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才女の異世界開拓記(なろう版)  作者: 初仁岬
見習い侍女とポンコツ聖職者
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第38話 見習い侍女の手記【Ⅱ】

ブックマーク登録ありがとうございます!

おかげさまで累計15000PV突破です‼︎

引き続きよろしくお願いします。

――この世界の本を用意してくれるかしら?


 最初聞いた時、私は耳を疑った。

 何せ、そんなことを言い出したのは昨日。つまり、この世界に来た初日なのだから。

 侍女長含め統括した人たちからはホームシックになるだろうから心のケアを――と念押しされていたのだ。

 しかし、フタを開けてみればホームシックになるどころか、好奇心に任せてありとあらゆる情報を吸収しようとしている聖女様改めサイカ様。


(これ、心のケアなんか要らないよね?)


 呆れるとはこういう事かもしれない。

 王宮で過ごしていれば予想外なことなど山の様に起きるが、想像を超えることは早々ない。

 この人は……色々と非常識だった。いや、非常識の塊と言った方が適切かも知れない。

 侍女である私にやれお茶の相手をしろだ、やれ一緒にお風呂入れだ、一緒にベッドで寝ろだと、おおよそ使用人に対して言わないことをさも当たり前かの様に言うのだ。

 一緒にお風呂と言われた時は正直、心が揺れたけども何とか耐えた。

 あの真っ直ぐ伸びる黒髪は触ってみたい。むしろ、手入れの全てを任せて欲しいとさえ思う。

 そんな葛藤があった日の翌日。

 サイカ様に言われて参考になりそうな本を集めるべく私は書庫へと来ていた。

 王宮の書庫は長い歴史を持つカルディア王国らしく大きなものになっていて、実に五階分を使っている。

 他国の貴重な書物も保管されているという噂だ。

 だけど、この広さを見るとあながち間違いではないのではないかと思う。

 書庫の中は本が焼けないよう窓ガラスはないから年中薄暗い。

 部屋の明かりは火精霊の力を借りて火を使っている。

 火の明かり自体は不思議ではない。

 異世界にはデンキという物があり、デンキュウという物を光らせて明かりを得ると聞くが、この世界ではランタンが主要の明かりであり、王宮内部は執拗に設置された精霊灯と呼ばれる装置で明るく照らされている。

 しかし、ここは最小限の明かりを点けているだけなため、家具から伸びる影が何処か不気味な雰囲気を醸し出している。

 ただ、中央まで歩いて行くと五階まで吹き抜けになった場所に出る。

 ここだけはどこか幻想的な、落ち着いた雰囲気があった。

 とはいえ、書庫が不気味なのは変わらないわけで、普段であれば誰も立ち寄らない。

 蜘蛛の巣がないのは定期的に清掃員が清掃しているからなのだろうけども、こんな薄暗いところをよく掃除するなとも思う。

 汚いところを見つけるのにも一苦労しそうな上に、借りる人が少ないという事は必然的に本を一つずつ出して掃除する必要があるという事。

 複数人でやるにしても途方もない時間が掛かりそうだ。

 そして、この書庫は司書もいない。

 一応、書物を管理はしているらしいけど、それは本好きの最高位精霊に任せているとか……

 希少な存在である最高位精霊にそんなことさせていていいのかとは思うけども、本人が嬉々として仕事に従事しているらしく、むしろ、仕事を取ると怒りそうな勢いなんだとか。

 そういった理由から、今日は誰もいないだろうと呑気に歩いていたのだが――意外な先客がいた。


「ベルモットさん?」


「おや? ルカか。久しぶりだな」


 ベルモットさんは食堂に勤務する料理人で、よくまかないを作ってくれる人だ。

 聞けば、たまにこうして新レシピのヒントを探しに来るらしい。


「ルカがこんな所に来るとは意外だな。

 侍女長の教育に飽きたか?」


「そういう訳ではないです。学ぶべきことはまだまだありますから。

 今日は仕事で来たんですよ」


「仕事?」


 ベルモットさんは首をかしげる。

 当然と言えば当然だ。

 私たち侍女が他の役職の者の動向を知らないように、料理人の彼が侍女の動向を知るはずもない。

 もはや、召喚儀式があったことすら知っているのか怪しいのに、私が聖女付きの侍女になったなんて、むしろ知ってるほうが不思議だ。


「召喚儀式のことは?」


「噂には聞いていたが本当なのか? なんでも四人も呼び寄せたとか……。

 教会の連中、張り切り過ぎじゃないか?」


 別に張り切った訳ではないだろうけど、確かにやり過ぎ感はある。

 気になって調べてみれば、彼らの持ってた魔石はかなり純度が高いものだったようで、希少価値のある非常に珍しいものだったみたいだ。

 そんなものを四つも使うとかやり過ぎと言わずになんと言うのだろうか?

