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魔法少女かえで@agent 〜35歳サラリーマンが魔法少女やることになりました〜  作者: そらり@月宮悠人
第二章

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技能試験⑧

「なんだ!?」


 急に力が抜けたというか、力が入らなくなったような感覚に襲われて落下する。


〈おーっと! 先ほど素晴らしいクイックドロウを魅せてくれた姫嶋かえでが落下ー!!〉

「くそっ!」


 床に落ちるのだけはなんとしても避けたい。だが何度飛ぼうとしても、まるで穴の開いた風船のように魔力が抜けてしまい魔法少女の機能が何一つとして使えない。

 このままじゃ堕ちる! ――と思った瞬間に、ふと優海さんとの会話を思い出す。


『優海さん、魔力が無くなったらどうすればいいんですか?』

『魔力が? かえでちゃんには無縁だと思うけど』

『以前魔法が上手く使えなかった時があったじゃないですか。だからそういう時の対処法も知っておきたいんです』

『まーそうねぇ、緊急事態の対応も覚えておいて損はないかも。もし魔力が無くなった時はね――』


「――緊急(E)魔力(M)放出(R)!!」


 コマンドワードを叫ぶと、魔法の杖のハート飾りにメーターが表示される。

 これは魔法の杖にある機能の一つで、契約者(オーナー)の魔力を常に一定量蓄えておける。要はサブタンク的なものだ。

 その魔力は外付けタンクという扱いなので本人の魔力が失われようと使うことができる。ただしサブタンクなので魔力量は限られている。


「ふぅ……」


 なんとか持ち直した。ホバリング程度ならサブタンクでも保つだろう。


〈これはお見事! 魔法の杖の機能を上手く使ってピンチを(しの)いだーっ!〉

「すすす、すごいわね、ひ、ひひ、姫嶋さん……!」

「あはは……」


 それにしても、どうしたっていうんだ? いきなり力が抜けるだなんて……。まさか妨害? でもいったいどうやって?

 怪しいのはやはり柴田だが……。


「あわわわわわ……ひえぇっ!」


 こんな状態で妨害できるとは思えないんだよなぁ。それに妨害魔法なんかあれば試験官や愛恋(あこ)さんが気づかないわけない。

 だとすると、俺の不調? あるいは魔法の杖が……いや、緊急魔力放出(サブタンク)はちゃんと機能したしな。

 色々考えてるうちにホバリングの試験は終わり、飛行試験に移る。


「姫嶋さん」

「はい……!?」


 声を掛けられて振り向くと、いつの間にか花織が目の前にいた。ふわりといい匂いがする。


「このまま試験を続行することはできません」

「どうして!?」

「どうして? あれだけ不自然で不安定な動きを見て心配にならないわけがないでしょう。リネさんに診てもらって、問題無かったら試験に戻ってください」


 そうか、心配してくれてたのか。そりゃそうだよな、明らかに様子がおかしかっただろうし。


「分かりました」


 素直に応じてリネさんのいる保健室みたいな部屋へと向かう。


*   *   *


「すみませーん」


 ノックして入ると、誰もいなかった。


「あれ? おかしいな、留守かな?」


 それは困る。一刻も早く大丈夫というお墨付きを貰って試験に復帰しなければならないのに。


「あのー、リネさーん? いませんかー?」


 ――と、奥からなにやら声が聞こえる。


「リネさん?」


 近づいて行くと、明らかに怪しい声が漏れていた。


「……んぅ、あ、……んぁ、はぁん……」


 ……おいおいおい、マジか? ちょっと待て。マジか?

 なにやら変な声が聞こえた気がしたが?


「や、だめぇ……そこは……ぁあん! もっと優しく……してぇ?」


 俺は今ほど女の体で良かったと思ったことはない。元のおっさんでこんなの聞かされたら前屈みになってしまう。


「激し……! あん、はぁん!」


 というかこれ、色々な意味で大丈夫なのか!? ここまでお色気ほとんど無かったのに、ここに来ていきなり天元突破してるぞおい!?


「はぁ、はぁ……。すごく良いわぁ」


 終わったようで、リネさんは俺がいるとは気づかず奥の部屋から出てきた。


「ふぅ……。ん?」


 バッチリ目が合った。やや白衣が着崩れて汗ばむリネさんは、「か、かえでさん!?」と一瞬パニクる。


「ど、どうしてここに?」

斯々然々(かくかくしかじか)で診てもらいに来たんですが……」

「ああ、そうなのね! それは大変! すぐ準備するから待っててね!」


 慌てて準備するリネさんをよそに、奥の部屋をチラッと覗いて見る。しかし残念なことに見えづらい角度でよく見えない。


「じゃあ、診てあげるからベッドに横になってね」


 言われた通り横になると、超音波(エコー)検査で使うような機材を俺に向けて緑色の光を当てる。


「うーん……特に異常は無いわね」

「本当ですか!」

「他の魔法少女には異常無かった?」

「はい。私だけです」

「ふーん?」


 なにやら考え込むが、すぐに顔を上げて「まあいいでしょう、問題無いわ」と言ってくれた。


「ありがとうございます!」


 お墨付きを貰った俺はすぐに試験に戻ろうとして、「ちょっと!」と呼び止められた。


「なんですか?」

「……ないでね」

「え?」

「だから、……言わないでね、さっきのこと」


 そんなモジモジしながら言われたら俺がナニかしたようじゃないか。


「大丈夫ですよ、私はなにも見てませんから」


 にっこり笑顔で言うと、ギュッと俺を抱きしめて「ありがとう」と耳元で囁く。脳が溶けてしまう……。

 あえて深くは追求しなかったが……いったい相手は誰なんだろう?



To be continued→

最後まで読んで頂いてありがとうございます。

応援よろしくお願いします。


なんとか無事にホバリングをクリアした楓人ですが、リネさんの怪しいナニかを聞いてしまった。いったいナニをしていたんでしょうね……。

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