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魔法少女の敵は魔法少女?

トリック・オア・トリート!

(本編とは一切関係ありません)

 ――あらすじ。

 ある日、魔法少女になってしまったブラック企業戦士の樋山楓人(ひやまあきと)35歳童貞。


 間宮楓香(まみやふうか)の警護任務を終えて力尽き倒れた楓人は歩夢に保護された。泊まりを提案されるが、おっさんであるとバレるわけにはいかないと帰ることに。

 帰り道で魔物に襲われて重傷を負った楓人はtre'sに助けられ、本部で目を覚ます。そこに駆けつけた歩夢から紹介されて逢沢優海と会うことになった。



*   *   *



 弓矢で50メートルほど離れた的を射抜いて爆破した和服美人がこちらへやって来る。


「この人が……?」

「そう、かえでに色々と教えてくれる人」

「はーい、歩夢。元気してた?」

「まあね」


 二人はハイタッチを交わす。けっこう仲が良いらしい。


「それで、その子は?」

「ああ、紹介するよ。新しく魔法少女になったかえで」

「初めまして、姫嶋かえでといいます。よろしくお願いします」

「私は逢沢優海(ゆみ)よ。よろしくね。何から話せばいいのかしら?」

「そうだなー、魔法少女ポイント(MP)についてはこのあとショップ行って教えるつもりだから……」


 魔法少女ポイント(MP)はショップで交換するのか。なんだかゲームライクなシステムにあまり驚かなくなってきた。


「魔法少女についてのおさらいと、戦闘技術についてかな」

「――ていうことは、かえでちゃんはマジカルタイプ?」

「そっ。だからアタシはお手上げ」


 葉道(はどう)は文字通り手を上げる。


「分かったわ。じゃあ魔法を――あら? かえでちゃん、魔法の杖は?」

「あ、えーと……実は……」


 夜道で魔物に遭遇して魔法の杖を壊されたことを、かいつまんで話す。


「そう……tre's(トレズ)が助けた子ってかえでちゃんだったのね」

「はい。それで今は魔力が――」


 そこまで話して、ふと思い出した。あそこには確か酔っ払いのサラリーマンがいたはずだ。なんでいまの今まで忘れてた!?


「すみません! あの現場に確かサラリーマンが!」

「民間人ってこと?」

「はい!」

「んー、歩夢は聞いてる?」

「いーや?」

「そう、なら大丈夫じゃないかしら」

「え?」

「私たち魔法少女には、民間人を巻き込んだ場合、報告義務があるのよ」

「報告義務?」

「民間人が負傷したり、行方不明になったり、死亡した場合は報告書を書いて提出しないといけないの」

「始末書みたいなものですか?」

「イメージとしては近いけど、大きな違いはペナルティが発生するということよ。……ていうか始末書なんてよく知ってるわね?」

「えっ? あ、えーと、ほら! ドラマなんかでよく見るので」


 あはは……と笑って誤魔化す。いかん、気を引き締めないとボロが出てしまう。


「ふーん? ドラマ好きなんだ?」

「ええまあ……。えーと、ペナルティってもしかしてMPの没収ですか?」

「没収はもちろん、マイナス化しちゃうの」

「マイナス化?」

「そうね、簡単に言ってしまうと借金かな」

「えっ! 魔法少女ポイント(MP)の借金ですか!?」

「例えば、かえでちゃんの魔法少女ポイント(MP)が100だとして、報告書――まあ内容にもよるんだけど、民間人を一人巻き添えにして死亡させてしまった。と書いてペナルティとしてマイナス300MPとされると、かえでちゃんは一週間以内に300MP以上稼がないと魔法少女としての資格を失ってしまうの」

「それは……かなりキツイですね……」


 ということは、柴田がもし住宅街で戦って民間人巻き込んでたら、一週間ペナルティどころじゃない。確定で資格剥奪になっていたじゃないか。柴田はそのことを知らされてなかったのか?


「tre’sが民間人を巻き込むなんて考えられないし、大丈夫よ」

「あの二人って100キロメートル担当なんですよね?」

「そうよ。魔法少女の中でも10人しかいないトップチームなの」

「10人しかいないのに、二人が組んでるんですか?」

「あー、それについてはまた後でいいんじゃない?」

「そうね、また後でお話しましょう。とりあえず今は頭の片隅に、そういう魔法少女もいるってことだけ覚えておいてね」

「はぁ……」


 なんだろう、葉道(はどう)が話したくないというようにtre’sの話題を切ったような……考えすぎか?


