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魔法少女かえで@agent 〜35歳サラリーマンが魔法少女やることになりました〜  作者: そらり@月宮悠人
第三章

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休日の朝

『マスター、メッセージが届いてます』

「うう……ん」


 夜遅くに寄宿舎へ戻り寝た俺は、視界に通知ディスプレイを表示させて寝ぼけ眼で確認する。


「なんだ……?」


 送り主は……生島水七海? ああ、この前の魔法少女か。なんの用だ?


『この前は助かった。またなんかあったら頼むわ。例のポイント振り込まれたんで、約束通り半分送っといた。好きに使ってくれや!』


 ああ、そういえばポイントくれるって言ってたっけ。いくらだ?


「いちじゅうひゃくせん……41,350ポイントか……」


 二度寝する気満々でいた脳が一気に覚醒する。


「4万!?」


 叫んでガバっと起き上がると、「どうしたですかー?」と目をこすりながら舞彩が目を覚ます。


「あ、えーと……ごめんね、変な夢見ちゃって」

「夢ぇ……ですか」


 今日は休日のため、舞彩も二度寝体制に入る。


「おいおい、4万ポイントってマジかよ」


 確か、生島の手伝いした時はランクA+が3体とランクAが5体。あとはランクBを2人で蹴散らしたはず。


「いつもの浄化ポイントも入ってるのか。それにしてもランク報酬とんでもないな」


 これならランクBを追いかけ回すより遥かに効率が良い。こりゃあ来週の試験は是が非でも受からないとな。


「と、そうだ煌梨に予定を聞かないと」


 しかしまだ朝の6時だ。さすがにこんな時間に通信するわけにはいかないな。


「とりあえず返信しとくか。……ありがとうございます。また機会があればぜひご一緒させて下さい。と」


 さて、顔でも洗うか。

 部屋を出て洗面所に向かうと、そこには陽奈がいた。


「姫嶋さ……かえで、おはようございます」


 照れながら慌てて訂正するの可愛いな。

 

「おはようございます。陽奈はどうして寄宿舎なの?」

「寄宿舎にいるほうが人形(かえで)をサポートしやすいと思ったからだよ」

「うっ……そんなことまで考えてくれてたんだ……」

「かえでのサポートはスレイプニルと校長先生から直々に頼まれたから。……でも、かえで本人には魔法少女としてのサポートは必要ないと思うよ」

「そうなの?」

「有栖川のビルで助けてもらった時も、トリテレイアのお仕事の時も、私なんかより全然強いもの」

「あー、それは器と師匠に恵まれたからだと思う」

「師匠は誰なの?」

「逢沢優海さん」

「優海さんって、あの優海さん!?」

「知ってるの?」

「知らないのは新人だけだよ。技能試験で毎回A判定なのに50キロメートルエリア担当の昇格を辞退してるって有名だよ」


 そういや事後処理部隊の安納(あのう)真幌(まほろ)もそんなこと言ってたな。


「それと、優海さんの弟子になるのが難しいことでも有名」

「どういうこと?」

「教え子は必ず10キロメートルエリア担当になるって噂があって、倍率がとんでもないの」

「ああー、なるほど」


 それは俺も実感した。優海さんは教えるのが上手なんだ。人の力を引き出す天才なのかも知れない。

 もしかしたら、指導したいから昇格しないで留まってるのかな?


