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魔法少女かえで@agent 〜35歳サラリーマンが魔法少女やることになりました〜  作者: そらり@月宮悠人
第三章

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学院の異変⑧ 馴染む

 以前、ぷに助から聞いたことがあった。


「魔物の中には変身する種族もある」

「魔法少女みたいに?」

「アホめ、そんなメルヘンな変身をする魔物がどこにおる」

「魔法少女はメルヘンなんだな」

「それ以外にないだろう」

「それで? 変身って具体的にどうなんだよ?」

「見た目が変わるものと、変わらないものとがある。中でも見た目が変わらない魔物は要注意だ」

「変わるほうが強そうだけどな」

「変わるのは多くが威嚇、特殊な能力のためだ。変わらない魔物はそれだけ純粋に力が増す」

「どのくらい?」

「そうだな、魔物によって振れ幅が大きいから一概には言えんが、数倍から数百倍だ」

「いや振れ幅ありすぎだろ」

「だから言ったろう」

「ていうか数百倍ってなに。バグってるだろ」

「そういうのはランクAの中でも限られた上位種だけだ。とにかく、そういう魔物に出会ったら逃げろ。お前にはどうしようもない」

「分かってるよ」


 *   *   *


 アクセサリーを噛み砕いたマタリナは、さらに数段力が増した。これはもうランクAを超越してる。明らかにA+だ。

 確かに歩夢は50キロメートルエリア相当の実力はある。しかし実際にランクA+と戦ったことは少ないはずだ。


「歩夢……」


 後ろから応援するしかない自分が歯痒くて情けなくなる。でも魔力制御がまだ合格点に達してない今は、下手に参加すれば足を引っ張るだけだ。だから今は声援しか――


「大丈夫だよ、かえで」


 俺の心配を察したように、ニッと笑ってサムズアップで応える。

 なら、俺たちのやるべき事は一つだ。


「がんばれ、歩夢!」

「がんばってください! 葉道さん!」


 声援を受けてか、歩夢の背中が大きく見える。


「行くよ!」

「来いや!」


 お互いのストレートパンチがぶつかる。魔力が籠もってるせいか、それだけで衝撃波が周りの建物へと広がる。


「おらぁ!」

「せいっ!」


 不思議と、2回目の解放をしたマタリナと渡り合ってるように見える。明らかにさっきと段違いの力があるのに、歩夢は一歩も引かない。


「どういうことだ?」

「葉道さん、こんなに強かったんですか」


 いや、わりと近くで見てるけど歩夢は50キロメートルエリア担当にまだギリギリ届かないような、そんなレベルだったはず。短期間でどうやって……。


「2回目の解放は大したことないんじゃない!?」

「てめぇ……これで終わったと思ってるんじゃねえだろうな!」


 マタリナは蹴りから繋ぐ連撃で攻める。しかし歩夢はそれを全て捌いて見せた。


「チッ」

「なーに? びっくりした? なら、これはどう!?」


 歩夢は一気に踏み込んで鳩尾にストレートを打ち込む。


「ごはっ!!」


 そしてそのまま上へと持ち上げてから自身もジャンプして、地面に向けて叩き落とした。


「がはっ!」


 息もつかせぬ攻防と展開に、俺は目で追うのがやっとだった。


「すごいですね!」

「う、うん」


 歩夢ってこんなに強かったんだ。よく考えてみれば歩夢の戦闘をまともに見たことなかったな。


「ハァ、ハァ」

「ほらほらどうしたの? 息上がってるよ」

「てめぇ、なんの魔法使ってやがる」

「アタシはコンバットスタイルだからねー、魔法って言ってもフィジカル強化しかしてないよ」

「ふざけんな! フィジカル強化だけでここまでやれるわけねえだろ! さっきビルに激突してたじゃねえか!」

「あれは痛かったなー」

「惚けんな!」

「なら、もう一つ解放してみなよ」


 歩夢はマタリナのアクセサリーを指差して挑発する。

 

「なんだと?」

「できないの?」

「あん?」

「あんたさ、さっきから解放するのを恐れてるように見えるんだよね。ひょっとして力を制御できないんじゃない?」

「なんだと?」

「だから慎重に解放してる。アタシをビビらせるフリをして」

「……ククク、ハハハハハハ!!」

「……」

「そうか、そう見えてたか! 悪かったなぁ。そんなつもりはなかったんだが……分かったよ。お前には教えてやる」


 マタリナは最後のアクセサリーを引き千切ると、口に咥える。


「絶望ってやつをな」


 噛み砕くと、結界の景色が変わった。そういう演出なのかと思ったが、マタリナの魔力が変質していくのを感じる。その影響か?


