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魔法少女かえで@agent 〜35歳サラリーマンが魔法少女やることになりました〜  作者: そらり@月宮悠人
第三章

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カレー事件④ 真相

 マハラジャに着くと、さっきと同じ衣装に変更して、今度はステルスモードをオフにしてから裏口のドアを開ける。


「すみません! 店長さんはいますか!?」

「あ? 誰だ君は」

「え、と……友だちから言われて」

「バイトか? 友だちって誰だ? まさか――」

「ああー!!」


 突然大声が聞こえて振り向くと、さっきの川口と呼ばれてた女の子がいた。


「店長! この子ですよさっきの!」

「ん? なんだ、幽霊じゃなかったのか」


 まあ、そうなるよな、はは。


「さっきは急にいなくなって! 説明大変だったんだからね!」

「あはは、ごめん。えーと川口さん?」

「春菜でいいよ。川口春菜。それであんたは?」

「あ、そうだ! 消えたカレーを見つけたんですよ!」

「なんだって!?」


 真っ先に反応したのは店長だった。しかし、なんだか様子がおかしい。


「ど、どこで見つけた!?」


 肩をガシッと掴まれ迫られる。めちゃくちゃ怖いな……。女の子からするとこんなに恐怖感あるものなのか、俺も気をつけよう。……そんなシチュエーションになることはないが。


「トラックが事故を起こした現場に遭遇したんです。そのトラックにカレーがいっぱい積まれてましたよ」

「そ、そうか……」


 この反応、店長は何かを隠している?


「この人に見覚えありますか?」


 そして、俺が写真を表示したスマホを見せると、明らかに表情が変わる。確定だな。


「この人が気を失う前に言ってました。『カレーは盗まれていない。ここにある。早く学校に』って」

「……」

「それって、どういうことですか店長? 誰なんですかこの人は?」

「それは……」

「店長、このカレーは三ツ矢女学院の660人の生徒がとても楽しみにしてるんです。どうしてカレーがあるのに消えたなんて、盗難にあったなんて嘘をつくんですか?」

「店長! 答えてくださいよ!」

「……」

「今、警察が調べてます。店長にも捜査の手が及ぶことは、分かりますよね?」

「なっ! ……くそ!」


 店長は観念したように椅子に座り項垂れると、静かに真相を語り始めた。


「……あのカレーは、失敗作なんだ」

「そんな! いつも通りの出来だったじゃないですか!」

「フッ、そうだな。お前には()()()()()()()を試食させたんだ。当然だろう」

「私には? じゃあ、本当の、寸胴に入ってたカレーは?」

「スパイスの配合! 具材の量! 水分量! どれもがデタラメだ!!」

「どういうことなんですか?」

「原材料の高騰で仕入れが上手く行かなかったんだ。同じレシピで作れば足りなくなる。だからできる限りの調整をした。だが駄目だった! あんなものは三ツ矢女学院のカレーじゃない!」

「それで、廃棄させようと考えたんですね?」

「……ああ」

「この運転手さんは誰なんですか?」

「そいつは俺の弟だよ。いつも三ツ矢女学院にカレーを配達してくれている。今回、俺がこれじゃ提供できないと言って廃棄を命じた。それなのに、まさか三ツ矢女学院に届けようとしていたとはな」

「弟さん、すごく必死でしたよ。早く届けてくれって」

「ふん。あんなもの届けたら、それこそ信用に関わる!」

「なら、材料があればいいんですよね?」

「それは……そうだが、今からじゃ間に合わないぞ。普通のスーパーなんかには売ってないものもあるんだ」

「ダメ元ですよ。ちょっと待ってくださいね」


 外に出て電話を掛ける。ほどなくして「もしもし」と相手の声が聞こえた。


「カレー事件の真相が分かりました。……はい。それで、お願いがあるんですが……」


 電話を終えると裏口から厨房に入る。


「材料確保できそうです」

「本当か!?」

「はい。知り合いに頼んでみたら10分で用意するって」

「10分で!? 知り合いっていったい……」

「秘密です」


 体が勝手に可愛らしくウィンクする。やめてくれ! こんなあざとい行動恥ずかしくて死んでしまう!


「あー!! あんたもしかして――!?」


 川口に気づかれた事を察した俺は加速装置でも発動したのかと思うほどの素早さで川口を掴んで外に連れ出す。


「ちょっと! いきなりなに!?」

「もしかして、なに」

「え?」

「今、なに言いかけたの!?」


 大真面目な俺に気圧されながらも、「えーと……もしかして、姫嶋かえでじゃないかなって」と答える。


「……はぁ、やっぱり」

「てことは、本物!?」

「あまり大きな声で言わないでよ、バレちゃうから」

「ご、こめん……。でも、姫嶋かえでは重体で入院中だって……」

「うん、それは本当。ちょっと無理して病院抜け出して来たんだ」


 嘘です。すみません。


「ちょっ、大丈夫なの!?」

「うん、だいぶ回復はしたから」

「でも、胸刺されてたよね!?」

「運良く致命傷にはならなかったんだよ」

「そ、そうなんだ」


 すまんな……。素直な子で助かるよ。


「でも本当にビックリした」

「誰にも言わないでね」

「分かってるよ。事件解決してくれた恩人だし」

「ありがとう!」

「ちょっと!」

「え?」

「い、いきなり抱きつかないでよ……。汚れちゃうよ?」

「――え? あ、ああ! いいよ! 全然気にしないから!」


 一瞬意識飛んでた。姫嶋かえでの行動が日に日に増えてないか?


「でも、大人気アイドルにハグされたなんて、一生の思い出になるよ。ありがとう」

「そうかな? じゃあ握手でもする?」

「いいの!?」

「うん、全然いいよ」


 やめてくれええええ! 良くない! 女の子と握手とか心臓が持たない!


「ありがとう! 姫嶋さんてファンサすごいんだね!」

「そうかな? またライブやるから、よかったら見に来てね」

「うん! 絶対行くよ!」


 ふぅ。どうなるかと思ったが、なんとか秘密は守られそうだ。あとは校長に報告して解決だな!



 To be continued→

最後まで読んで頂いてありがとうございます。

応援よろしくお願いします。


材料が足りないなら代用品探すなり校長に相談するなり、対応のしようはいくらでもあったはず。と思われる読者もいると思うので補足を。


本編では触れてませんが、この店長はとてもプライドが高い人なんです。材料は徹底的にこだわるため代用品なんて論外。自分の仕事に妥協できないので校長に相談なんてもってのほか。しかしだからといって廃棄するなんて……。もったいないですよね。

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