 もしかしたら、この国にはそんなことも考えられない、あるいはそこまでしないといけないくらいの危機が迫っているのかも知れない。


「男性が二人と女性が二人の計四人が召喚されました。

 私はその内の一人、聖女様のお世話係に任命されて、(あるじ)から本を持ってくるように言われたんですよ」


「お、噂の殿下を殴った聖女さんか!」


「殴ってなんかいませんよ。サイカ様はそんな野蛮なことはしません。

 単に殿下の手をはたき落としただけです」


「えっと、すまん。俺には殿下に対して手を出した時点で両者の違いが分からないんだが……」


 そんなに冷静にツッコまなくても……

 言った自分が言うのも何だけども、確かに殿下に手をあげた時点で国の評価としては野蛮人扱いのはず。

 それなのに、他の三人とも違う完全VIP対応なのはサイカ様のカリスマ性が為せる技なのかもしれない。

 少なくとも私は陶酔している自覚がある。


「会えば分かります。サイカ様は纏うオーラが違いますから」


 ベルモットさんは「そ、そうか……」と言うと頭をかく。

 「ま、まさか洗の――」とか何とか、少しばかり失礼な気がすることを言われたような……

 それはそうと、早く本を集めて戻らないと。

 実は書庫に入ったのは初めてでよく分からない私は、何処らへんに探している本があるかをベルモットさんに聞く。

 言われた通りに行くと確かに文化史などの書籍があったが、歴史書はまた遠い所にある。

 上に行ったり下に行ったり……薄暗い中で本を探すのは中々難しい。

 途中で一回部屋へ本を運んだ後にもう一度来て続きを集め始めた。

 結局、食事の時間やお茶の時間に用意をする以外は、ずっと書庫で作業していた。

 夕御飯の前に部屋に本を届けようと台車を押すと凄く重かった。

 夢中になって集めすぎた事にようやく気付いた。

 さて、どうしたものかと考えていると、ふとあることを思い出す。

 聖女付きの侍女になった関係で、何人か自由に扱える部下を与えられたのだ。


(何で一人で探してたのかな?)


 今更になって思い出した部下の存在。

 一緒に探せばもっと早く終わっただろうと後悔しつつ、一人お目付け役に付けられた初老の執事を呼ぶ。


「どうかなさいましたか? ルカ殿」


「いえ、大した用事ではないのですが……

 思った以上に量が多くなったので運ぶのを手伝って下さい」


 「かしこまりました」と執事が運び始める。

 そう言えば、この人はもう随分と長いこと一人前の執事として仕事をしていると侍女長から聞いた。

 ということは、部下を動かして仕事をするなんて経験もしているはずと思い聞いてみると、やはり経験豊富だった。

 道すがら色々なことを聞き、よりサイカ様に快適に過ごして貰えるよう必死に勉強させてもらった。


「それだけ、向上心があれば問題ないでしょう。

 主殿もルカ殿の努力を認めてくださるはずです」


「そうですね――そうだといいのですが……」


「何か不安ごとでも?」


 不安というよりは自信がないという方が正しい。

 昨日一日見ただけでも分かる。

 サイカ様は私の世話などなくても一人でなんでも出来てしまうタイプの人だ。

 果たして私なんかで役に立つのかと……


「それを理由にルカ殿に強く当たられる方なのですか?」


「ち、違います!」


 冗談に聞こえない一言に思わず大声を上げて否定してしまう。

 少なくとも強く当たるような人は、同性の私に「一緒にお風呂に入ろう」なんて言わないはずだ。

 その答えに満足したのか彼は笑顔で頷いている。

 試されていたらしい。


「いい答えです。良き主に巡り会えたようですね。

 ならば、その主を如何に喜ばせるかだけを考えていればいい。

 結果というものは行動と努力の末に自ずと付いてくるものですよ」


 その言葉で少し緊張が溶けた気がした。

 主であるサイカ様の要望に全力で応えることも、私の仕事であるんだと。

 なら、まずはこの本を無事に届けよう。

 そういった小さな積み重ねがきっと、サイカ様を喜ばせることに繋がるのだから。

皆さん、こんにちは。初仁です。

書いてて思った事があります。


――これ絶対長くなる


いや、前回も思った事なんですがね……なんか予想以上に続きそう。

正直、別途話を用意した方が良かったんじゃないかとさえ思い始めてます(汗)

書籍換算だと36話の時点で10万文字超えているという事は一冊作れてしまう訳で、逆に言うと一冊分しか書いてないのにいきなり長々と脱線していいのかとも思う訳で……

まぁ、あまり気にしないようにしましょう。

という訳で、ルカ編まだ暫く続きそうです。

では、また次回。


追伸

16時にPVガっと増えたけど、更新時間勘違いしてないよね?

しつこい様だけど18時ですよ〜

よろしくお願いします。

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