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魔法少女かえで@agent 〜35歳サラリーマンが魔法少女やることになりました〜  作者: そらり@月宮悠人
第三章

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学院の異変⑥ 時間稼ぎ

「おやおや」


 結界に獲物が掛かった感覚を得たニューラはほくそ笑む。


「どうやらビンゴ。というやつですねぇ」


 姫嶋かえでが三ツ矢女学院の結界から飛び出たのを確認したニューラは、洗脳魔法の分析結果を聞きに行くと読んで本部周辺に張っておいた結界にマタリナを向かわせていた。


「姫嶋かえでと……もう一人、学院の魔法少女ですか」


 水鳥については特に興味なさそうに、しかし油断はすまいと観察する。


「ふむ。典型的なマジカルタイプの魔法少女ですね。今のは不意を突かれたようですが、問題ないでしょう」


 それよりも、と結界の方を見る。


「思ったよりも善戦している。いや、粘っていると言ったほうがいいでしょうか?」


 芦森有紀寧の参戦でランクA+もそこまで苦戦してはいないようだった。そもそも結界のによって攻撃そのものは飛んで来ないのだ。体力と魔力の消耗戦である。


「結界はやはりまだ健在ですか。さすがは(いにしえ)の術師が作り上げた芸術品ですねー。こんな素晴らしい作品を攻略できるのは、世界広しと言えども(わたくし)くらいのものでしょう」


 酔いしれたように大仰に言うと、さらに魔物を手配する。


「さあ、早く駆けつけないと大変なことになりますよ? 姫嶋かえでさん」


 *   *   *


 一般人には見えなかったが、男を魔法でぶっ飛ばしたのを見て内心ヒヤヒヤしていた。


「あれ、人間じゃないよな……」

『生体反応はあります。人間と断定することはできませんが』

「メイプル?」

『異常事態を検知しましたので、緊急起動しました』

「助かるよ。ただ、水鳥もいるから、魔法通信で頼む」

〈了解〉


 さて、どう出る?

 注意深く見ていると、ぶっ飛ばされた男は何事も無かったように立ち上がる。


「……ったく、人の話は最後まで聞くもんだ」

「魔法で攻撃されてピンピンしてるのを、人とは呼ばないのよ」

「ハハッ、いいじゃねえか。そういう殺意籠もった眼は好きだぜ、嬢ちゃん」

「私は水鳥。三ツ矢女学院の防衛隊、トリテレイアの一人。風間水鳥よ!」

「へぇー、見事な名乗りじゃないか。俺はマタリナってんだ。よろしくな」


 マタリナ……。どこかで聞いたような。


「そんじゃまあ、行くぜ?」


 地を蹴ると、一瞬で水鳥に迫る。

 水鳥が一気に前に出たから任せる形になったけど、詠唱魔法(インカンテーション)とは相性悪いんじゃないか?


「シッ!!」


 繰り出される蹴りを、水鳥は軽くジャンプして躱すとクルッと一回転しながら魔法の杖をマタリナに向ける。


「――エグゼキューション。バルバレットラッタ!」


 解放の呪文を唱えると、魔法の杖から無数の弾丸がマタリナを襲う。

 いつの間に詠唱してたんだ?


「チッ!」


 咄嗟にガードしたようだ。それにしたってあの至近距離で受けたのに、ダメージなしかよ。


「なかなか味な真似してくれるじゃねえか。遅延魔法(ディレイ)かよ」

「あら、意外と博識なんですね」

「ああ。こう見えて読書家なんだ」

「では、そんな聡明なあなたなら分かるでしょう。こんな足止めなんて意味がないと」

「ほう? 俺が足止めだと?」

「そうでなければ、私たちがここに来るのを予想して結界を張る必要ないでしょう。あなたは学院の結界から出てきた私たちを見てここに来た。結界を壊すには時間が掛かる。だから私たちをここへ閉じ込めた。違いますか?」

