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才女の異世界開拓記(なろう版)  作者: 初仁岬
貿易都市ノアーク編
55/59

第50話 才女、監査の目的を聞く

大変お待たせしました。最新話更新です。

今回は……少し胸くそ悪い話かも知れません。


ブックマーク登録と評価ありがとうございます。

まだの方は是非、よろしくおねがいします。

誤字報告が無効になっていたのも有効化しました。

誤字多いので、気付いた方はご協力お願い致します。

 ヴェナー卿と会い、歓迎会を開かれた翌日。私たちはヴェナー卿の屋敷で一泊した後、一つの部屋に案内されていた。


「おはよう。昨日はゆっくり休めたか?」


「お陰様でね。そういうマルスは少し機嫌が悪そうね?」


「ちょっと面倒事が増えた。逆に一斉検挙するチャンスにはなったものの、時間が掛かりそうなんだよ」


 昨日までの予測から少し軌道がズレたようね。

 とはいえ、天気予報があくまで予測であるように、彼の戦術予報もあくまで予測でしかない。

 未来予知なんて力があればまだしも、誤差範囲内で予測通りに事が進んでいるのは、目を見張るものがあると私は思う。


「それで面倒事って?」


「今回の相手はタチが悪い。妖精売買を行おうとしている」


「……妖精売買?」


 やはり独学だとどうしても抜けが出てしまう。

 精霊とは別に妖精なんてものが存在するとは思いもしなかった。

 私たちの世界の広義では草やら花やら、物体に宿る精霊みたいなイメージで知られるわけだけども、中国の方では化け物の一種とされていたようだ。

 果たして、この世界ではどんな存在なのかしら?


「妖精とは人の身でありながら、一部が精霊化した者を指す。

 サイカも精霊契約をしたと殿下から聞いているが?」


「ええ、最近確かにしたわね」


「普通の精霊では難しいが、最上位の精霊は能力を無視すれば人間と変わらない。

 人と精霊の間に生まれた子供が成長すると妖精となるわけだ。

 妖精は精霊と違い、精霊としての力を持ちながら、自ら魔力を生成することが出来る」


 最上位精霊と言えど、契約者の魔力があって初めて顕現が出来る。

 妖精はこの世界に精霊たちが顕現するのに必要な魔力を、自ら生成することが出来る。

 ということは、人間と精霊のいいとこ取りをした存在ということね。

 ただ、マルス曰く、他にも事例があるにはあるらしい。

 精霊の祝福を受けた人間が精霊化すること。

 この現象を“昇華”と彼らは呼称しているらしい。

 具体的には本来死ぬはずだった人間が、精霊に救われ生き延びた場合に見られるのだとか。

 もっとも、事例は非常に少なく、精霊に命を救われるのは正真正銘の聖人だけみたいだけどね。


「だが、そんな妖精にも弱点がある」


 そう言ったのはアビスだった。

 人それぞれみたいだけども、国のトップからは妖精は人間の上位種の様に捉えられていて、精霊たちとの橋渡し役として、私たちと同様に丁重に扱われているらしい。

 とは言え、妖精となった者も多くの不安を抱えている。

 半分が霊体といった不安定な存在ゆえ、例えば何らかの原因で魔力を生成出来なくなった場合や、精霊としての力が増大する中、魔力生成量が徐々に足りなくなるといった場合にどうなるのかといった内容だ。

 そのためアビスは、医師兼薬物研究員としてではなく、魔法研究者の一人として研究協力をお願いされたことがあるのだとか。


「実際に会ったことはないが、魔力の減衰が原因で死に追いやられた者も知っている。

 ただまぁ、妖精とは半分が精霊だからな。

 その時はたまたま、恋人が膨大な魔力を持っているとかで、サイカたちの精霊契約の時にもいた王国の魔法師を集めて、二人を擬似精霊契約でパスを繋ぎ、恋人から魔力供給をすることで事なきを得たと聞いている」


「アビス殿の言う通りだが、その逆も存在する。魔力が多すぎて暴走するケースがな」


「それって、どういう事? 普通に魔力を押さえ込めばいいだけじゃないの?」


 ほら私だって日頃から魔力と霊力を抑え込んでいるわけだし?

 魔法を行使するには魔力の制御も必要になってくる。

 別に魔力を抑えることくらい何ともないと思うのだけど……

 それを驚いたような目で見ないで欲しいのだけども?


「魔力を抑えるのは言うほど簡単ではないはずだ」


「え゛っ!? 私、結構重点的にアル司祭に仕込まれたんだけど?」


「アル司祭は魔力操作に長けたエルフ族の出だし、サイカは元々のポテンシャルが高い。

 普通は数日であの人の基礎訓練を卒業できない。ミナカタさんですら頭を下げるほどだからな」


 知らない間に相当な訓練を強いられていたみたい。

 エルもそれを知っていたのか、アハハハと苦笑いしている。

 そう言えば、私だけじゃなくてエルもある程度は訓練を熟しているはずよね?

 そんなに大変なのかしら?


「サイカのポテンシャルが高いのは分かったが――妖精たちは人間が魔力を制御するのと違って、体の半分が精霊ということに問題がある」


「ああ……私と違ってオンオフで抑えればいいって訳じゃないってこと?」


「そういうことだ。膨大な魔力の大半を抑えつつ、自身を保つための魔力は使わないといけない」


 確かに私も霊力と魔力を分けて抑えたりは出来ない。

 どうしても膨大な魔力を使おうとすると霊力が溢れ出てしまう。

 もっとも、大量の霊力を使う機会はまずないから垂れ流しでも良い気がするのだけどね。

 だって、神聖魔法も霊力を混ぜるだけで、基本は魔力で構成されているわけだし、変に霊力を混ぜ込みすぎると疑似聖剣というか、霊刀モドキが出来たりしてしまうから多用は禁物かもしれない。


「それで、妖精については分かったけども妖精売買って?

