第4話 才女、月明かりに照らされ……
「RelicCode」毎週月曜日 午前六時更新中。
「う〜ん……あ、私、寝ちゃった?」
「ちょっとだけよ」
皆が帰ってルカに食事を用意してもらっている頃、恵子ちゃんは私の膝を枕にして眠ってしまった。だけど、五分もしたら目を覚ました。
「皆も帰っちゃったの?」
「ええ。鎮は明日の準備、来斗は頭を冷やしたいそうよ」
「そっか」
少し寂しそうに見えるのは多分、気のせいじゃない。今日、全員で顔を合わせるまで多分ずっと不安を抱えていたんだと思う。
「サイちゃんってさ。幾つなの?」
「ん? 歳のこと?」
「うん」
「私は丁度、十八歳になったところね」
どうやら、恵子ちゃんは十七歳で学年も一つ下らしい。
「うー、一つ違いでここまで大人っぽさに差が出るかなぁ……」
「嘘は付いてないわよ? それに、恵子ちゃんはそのままで充分よ」
そう言って頭を撫でると目を細めて気持ちよさそうにする。今日、会ったばかりだけど、これ癖になっちゃうのよね……
多分、恵子ちゃんの髪質が手に馴染みやすいんだと思う。
「お待たせしました」
暫くして、ルカが食事を持って戻ってきた。
今日も料理長は絶好調らしい。非常に凝った盛り付けがなされていた。
「毎回、思うのだけれども、何かただの食事にしては豪華すぎない?」
「それは、召喚の総合統括者からサイカ様を隣国の要人並におもてなしするようにと言われているからでしょうね」
「それって、やっぱり怒ったせい?」
「ですです。ですが、あれは怒るに足る理由を持ち合わせていると私は思いますよ。使用人の立場ですのであまり声を大にして言えませんが、事実上、サイカ様やケイコ様はこの国に誘拐されたということですから」
その後、ルカから聞いた話によると、胃が痛すぎてその統括者さんが寝込んでいるらしい。
その内、御見舞をしに行こうと思う。王様はどうでもいいけど、統括者さんは可哀想だものね。
食事が終わってルカが片付けを始める。
私達と言えば後はお風呂に入って寝るくらいである。ここの部屋のお風呂は日本に居た頃の私では考えられないくらい広いので恵子ちゃんを誘って二人で入ることにした。
「恵子ちゃんって意外と胸があるのね」
「えぇ〜そうかな? サイちゃんも結構あると思うけど」
「身長差も考えるとどう考えても恵子ちゃんの方が大きいわよ」
着痩せするタイプと言えばいいのか、恵子ちゃんは隠れ巨乳だった。私も周りに比べればある方だと思うけど、恵子ちゃんのはそれ以上だ。
今は頭を洗ってあげているから触れないけど、体を洗う時にどさくさに紛れて触ってみようと思う。
「サイちゃんに洗ってもらうと気持ちいい〜」
「そう? 髪の毛が私よりも短いから洗いやすいだけよ?」
「私も短くしようかしら」って言ったら、途中から入ってきたルカに「毎日、私が洗いますから絶対に駄目です!」って言われちゃった。
確かに、ルカの手入れは私よりも遥かに上手なので、やってくれると言うなら、そのままでもいいかもしれない。
お風呂から上がれば後は寝るだけ。ちなみに、恵子ちゃんの風呂上がりの姿は色々と役得だった。
ベッドが広いからみんなで寝ようと提案してみる。恵子ちゃんは想像通り快諾。普段は遠慮するルカも「今日は恵子ちゃんもいるから」と何とか説得し招くことが出来た。
私が真ん中で両サイドに二人が寝る。たまには人の温もりを感じながら寝るのもいいものだ。
† † †
ふと目が覚めた。時間は……二時みたい。
一度、起きてしまうと中々寝れないと言う。私もどちらかと言えば寝れない方だ。
二人を起こさないようにベッドから降りるーーつもりだったが密着してたのでルカには気付かれてしまった。
「サイカ様どちらに?」
「目が冴えてしまったから少し夜風に当たってくるわ」
「でしたら、私もご一緒します」
「恵子ちゃんを一人に出来ないから出来れば残ってくれないかしら?」
「畏まりました」
少ししょぼーんとしているのは気のせいではないと思うが、恵子ちゃんが起きた時に誰もいないと不安を煽ってしまうので仕方ない。
