事件後 - 真の目的
――2日前。
三ツ矢女学院の上空でヤノウと花織灯が対峙した時のこと。
「お話ですか」
「ええ。あなた、三ツ矢女学院に潜入してるスパイでしょ?」
「なっ!?」
「ふふ、その反応で十分よ。べつにあなたを咎めたり処罰するわけじゃないから安心して。そもそも天界の意思で魔法少女協会が派遣した魔法少女ですもの、処罰もなにもないでしょう」
「ど、どうしてそのことを!? 魔法少女協会でも最高機密の情報ですよ!?」
「それは、私が三ツ矢女学院の卒業生だからかな」
それなら北見校長や中原理事長も知ってるはずでしょう。とツッコミたい衝動を堪える真中は、警戒を緩めずに続ける。
「それで、私になにか命じたいことでもあるんですか?」
「いいえ、今知りたいのは、ニューラの真の目的」
「――!?」
なぜそんな事まで分かるのか、どうして自分に訊ねるのか、あらゆる疑問浮かび逡巡し、真中は一つだけの質問に絞った。
「どうして、私が洗脳されてないと分かったんですか?」
「そっか、洗脳魔法だったのね」
「え? 知らなかったんですか!?」
「ええ。だって今さっき来たばかりだから」
「はぁ……」
「うーん、色々あるけど、決め手はあなたが魔法少女だから」
「でも、私は魔法少女としての証をなにも持ってませんよ? 魔法の杖は持ってないし、器の契約だって隠蔽されてます。なにを根拠に?」
「そうねー、例えば他の子は魔法を使いこなせずに暴走気味になってるのに、あなたはちゃんと魔法を扱えてる。司令塔に選ばれるくらいに」
「あ……」
「それに御坂さんを呼ぶのに魔法通信を使ってた。あと、私のことを知ってた」
「う……」
「知らないほうがどうしてる。それは『魔法少女なら』の前提よね? それと秘密任務。これも機密事項を扱う魔法少女の任務のこと。ならもう、洗脳されてるって思うほうが無理あるでしょう?」
真中は様々なやらかしを悔いて恥ずかしくなり両手で顔を隠した。
「そんなぁ……。あれだけ注意を払っていたのに……」
「突然私みたいなのが現れて動揺したんでしょう? ごめんなさいね、全部計算だったの」
「うう……」
「遮音結界に封魔結界と保護シールドを重ね掛けしてあるわ。これでニューラにも魔法少女協会にもバレない。話してくれる?」
「……はい」
真中は知り得る限りのニューラについての情報を話した。計画は5年前から始まっていて、教師を洗脳するところから始まり、学院を掌握して結界を壊そうとしていたと。
「それで、ニューラが本当にやりたいことってなんなの?」
「地下にある結界の破壊です」
「地下の結界って……あの伝説の?」
三ツ矢女学院に伝わるファンタジックな伝説。それは地下にこの世の災いが封じられているというもの。よくある七不思議のような話だが、一説によるとそれは大昔に隠された金銀財宝に近づけないようにするための作り話だとも言われる。
「昔探したこともあったわねー、結局地下への入口なんて見つからなかったけど」
「地下への入口はまだ見つかりませんが、その中身は分かりました」
「うそ、本当に? もしかして本当に金銀財宝?」
ワクワクしている花織は、次に放つ真中の言葉に衝撃を受けた。
「中に眠っているのは、ランクDの魔物です」
「――!! ランクD……」
「ニューラは常々言ってました。フェスティバルが楽しみだと。最初は洗脳した生徒で混乱状態を作り出すことだと思ってましたが、真の目的を知ってゾッとしました」
「フェスティバル……そういうことだったのね」
「私はどうにか阻止できないかと、ずっと探っていました。しかしこれと言った手立てはなく、魔法少女協会に報告をするくらいしか……」
「もう一つあるじゃない」
「え?」
「ニューラを浄化しちゃえば、企みはそこで終わるわ」
「ですが、ニューラはものすごく用心深い魔物です。そう簡単には倒せません」
「任せて。これでも100キロメートルエリア担当だから、あなたの苦労は無駄にしないわ」
そのやり取りの後、ニューラは見事に花織の策に嵌められ、最後は花織の魔法によって葬られた。
魔法少女協会と天界にはニューラの野望についての情報と、それを阻止したとの報告がされ、真中優には特別功労賞と副賞として1万MPが与えられた。
To be continued→
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ちょっとした裏話ですが、真中が図書館に仕掛けた結界魔法は花織のを真似てます。