 まさか、人身売買の妖精版ってこと?」


「そういうことです。寧ろ、下手をすれば人身売買より酷いかも知れません」


「人身売買より酷い?」


「人身売買と違い、妖精の場合は女性のみが取引されます。

 父上も対策をあれやこれやと練っていますが、すぐに対策されてしまうという状態が続いています」


 何となく悪寒が走った。

 それは、恵子ちゃんも同じだったようで、不安そうな表情を見せている。

 ルカやエルは知っているんでしょうね。悲痛そうな表情をするものの、驚いている様子はなかった。


「少なくとも、この世界で行われている人身売買の主な目的として多いのは労働力だ。

 カルディアは国王陛下があの通り大らかな方ということもあってあまりないが、他国では平民差別が酷いと聞く。

 人身売買によって得た人材に劣情を催すことはないのだそうだ。

 平民を下民と考えているような連中だ。汚れた血が混じるのが嫌だとか考えているんだろう。

 だが、妖精は違う。

 妖精の子もまた大分弱まるとは言え、精霊の力の一部を有している。

 つまり――」


 良くて性奴隷、悪くて苗床と言ったところね……

 自分は高貴な人間だと勘違いしている(・・・・・・・)阿呆どもに――いや、やめておこう。想像するだけで吐き気がする。


「世の中には自分が妾の子だと知らずに一生を過ごす者もいると言う。

 生まれてきた子の母親を正妻の子として育て上げれば、一族に反映をもたらす優秀な魔法師になるということだ」


「でもそれって妖精だったら、男の人でもいいってことにならないの?」


 そう聞いたのは恵子ちゃんだった。

 昨日の今日だ。こんな話を聞かされれば男性恐怖症になりかねない。

 結末がどうであれ、“妖精だから”という理由であれば、気持ちとしては平静を保っていられる。

 しかし、ことはそう甘くない。

 ヴェナー家で把握している範囲では、新興貴族や没落貴族に多いらしい。

 相手は本当の意味で高貴な貴族と違い、裏技を使ってのし上がろうとする下郎だ。

 彼らにとって妖精は道具でしかない。

 確かに理由だけ見れば男の妖精でも問題はない。

 問題なのは寧ろ繁殖力だろう。

 一度妊娠すれば、次の子を作るには間を空ける必要がある。

 つまり、人が妊娠するのは効率が悪い(・・・・・)

 だけど、苗床に産ませる分には、次の苗床があるのだから、間髪入れずに次を用意できる。

 壊れれば部下の家に売り払えばいいし、借金をして手に入れたとしても、将来的に繁栄するのであれば投資でしかないとそういうことなんでしょうね……

 そうやって、自身の実の子として育てる面子と、分家の予備の面子、優秀な臣下を揃えれば大貴族になるのも確かに夢ではない。

 大体が心半ばで見つかってお縄に付くそうだけども、残念ながらその家からは既に廃人になってしまった妖精が見つかることが大抵なのだとか。


「そう言えば、俺が以前、研究に協力していた時に聞いていた話だと、人、精霊、妖精の順に妊娠確率は低くなるらしい。

 あまり言いたくはないが、廃人になっていた妖精は中々妊娠しなかったせいで、毎晩なんて生易しいものじゃない。朝から晩まで毎日相手をさせられていたのかも知れない。

 次がいるなら全員で回せばいいって連中は考えているんだろうからな」


「それで、そんな酷い目に合わせようとしている連中を今回は検挙するってこと?」


「本当はそうなる前に検挙しないといけないのだが、実際のところ、全部をカバーしきれていないのが現状だ。

 確定情報ではないが、状況から見てノアークに大規模な拠点を用意しつつあるかも知れない。

 先日、ウチの諜報員が海辺で黒い影を目撃したらしいからな」


「黒い影?」


「海中を進んで消えたらしい。

 幸い、港を出て行ったのではなく、港に近づいてきたそうだ。

 出ていかれる前に正体を突き止めなければならない」


 それって潜水艦とか?

 実際、妖精を運び込むなら地下道やら海中を使うしか方法はない。

 あるいは、船で堂々と運びつつ、ヴェナー家の中に間者を紛れ込ませて監査を誤魔化しているか。

 どちらにしても意外と面倒なことになりそうだと思いつつ、そんなことを平然としている阿呆共にここは一発、女性代表として物申してやろうと意気込んだ私だった。

皆さん、こんにちは。初仁です。

再三の延期、本当にすみませんでした。

遂に50話です。

ちなみに月曜日は「ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生」を見に行ってました。

感想は多分、これが公開される頃には活動報告に上げていると思いますので、お時間ある方は覗いてみてください。


人身売買。

こういう貿易港が登場する話だとありがちな気がしないでもないですが、ストーリー展開として妖精を登場させたかったのと、バトルというよりも駆け引きになるであろう展開を書いてみたかったという挑戦心から、ノアークでは妖精売買という内容で書いていくことに決めました。

何度も言いますが、読者の皆様の男女比率を知らないので、あからさま過ぎる表現(強●、レ●プ等々)とかは避けましたが……

まぁ、そういう事件や問題が存在するってだけで、男性諸君にはサービスシーンになりかねない様な内容はチラッとも出てきませんので、女性の皆様も安心して読んで頂ければと思います。

ほら、私が購読している大人の文学少女向けレーベル・富士見L文庫の「榮国物語 春華とりかえ抄」にも伽って表現があるし、問題はないと思いたい……

いや、最近、この手の表現多くて信用出来ないかも知れないけど(汗)


というわけで、また次回。

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