「かえで様、これは……」


 水鳥が怯えてる。無理もない、俺だって怖い。


「大丈夫。歩夢ならやってくれる」

「はい」


 あの、どさくさに紛れて抱きつくのはやめて……。

 とまあ、そんなことも言ってられないか。


「へぇ、それがあんたの真の姿ってやつ?」

「ああ。つっても大して変わっちゃいねえけどな。()()()()よ」


 マタリナの攻撃を流そうとして、歩夢は腕を掴まれる。


「遅えよ」


 明らかに腕が折れた。――ように見えた。


「遅いって、アタシが?」

「なっ!?」


 いつの間にかマタリナの背後にいた歩夢は蹴り飛ばした。


「ぐあっ!」

「なんだ、最後の変身も大したことないじゃん」

「てめぇ、どうなってやがる!」

「そうだなー、あんたの裏にいるボスを教えてくれたら、秘密を話してあげてもいいよ?」

「なんだと?」

「あんたじゃないでしょ? この結界を張ったのは」


 え? そうなの?


「知らねえな」

「それにあんたって義理堅いよねー、そいつの言う事ちゃんと守ってるし」

「なんの話だ?」

「ニューラって言うんでしょ? あんたのボス」

「……知らねえな」

「謎に包まれててね、どんな魔物かサッパリ分からないんだよ。だから、取引しようってこと」

「お前の強さの秘密と交換ってことか?」

「そういうこと」


 ニューラって名前は北見校長への報告会で話したことだ。もう魔法(M)少女(G)協会(A)にも伝わってたんだな。


「悪くない取引でしょ?」

「そうだな。少し前だったら乗ってたかも知れねぇ、な!」


 マタリナは腰から何かを取り出して投げた。


「最後の悪あがき?」


 歩夢はそれを簡単に避けた。が――


「歩夢! 後ろ!」

「え?」


 その投擲物はまるで吸い寄せられるように歩夢へと向かって戻ってくる。


「くっ!」


 再び避ける。しかしやはり追ってくる。


「こういうの、あんま使いたくなかったんだがな。()()()まで時間稼ぎさせてもらうぜ」

「馴染む?」

「さっき、お前が言ってたことには大きな間違いがある。俺はこの力を恐れてないし、制御もできる。だが、どうにも解放後は馴染まなくてな。解放直後はせいぜい30%が限界なんだ」

「歩夢! 今のうちにマタリナを倒さないと!」

「分かってる! でもこれが鬱陶しくて!」

「それなら任せて。――ピュアラファイ!」


 投擲物を落とすくらいなら、俺にだってできる。クイックドロウで全てを撃ち落とした。


「すごい! ありがとね、かえで!」


 歩夢はマタリナへ突っ込むと顔に思いっきりパンチを入れる。――が、


「ハハッ、なんだそりゃ? 蚊が止まったかと思ったぜ」

「くっ!」

「ほら、耐えろよ?」


 マタリナが歩夢を殴る。と、先ほど激突したビルにぶつかり、衝撃でビルが倒壊した。


「あーあ、ありゃ死んだな」


 ……いや、まだ生きてる。ちゃんと反応がある。

 それにしても、こいつは……。


「マタリナ、お前はずっと演技してたのか?」

「あ?」

「力を解放してもそんなに強くない。そう思わせるために、体に馴染ませるために」

「おお、そうよ、それそれ。ニューラ……はもう名前出していいんだよな? あいつの知恵でな。なかなかの名演技だったろ?」

「なんでそんなに強いのに、ニューラって奴の言いなりなんだ?」

「あん? なんかお前ら勘違いしてんな。別に言いなりになんてなっちゃいねえさ」


 くそ、漫画でよくあるような展開は無理か。


「そうだな、あいつの言葉を借りるんなら、ビジネスパートナーってやつだ」

「ビジネスパートナー? お前ら魔物がビジネスするって?」

「知らねえよ。俺にはビジネスなんざサッパリだ。ニューラはいつもそう言ってんだよ」


 ビジネスパートナー……。ニューラはビジネスの概念を持った魔物ってことか?

 だがそう考えると、今までの魔物らしからぬ戦術的意図ある動きは理解できる。ニューラが司令塔となっていたのか。


「ニューラはなにをしようとしてるんだ?」

「さあ? あいつの考えてることは分かんねえな。俺はただ手伝ってるだけだ」

「なんのために?」

「あ? そうだな、知りたければ俺を倒してみな」


 ハハハ! と笑うマタリナを、いつの間にか近づいた歩夢が蹴り飛ばす。


「倒してみろ? やってやろうじゃん!!」



 To be continued→

最後まで読んで頂いてありがとうございます。

応援よろしくお願いします。



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