初めての術式
「あそこか!」
夜の市街地上空、ランクB・ラドノンと交戦中の5キロメートルエリア担当の魔法少女は防戦一方で必死に耐えていた。
「いくぞ! ピュアラファイ!」
白銀の光が魔物を貫く。しかし浅かったようで警戒して離れた。
「それはそれで好都合だな」
ヘロヘロになってる魔法少女を救出して魔物と距離を取る。
「大丈夫?」
「は、はい。……あなたは、姫嶋さん!?」
「え? そうだけど……」
「きゃー! 技能試験見てました! ファンです握手してください!」
俺――姫嶋かえでも随分と人気者になったもんだなぁ。
「いいけど、あとでね」
今は魔物を倒すのが先決だ。プテラノドンみたいな見た目で、アナライズによれば超音波で動きを封じる攻撃があるらしい。
「――ピュアラファイ!」
今や十八番となったクイックドロウで撃ち落とそうとするも、なぜかあっさり避けられる。
「なんなんだいったい?」
『恐らく超音波によって攻撃を察知しているのでは』
「超音波で?」
『常に警戒のための超音波を発し続けているのであれば、どんなに素早くクイックドロウで撃っても察知されてしまうので当たりません』
「なるほどな。だったら、避けられないようにすればいいわけだ」
魔法の杖に術式が走る。放たれた何十本ものピュアラファイは放射状に広がり、魔物を取り囲むように襲いかかる。圧倒的物量に逃げ場を無くした魔物はあっという間に浄化された。
「ふぅー、こんなもんかな?」
『お見事です。マスター』
初めて術式というものを使ってみたが、思ってた以上に面白い。塩谷に感謝だな――。
* * *
「10キロメートルエリア昇格おめでとう」
昇格通知があった夜に本部の術式研究所へ行くと、塩谷亜未が祝ってくれた。
「ありがとう。早速質問なんだけど、10キロメートルエリア昇格の通知に開発制限の解除ってあったんだけど、これはどういうこと?」
「ああー、10キロメートルエリア未満の魔法少女は使える魔法文字の種類とコード数が限られているの。10キロメートルエリアになるとその制限が無くなって全種類使えるようになるしコードも書き放題になるの。まあ書き放題といっても長々と書く人はそんなにいなくてある程度のコード数に収まるんだけどね」
プログラムコードも無駄に長く書くことはないし、そこはやはり共通してるな。
「そうなんだ。これから色々とよろしくね」
「……私でいいの?」
「え? もちろん」
「……分かった。まずなにからやりたい?」
「そうだなー、複数の魔物を一気に殲滅できるような……そんなのある?」
「対複数ならやっぱりロック・オンだよ」
「あー、なんかそれっぽい」
「分割、直球、拡散、追尾……やり方は色々ある」
「分割と直球?」
「分割は文字通り魔力を分割する。例えば魔物が5体いるとして10の魔力を5分割して一体あたり2の力を当てるイメージ。直球は5体全てに10の魔力を当てる」
「あー、そういうことか。分かった。拡散との違いは?」
「分割と直球は直射する。拡散は文字通りバラけて発射する」
「どうしてわざわざ拡散させるの?」
「魔物を逃さないことを目的としてる。直射と違って放射状に広がって囲い込むように向かって行くから仕留めやすい」
「へー、そんな効果が……。追尾ってホーミングだよね?」
「そう。追尾だけは少し特殊でオプション扱いになる。だから単体使用はできない」
「追尾あれば直球でも逃がすことなくていいんじゃない?」
「確かに追尾型直球は相手を追いかけるけど直球の性質上、追尾効果が薄くなるから振り切られることがある。追尾は基本、拡散と組み合わせて追尾型拡散として使われることが多いよ」
そうか、オプションの組み合わせにも相性があるのか。
「追尾型拡散と拡散を使い分けるには、2つインストールしないとダメかな?」
「追尾オプションと拡散をインストールすればいい。撃つ時に拡散だけか追尾オプションを追加するかを選べるから」
「なるほど、それは便利だね。とりあえずその2つをインストールしてもらおうかな」
「分かった」
「自分で開発する場合は研究所でやればいいの?」
「そう。私がいる時なら自由にやってていいよ」
「ありがとう」
「……インストールできた。他にある?」
「今はこの2つでいいよ。入れすぎても使いこなせないし」
「……また、来る?」
「え? うん。そのつもりだけど……」
「そっか……じゃあ、またね」
「うん、またね」
* * *
――魔物を片付けて戻ると、「すごいすごーい!」と一頻り感動して握手する。
「助かりました! 本当にお強いですね!」
「あはは、ありがとう」
落ち着く間もなく、また救援要請が入った。北北東3.4キロメートルか。
「仕事入ったから行くね」
「がんばってください!」
このあと滅茶苦茶魔物を狩った。
To be continued→
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ついに術式解禁!
今後は色んな術式を出して行きたいです。