部屋を出る時に「この季節でも夜は冷えますから」と渡されたストールを身に纏い部屋を出る。
向かうのは王様と謁見した部屋に向かう途中にあるバルコニーだ。
昼間に道を覚えたので迷うことはなかった。
けど、深夜は昼間の活気が嘘のように静まり返るのね。ただ、意外なことにバルコニーには先客がいた。
「あれ? 才華さん?」
「あ、ホントだ。どうした?」
最初に気づいたのは鎮で、すぐに来斗も気がついた。
「ちょっと目が冴えてしまったから夜風に当たりに」
「部屋にもバルコニーなかったっけ?」
「部屋には恵子ちゃんがいるから冷たい風で起こしてしまったら悪いでしょう?」
「流石に過保護すぎないか?」
「まぁ、良いじゃない。こうして二人に会えたんだから」
二人の方に近寄って一緒に空を見上げる。王都とはいえ夜になれば明かりも少なく、空には星や月が煌々と照っている。
「綺麗な月ね。ちょうど、満月みたい」
「だな。だが、あれは月じゃないみたいだぞ」
「そうなの?」
「うん。さっき通りかかった衛兵さんに聞いたら『ツキ? 何それ』って言われちゃった」
何でも、あれは夜煌と呼ばれているらしい。日中に照っているのも太陽ではなく日煌と呼ばれているみたい。
驚くべきことに夜煌は自身で光ってるもんだから、月のように満ち欠けはないんだとか。
こうなってくると、そもそも宇宙自体がこの世界に存在するのかも怪しくなってくる。
一応、この世界は精霊とか神様が実在するようなところだからね。案外、彼らの箱庭って感じなのかもしれない。
「それにしても、何で二人一緒にいたの? どうせなら食事くらい食べていけばいいのに」
「相澤と一緒だよ。目が覚めてフラッと来たら鎮の奴がいたのさ」
「僕は明日の準備してたら目が冴えちゃって……実はまだ寝てないんだ」
真面目そうな鎮が意外なほど小学生の遠足前みたいになっててちょっと可笑しい。
「このままじゃ、明日の授業で寝ちゃうわよ。そうだ。共同食堂に案内してくれないかしら?」
「いや、今、明日の授業で寝ちまうって言ったばっかじゃねーか」
「眠れない時は暖かい飲み物でしょ? さて、私をエスコートしてくださるのはどちらの殿方かしら?」
先頭にいた私が振り向いていたずらっぽく聞いてみたら、二人とも腕を差し出してきた。折角なので、二人の腕に捕まることにした。
上品さはないけど、ここは私達しかいないし、何より会ったばかりの私達が親睦を深めるには丁度いい機会だと思ったのだ。
バルコニーから十分ほど歩くと食堂に着いた。バルコニーまでは十五分ほどかかるので合わせると二十五分もかかることになる。
「意外と遠いわね。分かっていたことだけれども」
普段から運動しているのと、二人が私の歩幅に合わせてくれたから、それほど疲れはしなかったがそれでも遠いと思う。
ルカはもっと早く食事を運んでくるので、もしかしたら私の食事は別のところで作られているのかもしれない。
「この世界に牛乳ってあるのかしら?」
早速、カウンターから中に入り冷蔵庫を物色する。
当たり前だが牛乳パックみたいなものはどこにも見当たらない。
「牛乳かは分からないけど、クリームシチューみたいな料理が出てたし、それに近いものならあると思うけど……」
「あ、これなんてどうだ?」
私が冷蔵庫を物色している間に、来斗が外で別のものを見つけてきた。瓶からはどことなくワインの匂いがする。
「これ、ワインかしら?」
「匂いはワインだね。でも、飲むのは止めたほうがいいんじゃない?」
「別にいいだろ。どうせ、二十歳になったら飲んでいいですよーとか言われても、高校生になるくらいには大体が飲んでるはずだしな」
「そういう問題じゃ……」
「お偉いさんに聞いた話じゃ、この世界の成人は十五歳だそうよ。つまり、少なくとも十八の私は成人しているから問題ないわ」
来斗は二つ上の二十歳で鎮は一つ上の十九歳らしい。日本でもギリギリ誤差の範囲内じゃないかしら?