「でも、納得した。強い器に優海さんの指導か。いいなー」

「なら、陽奈も優海さんに教わってみる?」

「かえで、今の話聞いてた?」

「それでもさ、ダメ元で聞いてみるよ」


 優海さんにお願いしたいことがあるとメッセージを送る。すると意外にもすぐ返事が来た。


「あれ? もう返事来た。早起きだなー」


 どんな用かと訊かれたので、優海さんの指導を仰ぎたい子がいると返すと、今度は通話が来た。


「ちょっとごめんね。……はい、もしもし。こんな朝早くにすみません」

『いいのよ、もう起きてたから。それで? 教えて欲しい子って誰?』

「えーと、有栖川陽奈という子なんですが」

『え? 有栖川陽奈って、もしかして有栖川彩希の妹さんの?』

「ご存知なんですか?」

『それはもう有名だもの。でも陽奈ちゃんは独学でがんばってるって聞いたけど』

「そうなんですか? ……陽奈、独学でやってたの?」

「うん。優海さん以外に師匠になって欲しい人がいなかったから」

「そうなんだ。……優海さんに教わりたかったらしいんですけど、でも倍率高すぎて諦めて独学でやってたそうです」

『そうだったの? 今なら空いてるから全然いいわよ』

「分かりました。では優海さんの連絡先を陽奈に教えますね」

『うん、よろしくね』


 通話を終え、「今なら空いてるから大丈夫だって」と伝えると、「ほ、本当ですか!?」とキスの距離まで顔を近づける。


「う、うん。優海さんの連絡先送るね……」


 少し顔を動かせばキスできる距離。破裂しそうなくらいの心臓の音がバレないかドキドキする。


「かえで……! ありがとう!」


 抱きつかれていい匂いがして柔らかくていい匂いがして髪サラサラでいい匂いががが――


「どうしたの? 顔赤いよ?」

「なななんでもないよー」

「ふふ、まるで初心な男の子みたい」

「あは、あははは」


 はい。その通りです。男の子じゃなくておっさんだけど。


「だって陽奈可愛いんだもん、急にどアップから抱きつかれたらドキドキしちゃうよ」

「え!? なん、そんなこと、ないよ……」


 あー! また姫嶋かえでの人格が勝手に!

 そういやぷに助に言うの忘れてた……。


「かえでだって、すごく可愛いし、優しいし……」


 顔を赤らめてもじもじする陽奈は異常に可愛い。


「陽奈……」

「かえで……」


 え? ちょっと待て、なにこの空気? おいおい待て待て待て!?


「おはようございます!」


 割って入ったのは水鳥だった。助かった!


「お、おはようございます!」

「……おはようございます」


 陽奈は邪魔されたとばかりに明らかに不機嫌になる。


「それでは、私はこれで」


 と、陽奈が洗面所を出る瞬間、すれ違いざまに「またあとで、ね」と甘い小声で囁いて行った。

 まさか陽奈、姫嶋かえでのこと好きなんてこと……ないよな。


 そして水鳥はというと、陽奈が去ったのを確認してから「姫嶋様! 陽奈とはいつからあのような関係に!?」と問い詰められる。


「あのようなって言われても……」

「まさか、姫嶋様、陽奈のこと!?」

「ないない! ないって!」

「……本当ですか?」

「うん」


 少なくとも、“俺”はな。


「……まあいいでしょう。ですが、姫嶋様を一番お慕いしているのはこの(わたくし)です!」

「分かってるよ。ありがとう水鳥」

「姫嶋様……」

「水鳥もかえでって呼べばいいのに」

「いえ! そんな恐れ多いです!」

「でも、陽奈はかえでって呼ぶよ?」

「うぐっ……」


 なにやらものすごく葛藤している。


「それに、姫嶋様なんて呼びづらいでしょ?」

「……姫嶋様は、(わたくし)に……かえで様、と呼んで欲しいですか?」

「うん、できればそのほうが嬉しいかな」

「嬉しい……!! 分かりました。これからは、かえで様と呼ばせていただきます。より一層の忠誠を誓います!」

「うん、普通でいいんだけど。これからもよろしくね、水鳥」

「はい、かえで様!」


 朝から洗面所でなにしてるんだか……。

 部屋に戻ると舞彩はまだ寝ていた。そろそろ7時になるし、そろそろ煌梨に電話してみるか。


「……あ、煌梨? こんな朝早くからごめんね」

『ううん、起きてたから大丈夫。どうかした?』

「うん、実はね……」


 ぷに助から聞いた昇格の話を伝えると、「そうねぇ」と少し考える。


『ミニライブは夕方からの予定よ。ただ、それより問題なのは練習のほうよ』

「あ! そういえば!」

『本当なら昇格試験のために備えるべきだけど、ミニライブはとても大事なの。分かるよね?』

「うん……。それはよく分かってるつもり」

『厳しいこと言うようだけど、昇格はまた機会がある。けどミニライブは今回のサプライズ限定なの。だから私としてはミニライブの練習に集中して欲しい』


 そうだな。前回のライブで、多くの人の協力あってのライブだと実感した。俺一人のわがままでライブを壊すようなことはできない。

 なにより優海さんを招待してるんだ。楽しみにしてくれてる優海さんを裏切るわけにはいかない。


「分かった。ライブに集中するよ」

『いいの?』

「うん。昇格試験も気になるけど、ライブを成功させたいから」

『分かった、もうすっかりアイドルね。じゃあ今日レッスンできる?』

「うん、今日は休みだし大丈夫」

『それじゃ、いつものスタジオで待ってるから!』


 電話を切ると、両手で頬を叩く。

 高位(ハイランク)昇格はしたいが、今はライブに集中しよう。そのためにも三ツ矢女学院に来たんだ。最高のミニライブにしてみせる!



 To be continued→

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