昇格試験②
「きらちゃーん、かえでちゃんはー?」
ライブの準備のため、HuGF一行は専用バスで三ツ矢女学院へ向かっていた。
「ああ、用事があるから遅れるって言ってたわよ」
「ええー!? ライブに間に合うの!?」
「かえでが大丈夫って言ってたし、ヘーキでしょ」
「うーん、心配だなぁ」
「響子さんは心配性ですね」
「明音ちゃんは心配じゃないのー?」
「私は私のパフォーマンスだけ心配してます」
納得いかない様子でふくれる響子だったが、これ以上は無駄だと悟り、大人しく席に座る。
「かえでなら大丈夫よ」
煌梨は小さく呟くと、今頃は昇格試験に挑んでいる頃だろうか、と車窓から空を見上げる。
――そう、きっと大丈夫だ。
かえでには高位相当の器と魔力があるのだから。どんな試験だろうと、試練だろうと、かえでなら乗り越えられる。
そう確信して、煌梨は目を閉じた――。
* * *
「なっ……」
魔物の姿を見て目を見開く。外見は青いクリスタルのようで、そんなに大きくはない。せいぜい俺の元の姿と同じか、少し大きいくらいだ。
だが、アナライズできなくても分かる。こいつは最低でもランクA+だ!
「50キロメートルエリア担当になると、こういった任務もあるってことか」
単独でランクA+を相手にするのは初めてだ。模擬戦とはいえ緊張感がある。
「やるしかないな」
とりあえず様子見でピュアラファイを撃つ。しかし当然のように効かない。それどころか弾かれてしまった。
「クリスタルの見た目通りか」
次に【双天緋水】で斬りかかる。が、ダメージどころか刃が通らない。
「堅っ! 本当にクリスタルそのものか」
と、静止状態だった魔物が動き出す。クリスタルがバラバラと剥がれると空中に展開する。
「なんだ?」
「Convergence」
機械的な音声が流れると、本体らしき大きなクリスタルの中心から空中に展開されたクリスタルの欠片に向かってレーザーが放たれた。
「マズい!」
慌てて横っ飛びして避けると、多方面から一点に集中したレーザーが地面に大穴を開けた。
「おいおい、これってまさか――!」
「Random」
今度はレーザーが不規則に放たれる。
「うわああああ!!」
一撃でも喰らえば瀕死になるような攻撃が乱射される。下手に避けられない。
「ど、どうすりゃいいんだよ!?」
と、少し距離を取ったら攻撃が止んだ。
「なんだ? どうして?」
休めるのは有り難いが、なんだか不気味だ。まるで嵐の前の静けさのような……。
「Long range」
「は?」
展開してたクリスタルが中央、本体付近に集まっている。そしてロングレンジ……ってことは!?
「くそ!」
咄嗟にクイックドロウでピュアラファイを撃つと、魔物のレーザーとぶつかる。
「くぅ……!!」
同じA+でも生島と戦ったポラキオノゥスは生島の魔力を吸収したが、こいつは素の攻撃力だよな。いくらクイックドロウでもこんなに重いものか!?
「うぉあああああ!!」
強引に魔力を上乗せして押し返す。それでも拮抗する程度だ。こいつ、まさかA++なのか!?
「あらっ!?」
突然軽くなって手応えが無くなる。ピュアラファイを止めると、今度はクリスタルが縦に並んでいた。俺の魔法なんて痛くも痒くもないってか。
「今度はなんだ?」
攻撃が予測できない。どう避けたらいいか分からない。しかし形としては縦なんだから、横に逃げればいいよな?
「Sword」
「なっ!?」
ビームサーベルとか、そんなのアリか!?
「うおおおっ!?」
クリスタルが自在に変化するものだから、剣というより鞭に近い。周りの木々を薙ぎ倒しながら刃が迫る。
「双天緋水!」
アイクルの攻撃を切れたんだから、このビームサーベルだって切れるはず! ――と思ったら、ビームサーベルのほうが強いせいか【双天緋水】が折られてしまった。
「マジか!?」
慌てて回避しつつピュアラファイで牽制する。だがもうピュアラファイは全く相手にされてない。「それがどうした?」と言わんばかりに攻撃は苛烈になっていく。
「A narrow focus」
クリスタルの欠片が本体の前方に集まる。避けようとしても追跡する。
「これは本当にヤバいかもな……」
エネルギーが集中しているのが分かる。圧縮されたレーザーで俺を貫くつもりだろう。だが――
「タダでやられる訳にはいかないんだよ!」
レーザーが放たれると当時に、奥の手の魔法を発動させた――。
To be continued→
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