第52話 才女、動き始める
お待たせしました。
最新話更新です。ちょい短い(汗)
いよいよと言うべきか私たちは行動を開始した。
実際に色々と歩き回りながら街を見てきて欲しいとマルスに言われてのことだ。
マルス曰く、こちらが嗅ぎ回っていることに関しては、恐らく相手方も承知のはずとのこと。
既にマルスたちはこの街に一大拠点が作られているだろうと確信している。
つまり、それほどまでに調べ上げているわけで、ここに作ろうなんて相手が余程の間抜けでない限り、警戒して当然だ。
故に、昨日着いたばかりの四人には周囲の観光をしつつ、幾つかのポイントを探ってきてほしいとマルスは言う。
「こうして面と向かって会談をしているというのに、私たちの関与は疑われないのかしら?」
「まぁ、まず疑われるだろう。一応、アルベリヒ達ギルドメンバーとウチの諜報部が同時に調査を開始する。
そうすれば、明らかに調査している方に人手が集められるのは必然と言える。
怪しいポイントも全てではなく、観光スポットの周辺に絞った。指示したルート通りに移動すれば自然と確認して欲しいポイントを通ることになる」
全部で四ヶ所は回らないと行けない。
他に観光場所を六ヶ所ほど。これも観光しているだけと見せかけるためってことでしょうね。
案内人として一応、殿下が付いて来てくれるみたいだし、相手方も手を貸しているかも知れないと疑う程度に収まるはず。
そうすれば、こっち側に割かれる人数は比較的少なくて済む。
相手がどんな感じかは想像できないけど、少人数なら十分私たちでも対処できるはずよね。
「分かったわ。観光は最初からしたいと思ってたし、丁度いいわね」
「では、出発前に私からはこれを」
そう言ってアルベリヒが渡してきたのは、アルベリヒ達の胸にある紋章と同じものが柄に刻まれた短剣だった。
どうやら、この紋章はギルドの紋章のようだ。
「既に幾人もの同胞が人に紛れて潜伏しています。
その短剣は同胞であれば近づくだけで認識出来る特殊な加工がしてありますので、きっと、サイカ殿の力になってくれるはずです」
「ありがとう。でも、これって私が持ってないと駄目なのかしら?
流石に刀と銃を装備している状態だから、短剣も――ってなると邪魔なんだけど……」
「なるほど。でしたら、マモル殿が持つと良いでしょう。
その短剣の刻印は精霊の加護があって初めて力を発揮しますから、精霊契約をしているお二人のどちらかが持つようにしてください」
妖精族らしい仕掛けではある。
だって、精霊契約をしているということはすなわち、精霊と親密にある人間を指すわけで、この短剣の力を発揮できるということは、精霊や妖精に大して好意的に接してくれるという証明になるということなのだから、助っ人の私たちからすれば物凄く便利なアイテムではある。
ただし、常に発信機を身に着けているような状態になるから、元の世界で言うところのハッキング的なものに会えば、たちまち私たちの居場所がバレるという危険性もある。
一長一短かもしれないわね。
† † †
一通りの説明を受けた私たちは外へと出る。
屋敷の外へ出れば、まだ早い時間にも関わらず多くの人が道を行き来していた。
貿易都市ともなれば流通が激しいのも当たり前。人通りが多いのも必然かもしれない。
とはいえ
「これだけ人通りが多いのに人身売買もとい妖精売買が行われているっていうのも信じられないわね」
「でもでも、サイちゃん。アニメとかだとこんなところでするはずがないっていうところでやってるよ?」
「確かにそれが出来たらこの上ない隠れ蓑になるのは事実よ。
でも、現実には証拠も残さず上手いことやろうとすると難しいもの。
いざ見てみると信じられないものだって思っただけ」
賑やかな街を見渡す。
笑顔な彼ら彼女らの中に敵が潜んでいると思うとゾッとする。
「考えても仕方ないわね。
取り敢えず、最初のスポットに行きましょうか」
私たちは地図通りに進んでいく。
