『卓上のピアニスト』(仙台弁)
ボブのお気さ入りは
何がど云うど、
キッチンテーブルの上の
ママの宝物だった。
「ママ。」
「なに、ボブ。」
「えーどね。」
「何がしら。」
「これ、良い。」
「あら、まだピアノ。」
「良いべ。」
「すっぺがねぁーわね。」
ボブ指さしたのは、
テーブルの、はしっこに置いである、
一台のおもぢゃでした。
おもぢゃどいっても、
ママの大切な青いピアノのおもぢゃ
だったのだ。
ピアノのイスには、
赤えほっぺの少年の
ピアニストがすわってる。
んでも、ママどの約束は
ボブ自分では、
けっしてさわらねぁー事。
なすてって、
それはママの大事な
宝物だがらだ。
「いぐわよ。」
「うん。」
テーブルの上では
にわがに、
ぶどう会がはじまった。
さで、
曲目は何だべ。
「ワルツ」でした。
ショパンの大好ぎな。
ワルツだ。
ママ大事そうに
青いピアノを手さ取るど
うらがわにある「ゼンマイ」を
ぎりぎり回し終わり、
テーブルさ置ぐど、
真っ赤なほっぺの少年は、
丸いまなぐをぱぢぐりどさせで、
ぴくりど、動ぎ
ピアノを弾ぎ始めだ。
テーブルの上では、ボブのおもぢゃや、
ママの大切なお人形だぢが、
クルクルど踊りはじめだ。
まるで夢の世界だ。
「はっはっはっはっは。」
「はっはっは。」
おもしぇぶどう会だ。
そのどぎ、かいねこのミミー
おどろいで、テーブルの上さ
飛び上がった。
「あ、待って。」
おもしぇぶどう会は中止だ。
ねこのミミーには
ぶどう会の楽しさは
わがらねぁーでした。