学院の異変⑳ リュードクラ戦
見た目は一般生徒よね。ショートカットで背は低め。胸は……Bくらいかな? ふふ。抱きついて身体検査しちゃいたい!
「……キサマ、なにを考えている?」
「え? べつにー?」
「ぺぺぴーぷぺ。キサマは真島乃愛。10キロメートルエリア担当のアタッカー。学院での成績は上の中。バストサイズは――」
「せいっ!」
先制攻撃を仕掛けたのに、手応えが無い。
「あれー? おかしいな。今の絶対当たるタイミングだったのにー」
「キサマ、人の話は最後まで聞くものだ」
「あのね、人のプライバシー暴露されて黙ってる訳ないでしょ」
「ぷぴぺーぽぽ。では、キサマの好きな人間の秘密を暴露してやろう」
「好きな人間? うーん、いっぱいいるからなー」
「ククク、そうだな……では、姫嶋かえでの秘密を」
「……かえでちゃん?」
「そうだ、姫嶋かえでの恥ずかしい秘密を――!?」
まただ。良いタイミングのはずなのに、斬撃の手応えが無い。何か仕掛けがありそうね。
「かえでちゃんの秘密を知っていいのは、あたしだけだよ」
「ななな、なんだ急に!?」
「んー? ぴぴぷぺーっての、付け忘れてるよ?」
「ひぐっ!?」
「なーんだ、ただのキャラ作りだったの?」
「そそんなこ、ことはない!」
「なに急に焦ってんの? ダサいなー」
「き、キサマこそキャラ変わってるじゃないか!?」
「だから言ったでしょー? あたしのデータがあるってことは、あたしの勝ちだよって」
「ま、まさか普段から偽装してるというのか!?」
「あのね、戦いっていうのは戦う前からの準備が大切なの。情報を制する者が戦いを制するのは古来から変わらないわ」
「わ、ワタシを嵌めたのか!!」
「嵌めたのかって、あんたが勝手に嵌まっただけでしょ? あたしはいつも通りだし」
「ぐぬぬぬ……!」
リュードクラは何も反論できないみたい。あとは斬撃が空振る仕掛けさえ分かれば……。
「はぁ、めんどくさいな」
「なんだ?」
「あんたのカラクリを暴露してやろうと思ったけど、めんどくさいし時間ないし、全部壊しちゃうね」
「なななな!?」
「どうせこの教室に仕掛けた結界に秘密があるんでしょ?」
「そそ、そんなこと教える訳ないにゃろうが!」
「焦って噛み噛みじゃん。ダサ」
「ぐぬぁぁー!!」
これ以上煽るとブチ切れて何するか分かんないし、さっさと終わらせよう。
「神楽師匠直伝!」
魔法の杖を大剣に切り替えて構える。教室だと狭いけど、ギリギリ行けるかな?
「太刀風・乱式!!」
大剣を一振りして教室に張られた結界を切り刻むと、壊れた映像みたいにノイズが走る。
「なななな!? そんな、そんなバカなことがーっ!?」
「さーて、これでもう悪さできないよねー?」
「ぐぬぬぬぬぬ……。致し方ないですな。奥の手を出すとしましょうぷぷぴーぺぽ」
「奥の手?」
「そう。この技を受けて生き残った人間は、いない!」
カメラのフラッシュのような光を浴びて思わず目をつむる。何をされたのかすぐに確認するけど、特に異常は見当たらない。
「今のが奥の手? なんにもな――」
言いかけて、リュードクラを見て絶句した。
「そうよ、これが奥の手。驚いた?」
「まあね」
まさか自分と戦うことになるなんて、流石に想定外だったな。
「でも、自分のことは自分が一番よく知ってるからね!」
太刀風で一気に決めに行く。と、案の定相手も太刀風で相殺して――
「えっ!?」
相殺できなかった!?
「あぶなっ!」
なんとかギリギリ回避できたけど、これって……。
「自分のことは、意外とよく知らないものよ」
フフフ、と不気味に笑う。あたしこんな笑い方したっけ?
「……今の、同じ技だよね」
「そうだよ、アナタと同じ技。だってあたしはアナタのコピーなんだから」
「おかしいなー、それならどうして相殺できなかったのかな?」
「フフフ、だから言ってるじゃない。自分のことは意外とよく知らないもの。今のあたしはアナタの知らないアナタを知っている。アナタができない技だってできる。こんな風に!」
リュードクラは剣に魔力を纏わせて構える。
「ちょっとそれ!?」
「太刀風・竜のアギト!」
逃げ場のない斬撃が迫る。これはあたしが研究開発中のオリジナル技だ!
この技を回避できるのは神楽師匠や月見里さんくらい。覚悟を決めて受けるか、同等以上の技で相殺するしかない!
「くっ、太刀風・竜のアギト!」
2つの竜のアギトをぶつけるなんて、やったことも想定すらした事ない。少しでも威力を弱められれば!
「きゃあ!」
やっぱりまだ研究中で本来の威力が出ない。それにリュードクラのほうが強い。押し負けてる。コピーしてるんじゃないの!?
「くフフフ、アたしの勝チみたイだナ」
なんだろ? 様子がおかしい?
「チッ、少しばかリ飛ばしスギタみたいダな」
「調子悪そうだね」
「なんでもないわ。このくらい兵器よ」
「いやいや、言葉おかしいって」
「木にするな。お姉妹にしてやる」
「調子狂うなぁ」
でも明らかな変調だ。リュードクラに予期しないエラーが起きてる。たぶん、竜のアギトを使ったせいね。
……ということは、もしかしたら。
「でもよかった。もしまた竜のアギト撃たれたら耐えられなかったもの」
「なに? フフフ。まさかもう撃てないと重ってるの?」
「えっ、ウソ! だってあんな大技もう一回なんて、あたしでも撃てないよ!?」
「フハハハ! なんという愚か! アナタにできないコトワあたしにできる! 太刀風・竜のアギト!!」
「ふふ、リュードクラなら乗ってくれると思ったわ」
「なに!?」
「太刀風・竜のアギト、2連!!」
咄嗟の思いつき。でもだからこそ意表をつけるし競り勝てる!
「そんな、バカな!?」
「本当は2連なんてやる必要はなかったと思うけど、念には念を入れるってことで」
「お、オマエウソついたな!?」
「リュードクラだってウソついたでしょ?」
「な、なんのことか……」
「さっき、奥の手はあたしをコピーしたって言ってたけど、実際は3割増くらいでしょ」
「ギクッ」
「1.3倍もあれば相殺なんてできるはずないよね」
「お、オマエだってか弱いフリをして2倍撃したじゃないか!」
「当たり前でしょ。ブラフっていうのは少し大げさなくらいがちょうどいいのよ。それに、恋愛と戦争は手段を選ばないものよ」
こっちは片付いたけど、かえでちゃんや他の子は大丈夫かな? 通信はまだ通らないし。
すぐ行くから、待っててね。
To be continued→
最後まで読んで頂いてありがとうございます。
応援よろしくお願いします。
各戦闘は数話使う予定だったんですが、リュードクラは気付いたら終わってました。
さて、なにげに初登場の太刀風。これは神楽・ソランデルという例の金髪美少女の十八番です。神楽本人はイチから編み出したためモノにするのに時間掛かりましたが、乃愛はセンスが良かったのか、ほんの数週間で使えるようになりました。今後も使いたいです。




