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魔法少女かえで@agent 〜35歳サラリーマンが魔法少女やることになりました〜  作者: そらり@月宮悠人
第二章

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技能試験⑨

「おかえりなさい、どうでした?」


 保健室――もとい、医務室から戻ると試験が始まっていた。リネさんからのお墨付きを花織に伝えると、「では、順番通りに飛んでください」と許可される。


「あんまり難しくはなさそうだな」


 リングを順番通りに潜って行くだけのボーナスステージみたいな感じだ。

 順番が来てスタート位置にスタンバイする。カウンドダウンが始まり、GOの表示で飛び出す。


「スピードクリア目指してみるか」


 特に特典があるわけでもないが、チャレンジ精神というのは大事だと思う。

 加速すると飛んでるっていう感じがある。カーブなんかも問題なく順調にリングを通ってゴールした。


「あっという間に終わったな」


 これといって特筆するようなポイントも展開も無かったけど、大丈夫なのかな?

 クリアタイムは1分21秒と、他の人より一分近く早いようだ。


「姫嶋ってさっきクイックドロウっていうのやった子?」

「ほんとにすごいんだ」


 なんだか噂になってしまっているようだ。まあ悪い気はしないからいいけど。


「わたくしがその記録を塗り替えてあげます!」


 そんな中、対抗心を燃やしてそう宣言したのはシャルロット・高槻だった。


「コースアウトはマイナス評価になるから気をつけてー!」


 念の為に忠告すると「分かってるわよ!」と怒られてしまった。

 しかしその心配は要らなかったようだ。スタートからスムーズに綺麗な飛び方でスイスイ進む。全く危なげなく非常に安定した飛行でゴールする。


「ふふん、どう?」


 クリアタイムに1分11秒と表示され、シャルロットは満足げだった。


「見た? これが私の実力よ」

「すごいなぁ」


 すると今度は、コースから悲鳴のような声が聞こえてくる。見ると柴田がコースアウトギリギリの危うい飛び方をしていた。


「ひぇぇぇー!!」


 本当に魔力制御が不得手なんだなぁ……。動きもそうだがスピードも上手くコントロールできてない。


「大丈夫かな……」


 終始ハラハラする動きだったが、なんとかゴールすることはできた。


「ぜぇ、ぜぇ……」


 飛ぶだけでこんなに消耗してたら戦闘できないんじゃないか?


「大丈夫?」

「え、ええ……なんとか……」

「あなた、そんな調子で現場に行ってるの?」


 鋭い口調と眼差しでシャルロットは柴田に詰め寄る。


「そ、そうですけど……」

「呆れた。そんなの無駄よ、やめたら?」

「シャルロット!?」

「だってそうでしょう? フラフラ飛んで体力も魔力も無駄に浪費して現場に着く頃には倒れそうになってる。もしそんな状態で応援に来られたら戦力外の足手まといが増えるだけだわ」

「それは……でもそんな――」

「いいのよ、姫嶋さん。本当のことだから……」

「本当のことだからって、言い方ってもんがあるだろう!? 柴田だって必死に頑張ってるんだ!」

「なら姫嶋さん、今この場に私たち3人しかいないとしましょう。私と姫嶋さんの二人掛かりでも勝てそうにないランクAの魔物がいて、応援を要請したら柴田さんが来たけど()()()()()。ただでさえ勝てそうにないのに、柴田さんを守りながら勝てると思う?」

「それは……」

「いい? 基本的に魔法少女の戦いは魔物を倒す戦いなの。重要人物を守るためならまだしも、足手まといを守るためじゃない。柴田さんがこの状態で参加したら柴田さんを守るか見捨てるかの選択を迫られることになる。答えは分かる?」

「……見捨てるってこと?」

「いいえ。()()()()()”よ」

「なっ!?」

「なぜかって? 簡単よ。二人で勝てない相手、そして迫られる二択。必ず判断は遅れる。例え一瞬だったとしても、その迷いは致命的になるの」

「――!」

 

 そうか、そんな単純なことを忘れていた……。()()()()()()クイックドロウを習得したんだ。


「分かる? 柴田さんには向いてないのよ。飛ぶのはやめたほうがいい」

「でも、だからって辞めろだなんて! ――え? 今なんて?」

「だから、()()()()()()()()()()()()って言ってるの」

「魔法少女を辞めろとかじゃなくて?」

「……? なんの話をしているの?」

「いやいや、だって勘違いするでしょ! 真剣な顔してやめたほうがいいって言うんだから!」

「なによ。それはあなたが勝手に勘違いしただけでしょ?」

「えぇ……そうかな? 柴田もそう思わなかった?」

「えーと……まぁ」

「……え? うそ、私が誤解させちゃったの?」

「でもまあ、シャルロットの言うことも正論ではあったよ」

「そ、そうでしょう!? 分かればいいのよ、分かれば」


 ふふん、とドヤ顔で髪をサラッとかき上げる。

 

「でも、姫嶋さんにはがっかりしたわ。魔法少女はいかに生き残るか、生存率の世界よ。姫嶋さんとは組めそうにないわね」


 それだけ言い残して、シャルロットは立ち去って行った。



To be continued→

最後まで読んで頂いてありがとうございます。

応援よろしくお願いします。


魔法少女は生存率の世界。というのはシャルロットの言ですが、魔法少女の厳しさを一言で表せていると思います。

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