「それじゃあ、魔法少女について話すわね。少しスレイプニルの話と被ると思うけど、いい?」

「はい、よろしくお願いします」

「私たち魔法少女の主なお仕事は魔物を討伐すること。でも、倒すと浄化するとは実は意味が違ってくるの。さて、いきなり問題です。浄化とはなんでしょう?」

「え?」


 そういえば、深く考えたことなかったな。魔物を倒すイコール浄化くらいの感覚でいたけど……。


「浄化っていうくらいですから、魔物をキレイにすること? 魔物は敵性魔法生物だけど、その敵性部分を浄化して、魔法生物を解放してあげること……とか?」


「……」

「……」

「……あれ?」


 二人ともポカーンとしている。やばい、また無意識になんか変なこと言ってしまったか!?


「えーと……私なにか粗相を?」


 内心冷や汗ダラダラで恐る恐る訊ねると、「ううん! 違うのよ、なんていうか、こんなに的確に答えられるとは思ってなかったから……ねえ?」と、逢沢は葉道に同意を求める。


「うん……ぷに助のやつ要らないんじゃねぇの?」

「ぷに助?」


 聞き慣れない名前に逢沢はキョトンとする。


「ああ、スレイプニルのことだよ。ぬいぐるみみたいな奴だからって、かえでが命名した」

「ぷ、ぷに助……」


 逢沢はジワジワ込み上げてくる笑いを我慢しようとして、思わず吹き出してしまった。


「あっははは! ぷ、ぷに助って、可愛い! あはははは!」


 よほどツボに入ったのか、地面をバンバン叩いて笑っている。これほどウケるとは……ぷに助、恐るべし。


「あ〜笑ったぁ、あはは。かえでちゃんセンスあるね!」

「そ、そうですか? ありがとうございます」

「それにしても、かえでちゃんすごいね」

「え?」

「浄化ってなんでしょう? なんていきなり質問されて、そんなに具体的な回答した新人さん見たことないよ」

「そうなんですか? いうて私も推測を話しただけなんですけど」

「十分すごいわよ。じゃあ、ついでにもう1問。魔法生物ってな〜んだ?」

「……へ?」


 魔法生物そのものについても、深く考えてなかった。ゲームに出てくる敵キャラくらいの感覚でいた。どうやらゲームライクな魔法少女の仕様にすっかり慣れてしまっていたようだ。


「魔法生物っていうと、魔法で創られた生き物……とか?」

「正解よ。じゃあ、いったい誰が創っているでしょうか?」

「……」


 そうだ。魔法で創られるということは、言い換えれば人造生物ということだ。誰かが創っている。

 魔法を使えるのは、魔法少女か天界の関係者しかいない。まさか天界がマッチポンプみたいなことしてるわけないと思うが……。となると――


「魔法生物を創ってる魔法少女がいるってことですか?」

「さすがね、その通りよ」

「でも、どういうことなんですか? 魔法少女の敵が……魔法少女?」

「んー、それは半分正解かな。端的に言っちゃうと、相手は魔王よ」

「そうなんですか……って、魔王!?」

「そうだけど……そんな驚くこと?」

「いやいや、だって魔王ですよ? いきなりファンタジーじゃないですか。もしかして勇者とかもいるんですか?」

「んー、勇者はいないかなぁ」

「そんなこと言ったら、魔法少女の時点で十分ファンタジーじゃん?」

「それはまぁ……そうですけど」

「強いて言うならアタシたち魔法少女が勇者かな、なんてね」


 ニッと笑ってみせる葉道は、確かに勇者だとしても全く違和感が無さそうだ。ガンガン切り込んでいって魔王とバチバチに()り合いそうだし、その姿が容易に想像できる。


「じゃあ、魔法少女が魔王になった。ということですか?」

「まあ、そうなるかな。でも正直なところ、詳しくは何も分かっていないの」

「どういうことですか?」

「敵性魔法生物を創り出しているのは間違いなく魔法少女よ。でも、一体誰がそれをやっているのかは実は誰にも分かっていないの」

「魔物を創り出せるとしたら、魔法の中でも特別な魔法。究極魔法(ウルティマギア)の一つ、創造魔法(クリエーション)しかない。でも究極魔法(ウルティマギア)は超難しくてめちゃくちゃ魔力喰うんだよ。それをずーっと使い続けられる魔法少女なんて100キロメートルエリア担当にもいない。

