういや、俺がマジカルを選んだのって、格闘経験が無いとか怖いからって理由だったもんな。

 

「だが、今はもう花織の弟子だからな。今後の方針は花織と相談するといい」

「分かりました。……ところで阿山さんはどうしてここに?」

「昇格試験には本部長も立ち会う決まりなんだよ」

「ああー、そういえば技能試験の時にもいらっしゃいましたね」

「しかし今回は残念だったな。滅多にないチャンスだったが」

「仕方ないですよ。まだまだ未熟だということが分かったので、花織さんに鍛えてもらいます」

「ふっ、それがいい。あとはライブに集中するといい」

「はい。ありがとうございます」

「阿山本部長、本気ですか?」

「ああ」

「え? なんですか?」

「昇格試験は、全員が終わるまで待機するという決まりがあるんです。特別試験といえども例外ではありません。それなのに阿山本部長は姫嶋さんを特別扱いしているんです」

「え……」


 なにこの空気。帰っちゃいけないやつ?


「気にするな姫嶋。帰来は仕事に忠実なだけだ。それに、この件については前もってスレイプニルなど上の許可も取ってある」

「そうなんですか?」


 それならなんの問題も無いはずだが、帰来にとっては許せないんだろうな。


「すみません、帰来さん。今回のミニライブはどうしても外せなくて……」

「知りませんよ。試験があるのは分かっていたんですから、キャンセルすれば良かった話です」

「それはできません」


 強く言うと、帰来はまた殺しそうな眼力で睨む。さっきは驚いたが、俺はもっと嫌な野郎の睨みを知ってる。本業と同様に毅然と立ち向かう。


「このミニライブは煌梨が絶望から立ち直るためのライブでもあるんです。多くの人の協力があって、皆の想いが詰まってる。それに、楽しみにしてくれてる人たちを裏切れない」

「それはあなたの勝手な思いでしょう。この試験は魔法少女にとって千載一遇のチャンスだったんですよ? ライブなんていつでもできるでしょう」

「今回は三ツ矢女学院でのミニライブなんです。たぶん最初で最後のライブになります。それに、50キロメートルエリア担当昇格試験だってチャンスはまだありますよ」

「あなた……50キロメートルエリア担当の昇格試験がどれほどキツイのか分かってるの?」

「はい。正規ルートで受ける予定でしたから」


 正確には、()()()ルートだけどな。


「……呆れた。アイドルやりながら高位(ハイランク)魔法少女になろうなんて……。もういいです。早く帰りなさい」

「はい。お疲れさまでした!」


 本部を出ると、阿山本部長から個別通信が入る。

 

〈すまんな、帰来も根は悪い奴じゃないんだが……〉

〈いえ、そう言われても仕方のないことですから〉

〈だが帰来の言う通り、アイドル活動しながら高位(ハイランク)魔法少女を目指すのは並大抵のことではない。無茶はするなよ〉

〈はい。ありがとうございます〉


 アイドル活動どころか、負担減ったとはいえ社会人と学生もやりながらなんだよな。本業と魔法少女の両立に悩んでた頃が懐かしいぜ……。

 まあいい。そんなことより今はミニライブだ。絶対に成功させてやる!



 To be continued→

最後まで読んで頂いてありがとうございます。

応援よろしくお願いします。


帰来さんはちょっとキツイですが真面目な子です。今後も隙を見て登場させたいなと企ててます。

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― 新着の感想 ―
まあ、主人公の境遇では帰来みたいに文句を言う人物が出てくるのはよくわかる。 ただ、これでアイドルも魔法少女も両方とも成功したりしたら才能がとか言われて努力が認められないのではと不安だ。主人公は面倒な…
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