第51話 才女、妖精族と会う
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貿易都市ノアークはカルディア王国が世界に誇る、世界最大の貿易港と流通を持つ都市だ。
王都よりも遥かに多くの物品が揃い、各地の珍しい物も運ばれてくる。
また、観光地としても魅力があるため、外国からの旅行者は勿論、カルディア国内の各地から人が訪れる。
多くの店に溢れたマーケット街は区画整理を行っており、長安で用いられたような構造をしている。
道幅も多くの荷車が通れるようにと、裏通りも含めてかなり余裕を持った造りをしていて、それだけでノアークがどれだけ広い土地に恵まれているかが伺える。
その一方、犯罪抑止のためにセキュリティが敷かれており、街への入場も色々と制限が設けられている。
しかし、それで全ての犯罪を防げているかと言われれば、どうしても抜け穴が出来てしまっている。
そして、今まさに私たちが直面している問題。それが――“妖精売買”
私たちはこの問題に立ち向かうことになった。
「さて、捜査を開始する前にサイカたちには会って欲しい人物がいる」
「会って欲しい人物?」
「ああ、彼らは妖精と呼ばれる存在を束ねる者たち。
俗に妖精族と呼ばれている――入って来い」
マルスがそう声を掛けると、部屋に二人の男女が入ってきた。
二人とも白を基調とした服を着ている。
フラン同様、どこか軍服のような雰囲気もあるピシッとした服装だ。
男の人は飾緒を付けていて、二人とも首には紋章の入った留め具を付けている。
「彼らが?」
「初めましてサイカ殿。私の名前はアルベリヒ。
妖精族を束ねるギルドの魔術課で長を務めています。
以後、お見知りおきを」
「アルベリヒ?」
アルベリヒと言えば、エルフの王として知られる名前だったはず。
後にこの名前はオベロンとして継承され、シェイクスピアの戯曲「夏の夜の夢」ではエルフの王にして、妖精王という存在として描かれているのだとか。
よくよく考えると、映画化とかもされてるって聞いてるのに見たことないわね……
それに、アルベリヒは魔術師としての側面も持つはず。
とても偶然に付けられた名前の様には思えない。
「どうやらサイカ殿はお気付きのようですが、私の名付け親は皆さんと同じ世界の人間です。
両親が魔術師であったことから、私も魔術師になることを願って付けた名前だそうです」
「見た目がエルフなのは? 流石に出来過ぎだと思うのだけど?」
「両親共にエルフと精霊の間に生まれた妖精でしたので、必然的に私もエルフとしての種族的特徴を受け継ぐことになりました」
人と精霊の間に生まれた存在が妖精と呼ばれるように、妖精と妖精の間に生まれた存在も妖精となるらしい。
また、人と精霊の間に生まれた妖精が人の姿をしているように、エルフと精霊の間に生まれた精霊はエルフの姿をしているのだとか。
「それなら良いのだけど……私は段々、妖精と精霊とエルフの違いが分からなくなってきたわ」
私は幸いと言うべきか、エルフのアル司祭に、精霊のフラン、そして目の前の妖精と全てに会っている。
精霊視を使えば三者がまるで違う存在だと言うことは嫌でも分かる。
だけど、理屈という意味で理解できているかと言えば、全く理解できていない。
三者の違いとは何なのだろうか?
