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魔法少女かえで@agent 〜35歳サラリーマンが魔法少女やることになりました〜  作者: そらり@月宮悠人
第三章

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学院の異変⑲ 勝ち筋

 溢れた魔力の渦が収まると、そこには装いが変わったイモンがいた。


「ローレスじゃない……?」


 魔力は先ほどの倍以上になっているけど、ローレスの気配は無い。どうなってるの?


「これ、あまり持たないから。すぐ終わらせるね」

「――!?」


 電気を全身に纏ったイモンの一撃を、避雷針を吸着した魔法剣で受ける。しかし単純な攻撃力の高さに後方へ飛ばされてしまった。


「くっ……」


 魔物じゃない、ローレスじゃない、魔法少女でもない。この子に何が起きてるの? ニューラはこの子に何をしたの!?

 避雷針用の球を解除して剣を構え、(ガード)にある追加詠唱用のボタンを押す。


「輝け白刃! 見据える先に火を灯せ!」

《詠唱成功。入力魔法が上書きされます》


 アナウンスが流れて剣身(ブレイド)が白く光る。追撃するイモンの攻撃を横に躱してから身体を反時計回りに捻って横に薙ぎ払う。


「チッ!」


 小さく舌打ちしたイモンはギリギリのところで後ろに跳んで躱した。


「なによ、爆発するだけじゃないの?」

「爆発するだけなんて、言ったかしら?」

「……そうだね、キミは嘘つきだった!」


 厄介ね……。さっきまで直情的で猪突猛進な子だったから簡単にあしらえたのに、妙なモードチェンジした途端に冷静な、クレバーな感じがある。

 

 魔法剣に上書きした魔法は強烈なショックを与えて強制的に魔法をキャンセルさせるもの。当たりさえすれば終わりなのに、勘の良い子がさらに鋭くなったようで直感的に当たってはいけないと感じてるみたいだ。上手く距離を取られる。


「でも、私はこのまま膠着状態でいいのよ」

「どういうこと?」

「その状態、長続きしないんでしょ?」

「……」


 そう。当たれば終わるし、このまま時間切れになったら捕らえればいい。こうなる事を狙ってた訳じゃないけど、結果的にはイモンの奥の手が自らの首を絞める形になった。


「そうだね、ならこういうのはどう?」

「え?」


 イモンが消えた? いや、違う。移動したんだ!


「遅いよ」


 真後ろからの攻撃をモロに受けて校舎の壁に激突してしまった。


「うぐっ……」


 口に鉄の匂いが広がる。地面にボタボタと血が垂れる。魔法少女モードでこれだけのダメージを負うのは久しぶりだ。


「急にスピードが上がったね、本気出したってこと?」

「本気とはちょっと違うかな。あたしの雷魔法をスピードに全振りしてるだけだよ」

「なるほどね」


 魔法には属性ごとに特性がある。火属性は攻撃力を上げやすい代わりに防御面はコスパが悪い。風属性は防御に強くて攻撃が苦手。

 その中でも雷属性は特殊で、攻撃とスピードを上げやすい反面、防御には弱いし持続性も低い。


 イモンはその特性をスピードに全振りし、私の攻撃を受けることなく一方的な攻撃で終わらせる超短期決戦型を選んだ。

 しかし、ただでさえ長続きしない戦闘モードに加えての超短期決戦型。耐えれば私の勝ちになる。


「でも、壁際に吹っ飛ばしたのはマズかったんじゃない? 壁を背にすれば背後からの不意打ちはできない」

「そうだね。でもキミが追い詰められてるのには変わりないよ」


 この強気、自信はどこから来るの? どう考えても有利なのは私なのに。

 ……いや、違う。そうじゃない。イモンの眼は自信があるんじゃない、覚悟を決めた眼だ。


「イモン。なにがあなたを追い詰めてるの?」

「……」

「ニューラに弱みでも握られてるの?」

「キミなんかに分からないよ!!」


 怒りでさらに魔力が膨張する。初めて感情を露わにしたけど、でもこれはイモンというより、松本このみの感情に思える。

 

「お願い、キミはここで倒れて!」

「ぐっ!」


 攻撃が飛んできた? イモンは動いてない。ここに来て無属性の遠距離攻撃か。ガードはできる……けど、一発一発が重い。ガードだけじゃ削り切られる。


「飛輪より来たれ紅蓮。赫々たる宝剣を」

「させない!」

「きゃあ!」


 詠唱魔法(インカンテーション)最大の弱点はこれだ。詠唱途中に妨害されると魔法を発動できない。遅延魔法(ディレイ)も無いし、これはちょっとヤバいかも……。


「これで終わり!」


 イモンの攻撃が来る。その瞬間、一つの勝ち筋が見えた。


「うあっ!」


 攻撃しようとして、イモンはうめき声を上げる。さっき魔法を追加入力するさいに捨てた避雷針の球が狙い通り背中に直撃したんだ。

 魔法剣が発動できる魔法は一つしかないけど、魔法の誘導機能はこの剣の固有スキルだ。


「この……!」


 さっきと同じようか不意打ちを受けたイモンは体勢を崩す。ほんの一瞬の隙だけど、それだけあれば十分だ。


「ごめんね、私の勝ちだよ」

「ちくしょう……!」


 魔法を発動させるとイモンは力を失い気絶した。


「松本さん……」


 あれほど覚悟のある眼をした子は魔法少女以外で、特に三ツ矢女学院の生徒では見たことがない。ニューラはこの子に何を吹き込んだというの?

 それに、他の子も同じような覚悟で戦わされているのだとしたら……。

 

「かえで様……」


 今すぐにでも馳せ参じてお手伝いしたい。しかし、今は松本を保健室へ運ばないといけない。


「待ってて下さい、かえで様。すぐに向かいますから!」



 To be continued→

最後まで読んで頂いてありがとうございます。

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