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魔法少女かえで@agent 〜35歳サラリーマンが魔法少女やることになりました〜  作者: そらり@月宮悠人
第三章

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学院の異変㉙ 最後の抵抗

「ふ、フフフ」


――片腕で済んだのは不幸中の幸いでした。

 花織灯の付き人があんなに強力だとは。しかしあとはプランCを完遂するのみ。最後に笑うのは私です!


「あら、そんなに急いでどこに行くのかしら?」

「――!?」


 ニューラの行く手を阻むのは、千歳の主であり現役最強の魔法少女、花織灯だった。


「……驚きましたね。気配は完璧に消してたはずですが」

「ええ。限りなく完璧に近かったわ。私でも発見できなかった」

「なるほど。先ほどの襲撃といい、私を見つけることのできる魔法少女が他にいるようですね。これは良いことを知りました。この魔法はまだまだ改善の余地がある」

「残念ね、改善する時間はもう無いわ」


 花織はニューラに魔法の杖を向ける。幼児向けのオモチャのようなデザインの杖なのに、花織が持つとまるで千歳の刀のように鋭い切っ先を突きつけられる感覚に陥る。


「撃てはしないでしょう。私に聞きたいことは山ほどあるはずだ」

「ええ、それはもう。でもね、人間と違って魔物は本人からじゃなくても情報を吸い取れるの」

「まさか!」

「あら、察しが良いわね。分かる? 今あなたが逃げようが関係ないのよ」


――なんて恐ろしいことを!

 花織灯は今、私の中からコアを無傷で取り出して直接情報を吸い取ると言ったのだ! それは人間で言えば脳を取り出すのと同じことだ!


「き、貴様なんて非道な!」

「非道? 沢山の人を意のままに操り、捨ててきた外道の言葉とは思えないわね」

「私には崇高な目的があるんだ! 何年掛かろうとも達成しなければならない!」

「崇高な目的に向かって達成しようとする。その意気込みは買うわよ。――ただし、周りに迷惑を掛けないならね」


 花織の圧が次第に高まる。すでに戦闘態勢に入っていた。

 しかしニューラはこの状況を切り抜けるための秘策があった。長い時間を掛けて仕込んだとっておきの策略が。


「フフフ……。私としたことが熱くなってしまったようです。こちらも時間がありませんので、仕上げと行きますよ」


 どんな動きがあってもいいように構える花織だったが、ニューラは右手で指をパチンと鳴らすだけだった。


「フフフ……なにをしたのか分からないでしょう? これからですよ、フェスティバルの開演は!」

「ふふ、それはどうかしら?」

「なに?」

「今よ、かえでちゃん!」


 花織の合図を聞いた楓人は「了解!」と応えると、魔法の杖を構えて意識集中(コンセントレーション)に入る。


「頼んだよ、メイプル!」

『了解。全校生徒の座標を特定。拡散(ラジエル)ピュアラファイの照準を合わせます』

「いくぞー、フルパワーの拡散(ラジエル)ピュアラファイ!!」


 夕方の空を照らすような眩い白銀の光が空から降り注ぐ。それら一つ一つが精密に制御され、洗脳魔法が発動した生徒全てを浄化した。


「ふぅ、こんなもんか?」

『反応は全て消失しました。オールグリーン』

「よし、花織さん! 終わりましたよ!」


 切り札として仕込んだ魔法反応が一瞬にして全て消失したのを察したニューラは、開いた口が塞がらない様子だった。


「な……なっ……!」

「うん、ありがとう。……あら、信じられないって顔ね」

「馬鹿な! あんな馬鹿げた解除方法……いや! それよりもなぜ! なぜ()()()()()()()()()()()()()()と分かった!?」

「私の愛弟子ですもの、これくらいやるわ。そうね、気づきの最初もかえでちゃんよ」

「なに!?」

「あなたでしょう? ()()()()()()()()()()洗脳魔法を仕込んだのは」

「ぬぐっ……!」

「全校生徒に洗脳魔法を掛けるのは相当な時間が必要になる。でも全員が食べるカレーに仕込めば簡単よね。そのために魔物に襲わせたんでしょう? 店に直接行くのはリスキーだものね。

 ちなみに魔法少女には直接掛けた。なぜなら魔法少女には効きづらい魔法薬だから」

「ぐっ……」

「この方法なら結界の外側にいながら洗脳魔法を発動できるし、撹乱にも使える。今やろうとしたようにね」


――まさか、ここまでとはな。

 油断したつもりはなかった。計画は綿密に練った。準備万端だったはずだ。

 全てをひっくり返したのは一見この花織灯のようだが、ほんの僅かな違和感から真相に辿り着いたのは姫嶋かえでだ。例外的特異点は魔法少女としてだけだと思っていたが、最大の障害はどうやら奴のようだ。

 

「……フフフ、お見事ですよ。長い時間を掛けて準備してきた計画だったんですがね。非常に残念でなりません」

「どうする? 大人しく降参するなら悪いようにはしないわ」

「おや、心外ですね。今のが最後の手段だとお思いですか?」

「え?」

「奥の手というのは、最後の最後に使うものです!」


 花織の視界からニューラが消えた。花織はすぐに魔力反応を探る。と、かなり遠くにその痕跡があった。


「速いわね」


 しかし花織は焦ることなく、慌てることなく、魔法の杖をニューラがいる方向へ向ける。


「グングニル」


 魔法の杖から飛び出した光の槍はあっという間に見えなくなる。


 *   *   *


「ここまで来れば追って来れまい」


 ニューラは三ツ矢女学院から30キロメートルほど離れた場所に移動していた。ディスラプターと命名したマタリナとの合流地点へ向かう。


「ん?」


 気づいた時には、それはもう目の前に迫っていた。


「がふっ……!!」


 ニューラを刺し貫いたその槍は、コア部分を吸収する。


「いぎゃああああああ!!!」


 拷問のほうがまだマシだと思える激痛がニューラを襲う。魔物に刺さったまま、生きたままコアを回収する武器は聞いたことが無かった。


「おのれええええ!! 次こそ……次こそおおおお!!」


 どこかの路地裏に、誰の耳にも届かない叫び声が響き渡った。唯一、その近くでプランCと聞いて待機していたディスラプターを除いては。


「おいおい、やられたのかよ」


 やれやれと立ち上がると、「仕方ねえな、サブプランに切り替えるか」と呟き、プランCのために用意された廃墟を出て姿をくらました――。



 To be continued→

最後まで読んで頂いてありがとうございます。

応援よろしくお願いします。


シリーズとしてはもう一話ありますが、学院の異変はこれで終わりです。技能試験を超える長さになるとは……。


今回のシリーズ、実は構想段階ではもっと暗いホラーチックなお話になる予定でした。しかし別に理由があって変更したのではなく、気づいたらこうなってた。という感じです。いつものことですね、ええ。


さて、第三章も残すところあと少し。ぜひ最後までお付き合いくださいませ。

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