「おー、すげーすげー。よくそんな考えられんな」


 わざとらしく拍手するマタリナ。しかし水鳥は表情を変えずにじっと観察する。


「そうなんだよ。結界をぶち壊すにゃまだ時間が必要だ。都合良く出てきてくれたお前らを隔離できれば、いい時間稼ぎになるだろ?」

「なにが目的ですか?」

「あん?」

「学院の結界を壊して、いったいなにをするつもりですか!」

「ハハッ、なにをする。ねぇ……。んなもん決まってんだろ」


 マタリナは再び地を蹴る。同じように蹴りを繰り出す――ように見せた動きは、急に変わった。


「くっ!」


 人間ではあり得ない動きに、水鳥の反応が一瞬遅れる。クリーンヒットではないが、確実にダメージが入ったみたいだ。


「魔法少女を狩りまくるんだよ! 魔物(オレら)はそういう存在(もの)だからな。本能ってやつだ」

「魔物は器を食べる必要はない。魔力さえあれば生きて行けるんでしょう、なぜ器を食べるんですか」

「あ? じゃあお前らは、そんな小難しいこと考えて飯食ってんのか? 知ってるぞ、美味いもの食うために動物を飼育して殺して食ってるんだろ? 魔物――少なくとも俺に言わせりゃ同じことだろ」

「同じ……?」

「お前ら魔法少女は魔物(オレら)のエサだってことだよ。魔法少女っていうブランドのタグを付けられた」


 魔法少女というブランドのタグ。その表現には聞き覚えがある。


『お前達は我々の食料としてこの世界に放たれているんだよ。上物の、極上の食料として()()()()()()()()()()()()()()()な』


 俺が魔法少女になりたての頃、イクサという魔物に言われたことを、ほぼそのままマタリナも?

 どういうことだ? あの時はただの脅し文句だと思ってスルーしたが、マタリナの場合は脅しのようには思えない。「そうだろ?」と、ただ事実を言ってるだけだ。というニュアンス。


「なにを言うのかと思えば、そんな妄言、誰が信じるというの」

「別に信じろとは言わねえぜ? 俺だって人間(おまえら)のノウギョーとかいうの理解できねえし」

「農業のこと?」

「そうだそれそれ。わざわざ草植えて育てるんだろ? まったく信じらんねえわ」

「……確かに、分かり合えそうにはありませんね」

「ハハッ、安心しろ。元から分かり合うつもりはねえよ。それに俺は器を食うだけじゃねえ。強え奴と戦いてえんだ」


 マズいな。このままだと水鳥が不利だ。


「アナライズ」


 ……やっぱり。こいつもエラーか! どうなってんだ。

 だが、どう見てもこいつは……。


〈メイプル。こいつの推定ランクは?〉

〈ランクAと推定されます〉


 やっぱりな。これじゃピュアラファイしかない俺が参戦したって勝ち目は薄い。仮に花織さんを呼べても相性悪いだろうし、近接戦闘って言ったら……。


「いるじゃないか、最強が!」


 早速連絡しようと思ったら、通信が通らない。


「あれ?」

〈マスター、どうやらこの結界は通信系を遮断するようです〉

「マジかよ!?」


 どうすればいいんだ……!

 と、頭を抱えていると「きゃああ!」と水鳥の悲鳴が聞こえる。


「水鳥!」

「だ、……大丈夫です」


 いやいや、どう見ても大丈夫には見えないぞ。

 だからって俺が参戦しても勝てるとは思えない……。それに、アタッカーとして再現できる武器は限られてる。


「ハッ、もう限界か? 俺は弱者をいたぶる趣味はねえんだが」

「だ、誰が弱者ですか……!」

「そうそう、その調子だ。そのまま気ぃ緩めんなよ?」


 さっきの蹴りが効いてるらしい。最初に見せた軽い動きは見る影もない。どうする? ピュアラファイで援護するか? いや、そもそもピュアラファイは効くのか?


「悪いな嬢ちゃん、ここらで終いだ」

「ぐっ……!」


 マタリナがトドメを刺そうとした瞬間、突然カウンターを喰らう。


「チッ! なんだてめえ?」


 そこには赤髪の少女が立っていた。

 

「大丈夫? アタシが来たから、もう安心だよ!」



 To be continued→

最後まで読んで頂いてありがとうございます。

応援よろしくお願いします。


安心と信頼の赤髪の少女。次回、バトルスタート!

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