第39話 見習い侍女の手記【Ⅲ】
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気がつけば14万文字突破。意外と書いてるなぁ……
引き続きよろしくおねがいします。
私は一つ見誤っていたのかも知れない。
サイカ様の才能は非常識の塊なんてものじゃない。もはや、異端の領域に踏み込んでいる。
あの日、とても一人では持って来れないような量の本を部下の執事と共に部屋に運び込むと、昼に持ってきていた本を全て読み終えたらしいサイカ様がお茶を飲みながら待っていた。
流石にあり得ないと思い確認してみれば、どうやら本当に全部読んだ上で理解までしたらしく、執事の質問にことごとく正解していく。
流石に経験豊富な執事もこれには驚いたのか、目を見開いていた。
そこから一週間。
毎日、台車一台分は往復しないといけないようなペースでサイカ様は本を読み進めていく。
結局、今現時点でこの世界に関する知識量は生まれてからずっと住み続ける私は愚か、幹部クラスの貴族すらも上回ると思われる。
ニホンジンという血筋がそうさせるのだろうか?
しかし、他三人はそんな話を聞かない。
サイカ様や医療課のアシュレイ顧問がおかしいのだろう。
サイカ様に至っては天才児と呼ばれたアシュレイ顧問すら凌駕する。
本当に私って必要?
「ルカ? どうかしたの?」
そんなことを考えながら頼まれた精霊魔法に関する書籍を書庫へ取りに行ってると、後ろから声を掛けられる。
声を掛けてきたのは数日ぶりに会う侍女長だ。
「いえ、サイカ様が王様との謁見などで部屋から出ているので、今のうちに頼まれていた書籍を取りに行こうと思って」
「そう? なんか悩んでそうな表情だったけども……」
「まぁ、悩みはあるにはありますが、話してどうにかなる問題でもない気がします」
実際、話せば信じて貰えなさそうな状態なのは明白だ。
何か言ったところで意味を成さないだろう。
話せば楽になるという言葉があるのは分かっている。それは事実だとも思うし、そう出来るならそうするべきだ。
だけど、話したところで信じて貰えないと分かれば逆にダメージを負うことになる。
話すのが必ずしも正しいとは限らないのだ。
「なら良いのだけど、あまり溜め込みすぎないでね」
そう言って、侍女長は去っていった。
溜め込んでいるわけではない。
ただ、どうやってサイカ様と接するべきか悩んでいるだけだ。
実は欲望に負けて一緒にお風呂に入ってしまっている。
それが良いのかは分からない。
だけど、サイカ様は喜んでくれるし、前よりも親密になれたような気がする。
少なくとも、侍女としては間違っていても、サイカ様の従者としては間違っていないはずだ。
そうこうする内に書庫へと辿り着いた。
今回は精霊魔法に関する書籍ということで、流石に私には分からない。
確かに、幼い頃から精霊の住む川辺で生活していたために精霊魔法は使える――普通、侍女は使えないらしい――けど、感覚的に扱っている部分があり、参考になる資料を探すのは難しそうだと感じて応援を要請した。
その人は中にいた。
「お、来ましたねルカ・ルーザさん」
この人は我が国最大の戦力である武神の一角、ミナカタ。
この国で魔法に関してはミナカタさんの隣に並ぶ者はいないらしい。
実際、多くの功績を残す魔法師である一方、教育者としても優秀で、彼に師事する見習い魔法師は多いのだとか。
「よく知ってらっしゃいますね。流石、次代の侍女長候補ですね」
「いえ、まだまだです。たまたま、そんな話を聞いたことがあるだけで」
「そういう時は素直に褒められておくものですよ。
さて、早めに要件を済ませましょうか」
どうやら、この後はフィーラス殿下に呼び出されているらしく、王宮の本殿に向かわないといけないらしい。
ここでも、それほど多くの時間は取れないんだとか。
確か他の武神様は外に出ていて首都にはいないはず。
魔族でも現れてしまったのだろうか?
「? ああ、心配は無用ですよ。
今回は武神としてではなく、教師の端くれとして呼び出されているようですから。
恐らく、噂の異世界人さんたちの教育係でもお願いされるんじゃないですかね」
異世界人の教育係に武神を起用する?
普通であればありえない。
それほどまでに切羽詰まっているのだろうか?
しかし、私としては都合がいい。
「その異世界人の一人で私がお仕えしている方が、精霊魔法に関しての書籍を集めてくるようにと言ってまして……
私は父から教わったので書籍を読んだことがなく、どれが分かりやすかも判断できないのでご意見を頂きたいのですが」
「へぇ……来てまだ一週間程度のはずですが、すでに精霊魔法に手を出せる程まで知識を蓄えているということですか?