「エルフの祖、ハイエルフと呼ばれる存在は神格を得ていると聞きます。
故にエルフたちも多くの才能と知恵を持つと。
精霊はこの世界のバランスを保つ存在であり、神がこの世界で生きる全ての者へと使わした神の使いといったところですね。
そして、妖精は今更言うまでもなく、精霊の世界のバランスを保つ力と生物の魔力を生成する力を半々に受け継いだ者を指します」
「世界のバランスを保つ力?」
精霊がそういう存在だとは聞いたことがない。
私の認識としては、精霊とは常に人の側にいる霊的存在。
正直、微生物と一緒でそこにいて当たり前の存在としか思っていなかった。
だけど、聞く限りではそういう訳でもないみたいね。
「火、水、土、風と精霊には四つの属性と呼ばれるものがあります。
彼らはそれぞれの属性を支える存在であり、人の魔力を得て干渉する力を持ちます。
故に、精霊魔法と呼ばれるものがあり、力を貸してくれる霊的存在としての認識が強くなっています。
しかし、実際には自然界の魔力を調整し、魔力災害が起きないように世界を保つなんて仕事をしていたりします」
「となると、妖精族も?」
「私たちもある程度であれば、不穏な魔力の流れに対し干渉することが出来ます。
我々は妖精族で構成されたギルドを立ち上げ、各地の魔力測定を名目に渡り歩き、虐げられた同胞を助けることを目的として活動しています」
それでマルスに協力要請を出したのかと納得する。
流石に相手が悪いと分かっていても、領主の力もなしに好き勝手は出来ないものね。
「でもいいの? 私たちが妖精や精霊を虐げない保証はないけども?」
「ご冗談を。貴方の持つ力を見れば、如何に精霊たちに愛されているかは分かりますよ」
彼の目を見ると目の色が変わっていた。
それに、私が押さえつけている力を見れるのだとすれば……
「まさか、精霊視?」
「ご名答です。妖精族だとさして珍しい力でもありませんが、人族の皆様には珍しいかも知れませんね」
「いやいや、アルベリヒ。サイカも精霊視くらいは出来るぞ?」
アルベリヒはその事に気付いていたのか、私をより興味深そうに見ている。
それに対し、もう一人の女性は驚いた顔をして目を見開いている。
「なるほど、今代の聖女は我々の持つ記録に残る歴代の聖女たちと比べて、圧倒的な才能を持っているようだ」
「記録ですって?」
「ええ、記録です。カルディアにもありますよね?」
そんなあって当たり前でしょ?とでも言いたげに言われても、ないのだから反応に困る。
私の反応を見て本当にないと悟ったアルベリヒは呆れたような声を上げる。
「まさか、本当に残っていないとは……
流石に問題があるのではないかと思うのですが?」
「私もそう思うわ」
そのせいで、歴代の聖女が何をしてきたのか、勇者はその時どうしていたのかが全く分からないのだ。
そこらへん、私がいる間にどうにかしておかないといけない。
「ところで、その記録って私も見たり出来るのかしら?」
「無理ですーーと言いたいところですが、サイカ殿は聖女ですし、力もお持ちで、勇者と一緒に行動をしておられます。
例外として認められるよう、上層部には掛け合ってみましょう」
「まぁ、そう簡単にいかないわよね。よろしくお願いするわ」
聞けば妖精族のギルドは全て妖精族で構成されているらしい。
妖精族の保護を目的としているため、表立ったギルドとして知られたくないのだとか。
実際、便宜上の問題でギルドと呼称しているだけで、各国にギルド設立申請を行なっているわけではないみたい。
慈善事業団体みたいな?
今回の件はすでにノアールに流通拠点が出来ているかも知れないという、妖精族側からすれば絶対に破壊しなければいけない重要案件だ。
そのため、幾人かの構成員を呼び出しているらしく、本件には領主家であるヴェナー家と、私たち王宮組と、妖精族ギルドの少数精鋭でことに当たるとのこと。
他の妖精族にも会えるのかと思うと少しワクワクしないこともないけど、彼らは必死に同胞を救おうと四苦八苦しているのだから不謹慎ね。
私も精霊と契約している者として、この件は見逃せない。
出来る範囲内で彼ら妖精族に力を貸そうと心に誓った。
皆さん、こんにちは。初仁です。
まずは、宣伝を一つ。
カクヨムコンテスト4が始まりました。
「才女の異世界開拓記」「近代魔術のレッツェルシーカー」を応募しました。
カクヨム版はなろう版とは一味違った出来になっていますので、応援していただけると助かります(読者選考のシステムが未だに分かってない(汗))。
さらに、昨日よりカクヨムでのみ「黄昏の巫女と愚かな剣聖(https://kakuyomu.jp/works/1177354054887698763)」という完全新作をもう一つ投稿開始しました。
もちろん、カクヨムコンテスト4に応募しています。
こちらも是非、よろしくお願いします。
続いて、ネーミングについて雑記。
アルベリヒと聞いた時に思いついたのが「閃の軌跡」シリーズに出てくる地精の長アルベリヒなわけですが、やはり、ネーミングにこういうのをそのまま引用するのは常套手段なんですかね?
ガンダムシリーズとかだと、かなり出てきます。
SEEDのアークエンジェル、ドミニオンを始めアグニとかね。
OOはもっと凄いかも。興味あったら調べてみてください。
では、また次回。




