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魔法少女かえで@agent 〜35歳サラリーマンが魔法少女やることになりました〜  作者: そらり@月宮悠人
第三章

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学院の異変㉗ もう一人

「フィノェラもやられたか」


 三ツ矢女学院の上空で全ての戦いをモニターしている魔法少女、ヤノウは想定通りのシナリオで進んでいることを確認した。


「これで全てのデータが揃ったな。あとはニューラ様に報告を」


 と、その瞬間、赤い光が頬を掠めた。


「――!」


 すぐにモニターを終了して戦闘態勢に入る。


「あなたが今回の司令塔ね?」


 声に振り向いて、ヤノウはビクッと体を震わせる。目の前にいたのは、今ここにいるはずのない魔法少女。魔法少女の頂点に君臨する最強の一角。


「花織……灯!?」

「あら、知ってるのね、嬉しいわ」

「し、知らないほうがどうかしてます! な、なんであなたがこんな所に!?」

「それはこちらのセリフよ。真中優さん、不可視結界まで張ってなにをしていたの?」

「ひ、秘密任務です」

「へぇー、秘密任務」

「それより、どうして分かったんですか?」

「結界のこと? それは蛇の道は蛇よ。専門家に聞けば一発で見つけてくれたわ」

「専門家?」

「さて、その秘密任務はもうお終いにしましょう」

「そういう……わけには、いかないんです!」


 真中の不自然な目の動きに気づいて振り向いた花織は、間一髪ガードする。


「あなた……確か、トリテレイア隊長の」

「うがぁぁぁ!!」


 強烈な蹴りが花織をガードごと吹き飛ばした。受け身もままならず林に激突する。


「っ……!」


 上空でその様子を見ながらヤノウはニューラに連絡する。

 

「こちらヤノウ。現況をお伝えします。アイクル、イモン、リュードクラ、フィノェラは撃破されました」

『そうですか、報告ありがとうございます』

「それと、現在洗脳済みの魔法少女が花織灯と交戦中です」

『花織灯……あの花織ですか?』

「はい。100キロメートルエリア担当の花織灯です」

『なんという僥倖でしょう! その戦闘の記録は!?』

「ご安心を。すでに記録しております」

『素晴らしい……。やはり貴女は優秀だ。司令塔を任せて良かった』

「ありがとうございます。しかし通信妨害はいかが致しましょう? 花織灯が来たということは、何者かがなんらかの手段でSOSを発信したと思われますが」

『いえ、それはないでしょう。仮に妨害を無視できる通信手段があったとしても、私のレーダーは騙せません。……ところで、貴女を見つけたのも花織ですか?』

「いえ、専門家と言ってましたが」

『……分かりました。私が見つかることはないと思いますが、念の為にサブプランを発動させておきましょう』

「承知しました」


 通信を終えたヤノウは「すみません、花織さん」と小さく呟いて、花織とキメラの戦闘記録を続けながらヤノウとしての仕事を再開する。


 一方で林に落とされた花織は、ドレスのおかげでダメージは少なかったが舞彩の追撃を受け続けていた。


「御坂さん! 聞こえる!?」

「がぅああああ!!」


 明らかに自我を失った舞彩を見て、花織は瞬時に幾つかの可能性を脳裏に浮かべる。その中から一つずつ消去法で原因を特定していく。


「いぃえあっ!!」


 ドレスの対物バリアは魔法少女の攻撃に対しても有効。100キロメートルエリア担当のそれは10キロメートルエリア担当のよりも遥かに高性能なため、花織に対して有効な攻撃は当たらない――はずだった。


「――!」


 しかし舞彩の攻撃はドレスの対物バリアを貫通した。その事実が、さらに花織の思考を加速させる。


「聞いたことがあるわ。普段は筋組織のダメージを避けるために抑えられている出力のリミッターを催眠術で外すことができるって」


 花織は、舞彩が催眠状態、またはそれに近しい状態であると結論づける。


「それなら……。ヒーリングレイ」


 かえでのレッスンでも使った魔法。心身をリラックスさせる効果があると花織は説明したが、本領は別にあった。


「あぐぁっ!?」

「落ち着いて」


 ヒーリングレイは状態異常などの悪影響を与える魔法を打ち消す。しかしパッと治るわけではなく、ゆっくり、じんわりと。雪を溶かすように消していくため、本来はベッドに寝かせて数日掛けて治療する。


「ちょっと強引だけど、我慢してね」

「ぐぁ! うぐ……うああああ!!」


 それを花織は、出力を上げて無理やり洗脳魔法を解除しようとする。

 ヒーリングレイを強く掛けると魔法少女の体であっても消耗が激しくなり、なにかしらの障害が発生する可能性もあった。それでも花織は、そのリスクを取ってでも早急に治療する必要があると判断した。


 本当ならば山田の作ったワクチン術式ですぐ治せるのだが、花織はパートナー契約を交わしたかえでのピンチに個人で突撃してきたため、ワクチン術式を知る由もなかった。


「あぅ……ぁ……」

「がんばったわね、御坂さん」


 完全とまではいかないが、舞彩の治療を終えた花織は再び上空に戻り、ヤノウこと真中優に笑顔を向ける。


「真中さん、少しお話しましょうか」

「くっ……」


 洗脳した舞彩がこうもアッサリやられてしまうとは、真中も予想外だった。


――このままでは計画が台無しにされかねない。

 かといってこのまま引き下がるわけにもいかない。これは重大なミッションなんだ。


「……そういえば、お付の人はどうしたんですか?」

「ああ、千歳(ちとせ)のこと? あの子なら今頃は本丸を攻めてる頃よ」

「本丸……って、まさか!」

「ふふ。私がこっちで油断した?」

「で、でも千歳さん一人で勝てると思ってるんですか!?」

「勝てないと思って任せたと思うの?」

「――!」


 花織の柔らかく優しい笑顔。それは千歳という魔法少女に対する全幅の信頼があるからだった。


「どうやら時間稼ぎをしたいようね」

「……」

「いいわ、付き合ってあげる」

「……へ?」

「どのみち真中さんとはお話をしたいと思ってたから、ちょうどいい」

「いや、あの、戦う流れでは……?」

「なんで? 戦いたいの?」

「いえ、その……」

「真中さんは司令塔としては優秀でも、戦闘は不向きよね?」

「なっ!?」


――なんでこの人はそんなことまで知ってるの!?

 10キロメートルエリア担当なんて、100キロメートルエリア担当からしたらハッキリ言って有象無象だ。それに担当者は100人もいて入れ替わりも頻繁にある。

 葉道歩夢や廷々紫といった有名人ならともかく、どうして私なんかの戦闘の得手不得手まで把握してるの?


「ね、少しでいいの。お話聞かせてくれる?」

「……はい」


 真中優は魔法少女として負けを認めた。


 真中はヤノウとして、あらゆる事態に備えた作戦を考えた。あらゆる可能性に対処する用意をしてきた。

 万全を期して臨んだこの計画が、たった一人の魔法少女に壊されてしまうとは夢にも思わなかった――。



 To be continued→

最後まで読んで頂いてありがとうございます。

応援よろしくお願いします。


実はこっそり「アニセカ大賞」に応募してたんですが、一次落ちでした。一次は突破して欲しかった……。ちなみに結果一覧の中に魔法少女モノは一つもありませんでした。厳しい。


残念な結果ではありますが、今後も完結目指してがんばります!

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