常軌を逸していると言っても過言ではないと思いますが――その表情を見るに事実のようですね」
「疑わないんですか?」
「まぁ、私も独学で精霊魔法を学んだ身ですから、独学で精霊魔法を学ぶこと自体は可能だと思っています。
ただ、ちょっとばかり早すぎるだけで……私も一ヶ月は掛かりましたからね」
やっぱり、異世界人の血はおかしいのではないだろうか?
一ヶ月でも異常に早い。
ましてや師事した相手がおらず独学でと来た。
意味がわからない。
「? 私、変なこと言いました?」
「いえ、ただ優秀な人は私に取って遠い人だなぁと思っただけです」
「ふむ……」
ミナカタさんは考え込んだ後、こっちに向き直ってこういった。
――私に話してみませんか?
確かに相手は経験豊富な武神様で、教育者でもある。
それに、サイカ様の凄さに関しても信じてくれた。
とはいえ、それはミナカタさんもまた、サイカ様同様に凄い人だったからに過ぎない。
侍女長や他の侍女仲間たちじゃ絶対に信じてはくれないだろう。
そんな相手に私の悩みを話して何になるのだろうか?
それとも、何か似た者同士だからこそ得られるヒントがあるのか?
分からないままに私は話すことにした。
「サイカ様は多分、私なんかがいなくても一人でなんでも出来てしまう方です。
果たして、私がそばにいる必要があるのかどうかと迷うことが多々あるんです」
「でも、サイカさんは貴方を頼っているんでしょう?」
確かに褒めてくれる。
今日だって「私が快適に過ごせたのは全て貴方の功績であって、あのお偉いさん方ではないわ。だから、胸を張りなさい。侍女としての仕事を全うした貴方にはその権利があるわ」と言われた。
だけど、その言葉に甘えきれない自分がいる。
「サイカさんは貴方に甘えてるんじゃないですか?」
「甘えてる?」
「ええ、お風呂に一緒に入ったり、一緒にお茶をしたり――実際のところ貴方以外に話し相手がいないというのもあったのでしょうが、貴方がいたおかげで寂しいと感じずに過ごせたということでしょう?
それに、人は誰でも人の温もりを欲しがるものですよ」
勿論、私もね。と付け加えるミナカタさん。
だとすれば私は――
「今のままひたすらに甘やかせばいいという事ですか?」
「甘やかすというよりは、常に味方でいるということでしょうね。
彼女は異世界人ですから考え方が私たちとは違うはずです。
客人ですのである程度の意見は聞き入れられるでしょうが、国政に関わってくればまた話は別です。
もし、国とサイカさんが対立した時に、一人でもこの世界の人間が味方になってくれればそれだけで心強いというものです。
だって、それは自分がこの世界と相容れないという訳ではないという証拠になるのですから。
だから、貴方は今まで通り――いえ、もっと親密にサイカさんを慕い、サイカさんを支えればいいんですよ。
サイカさんが自由に羽ばたいていられるように」
そう言われてみると、最近の私は随分とサイカ様に気を使っていたように思う。
ただただ気を使う侍女ではなく、言わずとも動ける良き理解者であれということ。
今の私は無意識に侍女としてサイカ様を慕っている。
それ自体は悪いことではないし、むしろ正しい姿とも言えるだろう。
だけど、私がなりたい従者の形ではない。
だから私は決心した。
一人の人間としてサイカ様を慕うと。
その行く末で彼女の良き理解者であり、良き従者であろうと。
「ありがとうございました。おかげで吹っ切れた気がします」
「そうですか? なら良かったです」
まずはあの人を理解することから始めなければ。
ならまず最初にしないといけないことは――
皆さん、こんにちは。初仁です。
ルカ編がようやくおわ――らないんですねコレが!
本当に、なんで本編でやってんだろ……
これはアレですね、デスマーチで言うところのExとか、デート・ア・ライブで言うところのアンコール的な本に纏められるような短編……とは言えないけど、サイドストーリー的なやつですよね(汗)
恐らく、あと2話くらいはルカ編が続くと思います。
正直、他で書くことにして掲載やめようかとさえ思いましたが、書き始めちゃったんで書きます。
エル編はそんなに掛からないと思うんですよね……(既に幕間1話で終わるはずのものが、本編3話で終わってないことは棚上げ)
というわけで、次回に続きます。
では、また次回。
―追伸―
また、おまけの脱線文章用意しました。
同時公開してるので、時間ある方は読んでみて下さい。
なお、本編の解説が少し入ってますが、読まなくても続きは読めます。
それと、カクヨム版の2話公開。一応、明日は3話も公開予定。
多少の加筆もあるので、時間ある方は読み比べでもしてみてください。