最初に向かうのは昨日も通り抜けた門のところだ。
今更とは思ったものの、昨日は馬車だったし、自分の足で見に行くのも悪くない。
この門はノアークで唯一の出入り口だそう。
巨大な門の左右には万里の長城みたく長い城壁が続く。
上は衛兵が巡回していて、門以外から出入りするのは難しいように見える。
変わっていることと言えば、この城壁は街を守るためのものでもあるが、それよりも物の行き来を制限するためのものであるということでしょうね。
ここは貿易都市であると同時に商業都市でもある。
商品とは珍しい物ほど高く売れ、多く流通する商品ほど安い。
珍しいものとは、この世界では聖遺物や歴史的遺跡の出土品などが該当するが、中には没落した貴族のお宝なども取引されているのだとか。そして――
「違法物だな。カルディアの場合は陛下は勿論、殿下やマルス殿もアクティブに動いてらっしゃるから少ないが、他国では違法取引は非常に多いと聞く。
貿易都市ともなると都市内に入り込むのは仕方がない。
問題はその違法物を国内に広めないこと。
そのための門がコレというわけだな」
「ずいぶんと詳しいのねアビス」
「さっきも言ったが貿易都市だからな。珍しい薬草とかも手に入るんだよ。
トトの爺さんによく連れてこられて色々と聞いているからな。
現住人ほどではないにしろ、ある程度は知っている」
「ちなみに、その時トト顧問は?」
「移動が面倒だと家でふて寝してたな」
流石、トト顧問。
それであれだけ知識があるのだから不思議だ。
生まれつきの天才なのかも知れないわね。
門に近づくと昨日とは違う衛兵がいた。
まぁ、これだけ大きな門ともなると、一日立ってるだけでも辛いだろうし、日替わりなのも当たり前なのかとも思う。
実はこの門が観光ポイントであるのは勿論だが、マルスに指定された偵察ポイントでもあった。
万全の体制を敷いているつもりではあるらしいのだけど、外の人間から見てどう見えるか意見が欲しいらし。
確かに、一つ気になることはある。
あの衛兵。昨日の衛兵とは違い、何組かの馬車とはやたら親密そうに見えるのよね。
しかも、その馬車は例外なく大通りから外れる。
長年仕事をしていれば顔も覚えるだろうし、親密になるのも仕方がない。
とはいえ、親密そうな馬車が全て大通りから外れるのは如何なものなのだろうか?
取り敢えず、気には止めておこう。
(……?)
ふと感じた視線に振り向くが何もない。
気の所為だろうか?
確かに視線は感じた。警戒ともまた違う感じではあったけども、何か品定めをするような感じの視線だ。
今の時点では敵か味方か分からないが、少し周りを警戒し始めたほうが良さそうだ。
ざっと見た感じでは敵勢力が来ている様子はない。マルスたちの陽動作戦とも言えないけど、調査の影響でしょうね。
だけど、どこに潜んでいるか分からない以上、油断は出来ない。
昨日は感じなかったきな臭さを肌で感じ、私の中で少しずつ警戒心が上がっていくのを直に感じていた。
皆さん、こんにちは。初仁です。
3週間ほどお休みいただいて、かなり久々の更新です(汗)
就活の書類作ったり、YouTubeでの活動を再開していたりと意外と時間が足りない12月でした。流石、師走。
未だに就活終わらずフリーターロードまっしぐらの私ですが元気です。
来年も更新頑張ります。
とはいえ、次の更新元旦に出来る気がしないので、一週遅れて8日からにします。
その間、カクヨム版の更新はしておきたいなぁと思ってますので、時間ある方は覗いてみてください。
なお、YouTubeは最近頻繁に更新中。そこそこ長い動画ではあるので、作業中に流したりしてください。
あと、新作で書いている「近代魔術のレッツェルシーカー」「黄昏の巫女と愚かな剣聖」も宜しくお願いします。
「二度目の人生は平穏に過ごしたい!」も実は昨日更新してます。
色々書いてて頭こんがらがって来てる感がありますが、来年もどうぞお付き合い頂ければと思います。
では、また次回。




