表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女かえで@agent 〜35歳サラリーマンが魔法少女やることになりました〜  作者: そらり@月宮悠人
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

171/259

生島の過去とtre's結成の秘密

生島(しょうじま)さんが魔法少女を殺したって……それは裏切ったと?」


 ――魔法少女の裏切り。

 魔法少女の資格を剥奪され、護衛が付くこともなく魔物に食い殺される。実質的な処刑だ。

 

「そうね。そう捉えることもできるわ」

「どういうことですか?」

「先日、有栖川さんが行方不明になったでしょう?」

「はい。洗脳されていた件はまだ調査中とのことですが」

「あの時は、洗脳より酷かったわ」

「……というと?」

「ある魔法少女が魔物に乗っ取られたの」

「乗っ取られた?」

「ああ、姫嶋さんはまだそういう魔物を知らないのね」

「すみません……」

「いいのよ。ではまず、魔物についてお話しましょう。魔物の名前はピューゲル。ランクAの厄介な奴でね、魔法少女専門の寄生型なの」

「魔法少女専門!?」

「寄生型は分かる?」

「はい。以前ワュノードと遭遇しました」

「ああ、あれも厄介よねぇ。よく無事だったわね」

「tre'sのお二人に助けていただいたので」

「あら! あの二人に? 運が良いのねぇ」


 正確にはぷに助が応援として呼んでくれたんだけど、説明面倒くさいからいいか。


「あの、少し話が逸れてしまうんですが、質問してもいいですか?」

「ええ、どうぞ」

「tre'sはどうして二人組なんですか? 100キロメートルエリア担当は10人しかいないのに……」

「ああ、聞いてないんですね。……そうね、私が話したことは内緒にできる?」

「はい。もちろん」

「あの二人はね、魔物から呪いを受けているのよ」

「呪い……ですか?」

「そう。一部の魔物だけが使える解除不能の魔法。それを通称として呪いと言うのよ」

「魔物だけが……。ローレスとはまた違うんですか?」

「ええ。ローレスとはまた違うわ。ローレスのは魔法少女を殺すための魔法だけど、呪いは魔法少女の能力や行動を封じるのが主な目的よ。中には死に至る強力な呪いもあるけれど」

「なるほど……。それで、その呪いをtre'sのお二人が受けてる?」

「ええ。ある魔法少女を助けるためにね」


 北見校長は紅茶を一口飲むと、当時を思い返すように瞼を閉じる。


「その子はまだ魔法少女になったばかりだったの。知ってか知らずか、エリア外でランクAの魔物に遭遇して殺される寸前だった。そこへ救援に現れたのが的場奏雨さん。的場さんは見事に魔物を倒したわ」

「え? 倒したのになんで……」

「その魔物だけじゃなかったのよ。気配を消して潜んでいたもう一体のランクAがいた。的場さんはその魔物から呪いを受けてしまった。

 急遽、応援要請を受けて駆けつけたのが神楽・ソランデルさん。神楽さんの活躍もあって魔物は殲滅(せんめつ)できたんだけど、的場さんの呪いは消えなくて瀕死だった。

 そこで、神楽さんは一計を案じた。的場さんの呪いを自分にも移したの」

「そんなこと、できるんですか!?」

「普通なら無理ね。でも神楽さんは特殊な術式でそれをやってのけた。その影響で呪いの性質が変わったのか、二人は()()()()()()()()()()()()()()という状態になってしまったのよ」

「なっ!?」


 一定距離で魔力が消える!? いくら魔物だけが使える魔法だからって、そんなことがあり得るのか?


