花織の魔法レッスン⑤
「両氏共、お久しぶりですねぇ」
「お久しぶりです」
「相変わらず散らかってるわね」
「私なりに整理してあるんですよぉ。どれどれ……。なるほどぉ、先端の飾りがぶっ壊れたんですねぇ?」
「はい……。ピュアラファイ撃とうとした瞬間に」
「ふむ。詳しく調べないと断言はできませんがぁ、おそらく姫嶋氏のデタラメな出力を繰り返し受けてダメージが蓄積したところに止めの一撃を喰らった。といったところでしょうかねぇ」
「うっ……」
心当たりあり過ぎて困る……。
「まあ、でもこれなら直せますよぉ」
「え? 本当ですか?」
「星の飾り、出力安定器というまんまの名前ですがねぇ? ここは簡単に交換できるんですよぉ」
「良かった! じゃあお願いね」
「その前に、花織氏ぃ」
「なに?」
「姫嶋氏とパートナー契約結びましたねぇ?」
「え? 分かるんですか?」
「パートナー契約を結ぶとぉ、下僕側は左目元に小さく星マークが刻まれるんですよぉ」
「下僕って……」
言われて鏡で確認すると、確かによーく見ると黒い星マークがあった。
「へー、そうなの。知らなかったわ」
「ちゃんと説明しましたかぁ? パートナー契約のデメリットに、ついて」
「……」
「デメリット?」
「パートナー契約は大変便利なものです。相互通信、召喚魔法、情報共有、それに一部特権の共有」
「特権て共有できるんですか!?」
「通常は無理ですよぉ。パートナー契約限定です。ただしぃ、魔法の杖の容量追加など一部を除いてですがねぇ?」
「そうなんですか。それで、デメリットというのは?」
「……言ってもいいんですかぁ?」
「好きにすれば。どうせ調べれば分かることだし」
なんか、山田さんに対してはつっけんどんだな……。
「デメリットその1、契約は1年間解除できない」
「それはまあ、構いませんけど」
「デメリットその2、パートナーからの要請は断れない」
「要請って?」
「召喚魔法や任務を命じられたりなどですよぉ。つまりぃ、姫嶋氏が嫌だと思っても召喚されれば応じなければならず、任務命令を受ければ断ることはできないんですよぉ」
「え? な、なんでですか?」
それは困るぞ。もし本業中や授業中に呼び出されでもしたら……。
「パートナー契約は拘束力が最も強い魔法契約によって成されるんですよぉ。なので、被契約者に拒否権はありません」
「そんな! それじゃまるで――」
「そう。パートナー契約は別名、下僕契約と呼ばれています」
「下僕……」
「なのでぇ、よっぽど親密な関係や、お互いに理解ある者同士でなければ結びません」
「もう、不安になるようなことばかり言って!」
「花織さん」
「安心して、かえで。私は強制召喚も任務強要もしないから」
「ホントですか!?」
「当たり前じゃない」
良かった! 今後1年間は楓人に戻れないんじゃないかとヒヤヒヤした。
「――だって私はかえでを愛してるから」
「……へ!?」
「ちょっと一千花! 勝手に人の声作らないでよ!」
「フフフフフぅ、やはりからかいがいありますねぇ花織氏はぁ」
「えーと……」
「気にしないで、かえで。一千花は人をからかうのが好きなだけだから」
「失礼ですねぇ、私がからかうのは花織氏だけですよぉ」
「なお質悪いわよ!!」
「えーと……お二人はご友人なんですか?」
「ご友人。フフフフフ」
「単なる腐れ縁よ」
へー、これは意外な繋がりだな。
「そもそもパートナー契約は強力な魔物に対抗するための手段として考案されたものなの。だからすぐに呼び出せるよう強制力ある魔法契約になってるのよ」
「そうなんですか」
「それに、誤って強制召喚しないように、ちゃんと強制力のオンオフもできるし。1年間契約も私の方でなら解除できるわ」
「え? じゃあ全然下僕じゃなくないですか?」
「だから、それは一千花が私を困らせるために盛っただけよ。実際、パートナー契約のことを下僕契約なんて呼んでるの一千花だけなんだから」
「なんだ、そうだったんですか」
「フフフフフぅ、純真な姫嶋氏のおかげで久しぶりに楽しめましたよぉ」
純真ではないと思うが……。特に“俺”は。
「ほら、直せるなら早くやってよ」
「いいですよぉ、ちょっと待って下さいねぇ」
企業秘密(?)なので、と別室に移動するが、ものの10分ほどで戻って来た。
「直りましたよぉ」
「おー! すごい!」
爆発四散した星がちゃんと戻ってる!
「ありがとうございます!」
「ついでに耐久性上げといたのでぇ、姫嶋氏の全力にもしっかり耐えれるはずですよぉ」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
「一千花にしては珍しいサービスね」
「フフフフフぅ、姫嶋氏は大変貴重な魔法少女ですからねぇ」
「なんか読み方おかしくないですか?」
「ふーん、なるほどね」
納得しちゃうんだ……。
「ありがとね、これでレッスン再開できるわ」
「どういたしましてぇ」
「そうだ、山田さん」
「なんですかぁ?」
「あの、例の協力者は……?」
小声で訊くと、「まだ分かりませんねぇ。分かり次第連絡しましょうかぁ?」と、山田さんもまた小声で返してくれた。
「はい、そうしていただけると助かります」
「分かりましたぁ」
「どうしたの? 一千花と内緒話?」
「あ、いえなんでも!」
「ふーん? ほら、行きましょう」
「はい!」
ライブ会場で宮根を利用し、けしかけた協力者。それが当時警備に来てた魔法少女の中にいる。
山田さんはその協力者を探してくれているが……。いったい誰なんだ?
To be continued→
最後まで読んで頂いてありがとうございます。
応援よろしくお願いします。
山田一千花と花織灯の意外な関係。
いつか短編かSSで書いてみたい。




