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魔法少女かえで@agent 〜35歳サラリーマンが魔法少女やることになりました〜  作者: そらり@月宮悠人
第三章

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戦いが終わって - 陽奈の焦げた気持ち

「花織さんが応援に来てくれて助かった……」


 いきなり通信が飛んできた時はビックリした。パートナー契約すると使える特別回線は通信妨害の影響を受けにくいんだそうだ。

 確かに専用回線のことは聞いたが、まさか通信妨害も平気だとは……。知ってたら真っ先に使ったのに。


「それよりも」


 フィノェラもニューラも片付いた今は陽奈だ。生存確認は取れてるが、大怪我してたら大変だ。


「陽奈!」

「……うーん」


 茂みに落ちたからか、ほぼ無傷だった。


「良かったぁ」

「……かえで?」

「陽奈! 気がついた?」

「私……確か、図書館で誰かと会って……」

「ニューラの刺客と戦って気を失ったんだよ」

「そっか……。ごめんね、迷惑かけちゃって」

「いいんだよ、気にしないで。全部終わったよ」

「え? 終わった?」

「うん。ニューラは花織さんが倒してくれたし、他の皆も――」

「……めだ」

「え?」

「だめだ私……なんの役にも立てなかった」

「そんなこと」

「分かってるの!」


 急に大きな声を出して、陽奈は涙を浮かべる。


「陽奈……?」

「私は特別なんかじゃない! 姉さまとも違う、かえでとも違う。私には才能がないの! たまたま魔法少女の器があって魔法少女には選ばれた。最初は嬉しかった。……でも、背伸びしても10キロメートルエリア担当が限界だってすぐ分かったの……!」


 陽奈がこんなに感情を露わにして取り乱すのは初めて見る。


『少し後遺症は残るかも知れんがな』


 まさか、これが……?


「今回かえでをエスコートすることになって、私の努力の成果を見せる時が来たと思った。でも、それなのに……かえでは護衛の必要がないくらい強いじゃない!」

「――!」


 まさか……。三ツ矢女学院に来てすぐ結界の掃除をした時、様子がおかしかったのって……。


「私は……かえでの側にいる資格なんて……ないんだよ……」


 涙が溢れ、顔をクシャクシャにして泣き崩れる。

 

 インフルエンサーとして、ビジネスマンとして華々しい活躍をする姉・彩希。偉大な身内がいるとどうしても◯◯の妹といった言われ方をするものだ。

 魔法少女の中でもさらに特別な存在はいる。普段は雲の上の存在だが、姫嶋かえでという例外的な存在が身近にいれば否が応でも思い知らされるだろう。


 陽奈は三ツ矢女学院の生徒で、魔法少女では主力級(エース)としての立ち位置。平々凡々な俺からすれば十分に恵まれてると思う。なんせ有栖川グループ総帥の孫娘だ。

 陽奈はずっと苦しんでいたんだろう。誰もが経験するような、共感できる辛さじゃない。理解者はおらず三ツ矢女学院では一人だ。


「私が強いわけじゃないよ」

「どういうこと……?」

「確かに器は強いだろうし魔力も大きい。けど、ずっとピュアラファイでゴリ押してるだけだし、周りがサポートしてくれたから、ここまでやってこれただけ。

 怒られるかも知れないけど、私は魔法少女になりたいと望んでなったわけじゃないんだ。偶然のキッカケで魔法少女になって、理由(わけ)も分からないままに魔物と戦わされて。ぷに助からの理不尽も1回や2回じゃないし、キュアオールがなかったら3回は死んでる」


 まあ、うち2回は考えなしに勝手に身体が動いたから、自業自得とも言えるが。


「結界の掃除なんて雑魚が多いんだし、無駄に魔力出せる私が早く処理できるのは当然だよ。逆にランクAは圧倒的に陽奈が有利。私なんか後ろで応援するしかできないよ」

「で、でも、私なんか洗脳されちゃって」

「あんな初見殺しされたら高位(ハイランク)だって洗脳されちゃうって。新種なんだよ? 教師を操って間接的に洗脳するとか普通考える!?」

「あ……か、考え……ない」

「でしょ? それくらい狡猾な魔物だったんだよ。――それに、嬉しかったよ」

「え?」

「魔物が波状攻撃を仕掛けて来た時、私は高位(ハイランク)じゃなきゃって思って北見校長に申請した。でもそこへ陽奈がやって来て、私に言ってくれたじゃない」


『頼って、私たちを』


「あの一言がどれだけ嬉しくて心強かったことか。皆と協力して一気に制圧してくれて、本当に頼りになるって思ったよ」

「……っ」

「彩希はすごいよ。マルチタレントだと思う。世間の人は有栖川といったら彩希だと口を揃えて言うだろうね。でもだからって、陽奈が特別じゃない理由にはならないよ。それに、私にとって陽奈は特別だよ」

「かえで……!!」


 抱きつかれる。が、しかし倒されなかった。何度も響子にタックルされてるから慣れたな。


「かえで……私……側にいても良いのかな?」

「もちろん。陽奈がいなかったら困るよ。私がお嬢様じゃないの、すぐバレちゃう」

「……しょうがないな。私がサポートしてあげる」

「うん、よろしくね」


 魔法の後遺症だったのかは分からないが、なんとか落ち着いてくれたようだ。泣き疲れたのか寝てしまった。


「――!!」


 こ、この殺気は……魔物!?

 いや、魔物の気配はない。ということは、まさか陽奈を狙う人間が――!?


「……って、なにしてんの水鳥」


 物陰からこちらを呪い殺しそうな目で見ていたのは風間水鳥だった。


「かえで様……陽奈となにを……」

「なにって、慰めてただけだよ」

「慰めて!?」

「おいおいその妄想はストップしないと色々ヤバいって」

「ハァ、ハァ……」

「まったく……。水鳥もお疲れさま。ありがとう」

「え?」

「ニューラの手駒になった生徒と戦ってくれたんでしょ?」

「かえで様のためです。当然のことですわ」

「そうだ、私は報告あるから陽奈をお願いできるかな?」

「もちろんですわ」

「じゃあ、またね」


 これ以上、陽奈と一緒にいると水鳥がなにするか分からないしな。

 北見校長と中原理事長に今回の事件について報告に行こう。



 To be continued→

最後まで読んで頂いてありがとうございます。

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