「だから二人は一緒に行動せざるを得なくなったんですか」

「そうよ。でも、それ以来二人は獅子奮迅の活躍で魔法少女を、世界を支えてくれているわ」

「でも、それなら100キロメートルエリア担当の枠を増やせばいいのでは?」

「それはできないそうよ。私も詳しくは分からないのだけど、天界のシステム上の問題のようね」


 天界の技術者は優秀だ。それでも枠を調整できないとなると、カーネルレベルの問題なのか。


「話してくださってありがとうございます」

「いいのよ。命の恩人のことは知っておきたいでしょう」

「はい。……あれ? 命の恩人なんて言いましたっけ?」

「ふふ。分かるわよ。ワュノードに遭遇して無事だった新人なんていないもの」

「あはは……」


 そりゃそうだ。あんなの倒せる新人がいたら見てみたいわ。


「それじゃ、話を戻してもいいかしら?」

「はい、すみません」

「いいのよ。……そうね、私からも一つ質問していいかしら?」

「え? はい」

「もし、あなたの大切な人が魔物に乗っ取られたら、どうする?」


 大切な人が魔物に乗っ取られたら?

 俺の大切な人か……。魔法少女に限定するなら、真っ先に浮かぶのは紫や歩夢かな?


「……それは、殺す以外の選択肢が無いという状況なんですか?」

「そうねぇ、一つ教えてあげるわ。乗っ取られるというのは、寄生型が器を支配した状態のことを言うの」

「それって……!」

「そう。乗っ取られた状態で魔物を倒すということは、器を壊すのと同義なのよ」


 魔法少女の器を壊すということは、魔法少女にとって死を意味する。よしんば生き残れたとして、器が壊れたことで大量の魔力に汚染されて暴走するか、魂が汚染されたら……。


「……つまり、選択肢は初めから無いんですね」

「ごめんなさいね、意地悪な質問をして」

「いえ。ということは、生島さんは……」

「そう。乗っ取られた親友をその手でね。辛かったと思うわ、とても。軽々しく『気持ちは分かる』などとは口が裂けても言えない。私も、お疲れさまと言うのが精一杯だった」

「でも、それでどうして私を会わせたかったんですか?」

「あの子は、死に場所を求めてるのよ」

「死に場所を……。そうか!」

「思い当たる節がある?」

「はい。ずっと気になっていたんです。とにかく強い魔物と戦いたがっていて、それで負けそうになった時に諦めたような顔をしてたんです。逃げようともしないで」

「そうだったの……。姫嶋さんがいてくれて良かったわ」

「え?」

「姫嶋さんがいなかったら、生島さんは昨日死んでいたかも知れないから」

「……買いかぶり過ぎですよ。私は私で生き残ることに必死だっただけです」

「それでいいのよ。生島さんは吹っ切らないといけない。生きることに必死なあなたを見れば、きっと気づいてくれる。そう思ったの」


 まったく、食えない人だな北見校長は。


「そうだ、その生島さんから言伝を頼まれましたよ」

「私に?」

「はい。『ありがとうございました』と」

「――!」

「北見校長?」

「な、なんでもないわ。そう、あの子が……」

〈お話中失礼します、マスター。スレイプニルから早く戻れとメッセージが届いています〉

〈分かった〉

「すみません、スレイプニルに呼ばれてしまって」

「ああ、ごめんなさいね。長々と話してしまって」

「いえ。あ、お茶いただきますね」


 茶菓子を二つ食べて紅茶で流し込む。すごく香りがいい。こんな高級紅茶ならもっと味わいたかったな。


「すごく美味しいですね!」

「あら、ありがとう」

「それでは、また!」



 To be continued→

最後まで読んで頂いてありがとうございます。

応援よろしくお願いします。


本当は生島の過去だけを書く予定だったんですが、脱線するのはいつものことなので←

tre'sが二人一組な理由。いつか書けたらと思っていたので、北見校長に語ってもらえたのは良い機会でした。


用語解説

『天界の技術者は優秀だ。それでも枠を調整できないとなると、カーネルレベルの問題なのか。』

カーネルというのはコンピューターの基本ソフトウェア(OS)の中核を担うシステムの根幹部分です。100キロメートルエリア担当の人数は呪いを受けたからといって簡単に増やせる仕組みではない。という話を聞いた楓人は、簡単にいじれない=システムの深い部分が関係してると考えたわけですね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑にある☆を★★★★★にして応援していただけると嬉しいです。無限エンジンの燃料になります。 script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