「それに、温かい飲み物って言ってたのにお酒飲んでどうするの?」
「どうするって、ホットワインにするのよ?」
「ホットワイン?」
千葉にある東京のテーマパークそれも海の方にはホットワイン(白・赤)があるのだが、これが甘くて美味しいのだ。
その味を知って以降、寒い日にはホットワインを作って飲んだりしていた。梅酒とかは未成年でも皆飲むわよね? それと同じよ。
「あとは、レモンとか砂糖とかあれば良いんだけど……」
本当は黒胡椒なんかがあると良いんだけど、流石にこの世界のスパイスは分からない。砂糖は甘ければ蜂蜜とかでもいいし代用しやすいから探せそうだけどね。
冷蔵庫を閉め、分担して物色する。私が砂糖あるいは砂糖の代わりになるものと柑橘類、鎮がコップ、来斗が鍋とお玉を探す。
五分ほど探したらすぐに見つかった。流石、王宮の食堂にあるキッチンなだけあって綺麗に整頓されていて探しやすかった。
調理は私が担当する。こう見えて毎日、朝ごはんと昼のお弁当は自分で作っていたのだ。
趣味とまではいかないけども、それなりに料理は好きだったりする。
「はい、完成」
残念ながら柑橘系のフルーツは見つからなかった。代わりに苺みたいな味のフルーツが見つかったので入れてみた。
程よいフルーツの風味と甘さ、ワインの香りもして中々いい感じに出来たと思う。
「美味いな」
早速、口を付けた来斗が感想を漏らす。やっぱり他人に褒められるのは嬉しい。
その様子を見ていた鎮も諦めたのかコップを手に持った。ワインのツンとした匂いに顔を少し顰めるがそのまま少し飲んでいた。
「本当だーー美味しい……」
一口飲んだ後は反対していたのも忘れたかのように最後まで飲み干していた。
「お粗末さまでした」
私も飲み終えて片付けをする。
「これ、一応、使ったってメモ残しておいたほうがいいかしら?」
「色々使っちゃったからね。この後の調理で足りなくなると困るし、書き置きはしておこうか」
近くにあった紙とペンを借りて調理に使った材料を書いておく。
「何かメモだけ残して痕跡がないと悪いことしてるみたいだな」
「奇遇ね。来斗もそう思う?」
「ああ。まぁ、これくらいは可愛いもんだろ。家のものを使ったんだから、悪いことはしてないしな」
今になって思い出せば、これが最初のいたずらだったかもしれない。
でも、最初ってだけ。最初であることも霞むような凄い出来事を、私たちは今後も起こして王に頭を抱えさせたのだから。
こんばんは。二日で何とか書けました。
「RelicCode」の後書きで少し触れていますが、新人賞用にも何か書こうと思ってMacにWord突っ込んで書いてるんですよね。
まだ全然書けてないので、この調子で書いて出せるとしたらファンタジア大賞でしょうかね。
毎日、ノルマを作って書いてるので、そっちを優先にすると「RelicCode」とこっちがあんまり書く時間設けられないという……
日中も大学生やってますから時間ないですしね。
ただ、最近書いてて思ったのが、三人称より一人称の方が書きやすい気がするということ。
「RelicCode」は三人称を意識して書いていますが、会話文以外での言い回しが思った以上に難しい。「魔法科高校の劣等生」呼んでて三人称もありだなと思ってただけに結構苦労してます。
逆に大賞用とこっちは一人称を使ってるので、結構簡単に書けている印象です。大賞用は一日でなろうに投稿している文量書き上げてますからね。
では、また次回。