 だから、究極魔法(それ)を使う魔法少女がいることは分かってる。でも誰なのか特定はできてない。つまり、便宜上“魔王”って呼んでるってわけ」

「その、究極魔法(ウルティマギア)の一種である創造魔法(クリエーション)は、魔法少女なら誰でも使えるんですか?」

「極論はね。でも、10キロメートルエリア担当未満の魔法少女にはまず無理だと思っていいわ。歩夢の言う通り魔力の消費が凄まじいのよ。仮に発動させる知識やスキルがあっても、発動させるエネルギーが絶対的に足りないの」


 ということは、逆に言えば10キロメートルエリア担当以上の魔法少女の全員が容疑者みたいなものか。


「魔王とか創造魔法(クリエーション)についてはみんな知ってるんですか?」

「10キロメートルエリア担当以上ならほとんど知ってると思うよ。有名な話だし」

「ただ、一応機密情報扱いだから、なるべくは他言無用ね」

「はい……。ていうか、いいんですか? 私なんかにそんな重要な話を」

「あら、かえでちゃんなら問題ないと思うから話したのよ?」

「大型新人だしな!」

「きょ、恐縮です」


 それなりに信用されてるということだろうか……?

 それにしても、魔王だの究極魔法(ウルティマギア)だの、いきなり物語の核心を突くような話だな。こういうのってもっと後になって徐々に判明していくもんだとばかり……漫画やラノベの読みすぎか。


「さて、じゃあ次は魔物について――」

「あーごめん、ちょっと呼び出しだ」


 逢沢が話を続けようとすると、葉道がイヤリングにしている魔法の杖からビービー! とアラート音のようなものが鳴り出した。


「招集? 何かしら……」

「さぁ? とりあえず、かえでの戦闘技術を先にお願い」

「そうね、そうするわ」

「かえで!」

「はい?」

「思いっきりやっていいからね!」

「は、はい! 分かりました!」


 葉道はそう言い残して部屋を出ていった。


 思いっきりって、ピュアラファイを全力で撃っていいってことかな? そういえば全力全開でなんてやったことないな。


「じゃあ、まずはこれを持って」

「これって……」


 手渡されたのは、もはや見慣れた魔法の杖……のプロトタイプみたいなものだった。ハートの飾りも色も無い。


「ここでの練習用よ。仮想空間だから好きに撃てるわ」


 なるほど、()()()()()やれるってわけか。


「じゃあ、()()()()()撃ってみますね」

「ええ、遠慮しないでいいわよ」


 少し前に出て、部屋の奥のほう、さっき逢沢が当てた的があった辺りに狙いをつける。といっても精度は関係ない。方向感だけだ。


「はぁ……すぅー……はぁ……」


 深呼吸して意識集中(コンセントレーション)。星の飾りが回転してどんどん加速して杖が振動する。


「全力全開、ピュアラファイ!!」


 撃った瞬間に、目の前が真っ白になった。確か最初に撃った時も似たようなことになったが、これはその比じゃない。今まで無意識に力をセーブしていたんだと自分で実感した。

 撃ち終わると、地面が抉れて照明がいくつか壊れてしまっていた。


「えーと……」


 自分でも予想以上の破壊力に冷や汗ダラダラだったが、そーっと振り向くと、逢沢は目が点になっていた。

最後まで読んでいただいて、ありがとうございます。応援よろしくお願いします。


2ヶ月とずいぶん空いてしまいました。お久しぶりです。アマゾンの雨季のように雨が一ヶ月も続いた地獄の梅雨で完全に自律神経狂って地獄の日々でした……。


「そのわりにTwitterは楽しそうだなぁ?」

なんて思われてる方もいるかもですが、Twitterはそういうものです(?)。


ほぼ休載中にびっくりしたのは、更新してないのにジワジワとブクマが増えたこと。ありがたい限りな反面、申し訳無さで胸いっぱいでした。本当にありがとうございます。


これからは更新しまくる! とは言えませんが、また少しずつ更新できるように努力していきますので、お付き合い頂ければ幸いです。


完結してるのに空前絶後の爆裂ヒットを飛ばし続けて未だ底が見えない鬼滅の刃は、全創作者の夢を全て獲得してますが、私の夢は書籍化です。とても小さいけど遠大な夢です。


魔法少女かえでが書籍化したら、魔法少女リリ○ルな○は、魔法少女ま○かマ○カに次ぐ魔法少女作品になればいいなぁ……なんて宝くじ一等に当たる夢を見るような妄想してます。夢の中でも見たことありません。


なんか完結後の作者コメントみたいな感じになってしまいましたが、まだ続きます! よろしくお願いします!

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[一言] >「全力全開、ピュアラファイ!!」 (・ω・)ノ×全力全開       〇全力全壊 これでピュアラファイ以外の高火力魔法とか覚えたらどうなるのやら
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