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魔法少女かえで@agent 〜35歳サラリーマンが魔法少女やることになりました〜  作者: そらり@月宮悠人
第三章

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大きなチャンス

 ――翌日。

 煌梨から緊急招集との連絡があり、夜いつものスタジオに集合した。


「来たわね、主役が」

「え?」

「なーに? かえでちゃんが主役なの?」

「今度はなにやらかしたのー?」


 まったく身に覚えはないが、麗美に言われると不安になる。


「わ、私またなにか粗相を……?」

「違うわよ。……んー? でもあながち麗美の言うことも合ってるかも」

「なになに? なにやらかしたの!?」

「大した事じゃないわよ。例のアニメのエンディングを私たちが担当することになったってだけ」

「なーんだ、そんなこ――えええええ!!?」


 珍しく麗美が驚く。――だけじゃない、他のメンバーも寝耳に水のようだ。


「ちょっときらちゃん! どういうこと!?」

「実はね、昨夜かえでから電話があったの」


 あ! そうだ! 俺が言い出したんだ!


『あのさ、この子の気持ちも歌にできないかな?』

『歌に?』

『そう。作中では埋もれてるヒロインの気持ちを歌詞に表せないかと思って』


 言ったわ。やらかしたわ。


「この作品は主人公目線で進むし、もちろん主題歌も主人公目線。そこでヒロイン目線のエンディングは作れないかってね」

「ヒロイン目線?」


 不思議そうな麗美の質問を、「詳しくはかえでから説明して」と俺に丸投げする。まあ言い出しっぺだしな。


「えーと、読んでて思ったんだけど、主人公が死にまくるのはヒロインのためだっていうこと、ヒロイン本人は気づいてると思うんだよ。奥手で引っ込み思案な彼女がそんな彼に強く言えるわけない。でも冷静に見てなんていられないはずなんだ。でも作中ではヒロインの心情について詳しく書かれてない。なら、せめて歌で表現してあげられないかなって」

「……なるほどね」

「そこで、作者にコンタクトを取って聞いてみたのよ。そしたら――」


 *   *   *


「え? 姫嶋さんが?」

「そうなんです。ヒロインの心情にすごく寄り添って考えてくれたみたいで、どうにか歌にできないかって私に相談してきたんです」

「……すごいですね。私もヒロインについてはなんとかしてあげたいとは思ってたんです。でも、心情を詳しく書いて乙女心を前面に出しちゃったら重い女の子って思われそうで踏ん切りつかなくて……。それを歌で表現してもらえるなら、すごく良いと思います!」

「まだアーティストは発表前なので、今からならギリギリ変更可能だと思うんです」

「でも、それはアーティストさん怒るんじゃないですか?」

「このアニメ、2期はもう決まってるんですよね?」

「ええ。2クールでやると聞いてます」

「その2期エンディングを担当してもらえないか交渉してみます」

「あー、なるほど。それならありかもですね」

「ちょっと難しいですが、やってみます。それと、ここからが本題といいますか、我儘を承知でお願いがあるんです」 

「なんでしょう?」

「ヒロインの心情を歌うエンディング、私たちHuGFにやらせていただけないでしょうか?」

「HuGFさんに!?」

「本当ならアイデアを出してくれた姫嶋にやってもらうのが筋なんですが、先生のご要望通りオープニングを担当しています。いくら注目のアイドルとはいえ、人気作品のオープニングとエンディングを独占するのは難しいと思うんです。そこで、オープニングを姫嶋かえで、エンディングをHuGFにすれば無理なく上も説得できると思うんです」

「それはもう……元々はHuGFさんにお願いしようと思っていたんですから、むしろ私からお願いしたいです」

「ありがとうございます! それで、もう一つだけ勝手なお願いがあるんです」

「なんですか?」

「歌詞についてなんですけど、姫嶋に書いてもらうのはどうでしょうか」

「姫嶋さんに?」

「今回のアイデアは姫嶋の発案ですし、ヒロインの心情に最も寄り添って考えているのは姫嶋です。もちろんプロがちゃんと監修します」

「いいですね、面白そうです!」

「それと、先生にもチェックをお願いできますか?」

「はい、大丈夫ですよ」

「ありがとうございます。夜分に押しかけてしまい、大変失礼しました」

「いえいえ、珍しいビジネスモードの煌梨さんも拝めたことですし、とても楽しい夜になりました」

「そんな、その……恐縮です」

「それでは、楽しみにしてますね」


 *   *   *


「というわけで、快諾してもらえたわ」

「ちょっと待ってくださいよ!!」

「どうしたの?」

「どうしたもこうしたもないですよ! 私が歌詞書くって本当に!?」

「そうよ」

「そうよって――!」

「なら、かえではプロに任せたい?」

「え?」

「かえでがどうしても無理で、プロに全て任せて良いというなら構わないわよ。また先生に相談するだけ。――でもね、これは大きなチャンスなのよ」

「チャンス?」

「かえでのアイドルとしての幅を広げるチャンスであり、あなたのアイデアを自分自身で形にするチャンスでもあるの。ヒロインの心情に寄り添った曲を作ってエンディングにする。こんな斬新な発想、作者も監督も、私たちの誰にも浮かばなかったのよ? そんな素晴らしいアイデアを自分の手で形にできたら素晴らしいことだと思わない?」

「それは……」

「普通ならキャリアもない新人アイドルが書いた歌詞なんて使われない。しかも人気作品のエンディングテーマよ? プロに依頼するのが当たり前。でも作者からぜひお願いしたいと言ってくださってるの。こんな機会もう二度とないわ。当然プロと作者のチェックは入る。でも、作詞はちゃんと姫嶋かえでの名前が載る」

「――!」

「どう? やってみる?」


 まったく、無茶振りばかりしてくれるよな。


「……分かった。やってみる!」

「オッケー、ただし急いでね。無理やり変更してもらったから時間がないわ」

「いつまで?」

「待てて1週間よ」

「分かった」


 1週間か……。

 人生初の作詞。こうなったら、やるだけやってやる!



 To be continued→

最後まで読んで頂いてありがとうございます。

応援よろしくお願いします。


人気作品のアニメのオープニングを担当するアイドルがエンディングの作詞をするという前代未聞のプロジェクトが始動しました。


あと、なんかエンディング担当決まってるアーティストさんを2期にズラすとか無茶苦茶なこと言ってますけど、多分リアルでは無理ですね、ええ。でもいいんです。これはフィクションなんですから。

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