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魔法少女かえで@agent 〜35歳サラリーマンが魔法少女やることになりました〜  作者: そらり@月宮悠人
第三章

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楓人の心情

「だめだー!」


 三ツ矢女学院の寄宿舎『しらゆり』の自室で叫ぶ。

 日中は全員授業があるため誰もいないし、魔法少女のステルスモードなら寮母さんにもバレないから歌詞を考えるには理想的な環境……なんだけどな。


「ああー、どうすればいいんだよ」


 言い出しっぺだから仕方ないとはいえ、初めてな上にとにかく時間がない。


「ヒロインの心情かぁ」


 そんなの分かるわけないんだよな。生まれてくる性別間違えたんじゃないか? と思うことはあっても、35年も男やってるんだぞ? 女性と触れ合うこともほとんど無かったのに、ヒロインの心情を書けなんて無茶過ぎるだろ。


 おさらいすると、死ぬと最高級のアイテムや武器やらに変身(作中では生まれ変わり)できる主人公がいて、ヒロインはその主人公が自分のことを好きだと感づいている。そのヒロインが自分のために死にまくる主人公を見てどう思っているのか、感じているのか。


「どう考えても暗い感じだよな。明るくハッピー曲になるわけはない」


 となると、歌詞も自然と暗くなるはず。


「えーと、『君が死ぬたびに私も死にたくなる』……いやいや駄目だろ! いくら暗いイメージだからって人気作品のアニメのエンディングだぞ!?」


 駄目だ、このままやってても埒が明かない。


「よし、仕事しよう!」


 気分転換に仕事するなんて、半年前じゃ考えられないな。

 魔法の杖を使って人形に接続する。と、すぐに応答してくれた。


『おはようございます』

「おはよう。これから出社か」

『はい。なにかありましたか?』

「ちょっとリモートワークしようと思ってね」

『それでしたら、ちょうど良かったです』

「なにかトラブルでも?」

『はい。いえ、トラブルと言えるか分かりませんが、新島さんが体調不良の様子で休みが多くなっています』

「――!」


 体調不良って、まさか!?


「新島に異変はなかったか!?」

『そうですね……。吐き気や頭痛といった症状があるようでした。本人は風邪かも知れないと言ってましたが』

「吐き気や頭痛……」


 普通に考えれば風邪だろうが……。


「ハロー、メイプル」

『はい、マスター』

「……ローレス化が進んだら、人間の体にどんな症状が出る?」

『個人差はありますが、頭痛や吐き気、苛つき、不安、眠気などもあります』

「特徴的な症状はある?」

『体調の変化には大きな特徴はありませんが、身体にある特徴が現れます』

「ある特徴?」

『身体のどこかに(あざ)が発現します』

「痣?」

『スティグマと呼ばれるローレス堕ちの刻印です。これが発現すると本格的にローレス化が進行し、遅くとも一ヶ月でローレスと成ります。完全体になると痣もハッキリと大きくなります』

「分かった。――そういうわけだ、見える範囲で構わないから痣が見えないか確認してくれないか?」

『了解しました。今日は新島さんも出社する予定なので確認してみます』

「よろしく頼む」


 通信を終えてベッドに仰向けに倒れる。


「……新島」


 前から覚悟はしていた。していたはずだ。

 なのに、その時が近づくにつれて臆病になる。新島が死ぬと分かっていても何もできない苦しさ。どうにかして守ってやりたいのに、俺にはその力が……。


「あれ? これって……」


 まるで今考えてるヒロインの心情じゃないか? 状況は異なるけど気持ちは、思いはかなり近しい気がする。これを女性っぽく変換できれば……。

 再び机に向かう。さっきまで五里霧中でどこを向けばいいのかも分からなかったのが、少しずつ霧が晴れて歩けるようになった気がする。


「これなら、いけるかも!」


 驚くほど素直な心情が書ける。まるで乙女になったような気分だ。


 ゴーン……ゴーン……。


「あれ? もうそんな時間か」


 三ツ矢女学院には大きな時計塔があり、昼になるとそこの鐘が鳴る。


「うーん……! さっきまで悩んでたのが嘘のように書けたな。よし、あとはタイトルだ」


 この歌詞に相応しいタイトルか。悲しい感じか暗い感じか……。


「そうだ、煌梨に相談してみよう」


 昼時だからか電話するとすぐに出てくれた。


『どうしたの?』

「歌詞が書けたんだけど」

『もう? 早いわね!』

「それで、タイトルが浮かばなくて」

『どんな歌詞? 見せてもらえる』

「あ! ちょっと待ってね」


 慌ててスマホで撮影し、文字を抽出してコピーしてLINEに送る。

 こんな下手くそな字は見せれない。それにどうみても女の子の文字じゃないし。


『……すごい。ちゃんと書けてる』

「本当?」

『かえでは作詞の才能もあるのかも』

「いやいや、たまたま思いついただけだから」

『たまたま思いつくような歌詞じゃないわよ。いいわ、タイトルは私も考えておく』

「ありがとう!」

『今夜スタジオに来れる?』

「うん、大丈夫だと思う」

『それじゃ、スタジオに集合ね』


 電話を切ると、魔法通信で人形から連絡が来た。


「どうだった!?」

『それらしきものは確認できましたが、よく分からないので視覚映像の記録を送ります』

「そっか、ありがとう」


 人形から送られてきた短い動画を見ると、どうやら佐々木と雑談してるようだ。物を落としてしまい、屈んだその時――。


「あっ!?」


 新島の首すじ辺りに、ホクロほどの大きさで薄ら黒いものが見えた。


「まさか、これって……」


 スティグマ。ローレスに堕ちた証。

 そんな……まさか本当に? いや、まだスティグマと決まったわけじゃ――


「スティグマだな」

「ぷに助!」

「スレイプニルだ。どうやら進展があったようだな」

「ま、まだ決まったわけじゃないだろ? 本当はホクロかも知れないじゃないか」

「一つ教えておこう。人形には魔力の記録も残る。そして、ただのホクロに魔力はない」


 人形の記録映像に魔力フィルターを掛けると、そのホクロのような痣に魔力反応が認められた――。



 To be continued→

最後まで読んで頂いてありがとうございます。

応援よろしくお願いします。


どんどん進行していくローレス化

新島がローレスになる時はそう遠くないのか――。

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