第37話 見習い侍女の手記【Ⅰ】
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今回はルカ視点。詳しくはあとがきで。
私の名前はルカ・ルーザ。
生まれた時からこのカルディア王国の首都、カルディアで生活している。
貧しいながらも優しい両親のもとに生まれた私は幼少期を森の中で過ごした。
聞けば首都の近くに森があるなんて自然豊かな土地はカルディア王国くらいなものらしく、そういう点で私はすごく恵まれていたのだという風に思う。
豊かで便利な生活は生活でいいものだと思うけど、やはり自然を感じられる環境というのもまたいいものだと私は思うから。
当時はヴェル親方の拠点となっているあの辺りで生活をしていた。
精霊が集う場所ということもあって、魔物の襲撃も集落の男たちだけで十分に対処できる程度だった。
しかし、絶対に安全かと言われればそんなはずもなく、父が魔物に襲われて他界した。
後を追うように、母は病気のために亡くなった。
最初は集落の隣人たちが引き取ってくれる予定だったけど、そこに現れたのが母の姉だという人物だった。
引き取って育ててくれた叔母が、王宮の侍女長である義母だ。
両親から聞いたことはなかったのだけど、母の実家であるルーザ家は代々王宮に仕える一族らしい。
かと言って、仕事を放棄して駆け落ちでもしたのかと思えばそういう訳ではなく、当時世話を焼いていた父が片目を失ったことが原因で退役したため、一緒に外で静かに過ごすことにしたんだとか。
叔母は「私がいるから妹はいいでしょう?」と一族を納得させ、晴れて母は父と森へ移り住んだのだと叔母は言う。
母の死を知った叔母は慌てて私を探しに来てくれたらしい。
それから私は一つの選択を迫られた。
ルーザ家の人間として王宮に仕えるか、居候しながら勉強して好きなことをするかだ。
流石、母を養護してくれた優しい姉だと思った。普通であれば、王宮に仕える以外に選択肢はない。
私は特に迷うこともなくルーザ家の人間として王宮に仕えることを選択した。
最初はただの恩返しのつもりだった。
そこからは厳しい訓練の連続で何度、挫折しそうになったかはわからない。
それでも、それがルーザ家の人間として立派になれというものではなく、純粋に侍女として立派になれという意味での厳しさだと知っていたから何とか頑張ってこれた。
要領を掴み始めれば後はひたすら覚えるだけで、気がつけば期待の次代として注目されるようになった。
最初はぽっと出の私がここまで注目されれば、それをよく思わない者たちもいるだろうと思っていたけど、カルディア王国は王様からして呑気なお国柄だからか、嫌がらせのようなものは一つもなかった。
むしろ、いつも誰かに助けられ応援されていたようにも思う。
私は段々と王宮での生活に慣れ――違う。好きになってきていた。
そうやって生活をしている内に気がつけば四年の歳月が過ぎて私は十五歳になった。
周りの人よりも比較的早い段階で仕込みが始まったこともあり、同年代の人を差し置いて最近になって大きな仕事を与えられることになった。
――聖女の世話役
最初聞いた時は耳を疑った。
聖女ということは異世界から聖女たる者を召喚するということ。
王宮の侍女と言っても見習いの私は世界情勢を知っているわけではない。
召喚の儀を決行しなければいけないほどに情勢が悪いなど今まで知りもしなかった。
そして、聖女が召喚される日がやってきた。
召喚儀式自体が数百年振りのことらしく、勝手が分からないのだとか。
一応、この国の医療課に所属するトト・アシュレイ顧問の祖父が他国で召喚された後にカルディアへ来たと聞いているけども、被召喚者である彼が知っているはずもない。
部屋の中央に描かれた陣。
神聖魔法の中でもかなり高度な魔法を使う際には魔法陣と呼ばれるものを書くと聞く。それは、同時に多くの代償を必要とすることも。
他国には贄を用意することもあるというのだから想像もしたくない。
教会からやってきた聖職者四人がそれぞれ宝石のようなものを取り出し力を込め始めている。
たしか、あの宝石は魔力を貯め込む能力を有した魔石と呼ばれるもののはずだ。
なら、代償は膨大な魔力と言ったところなのかも知れない。
長い年月を掛けて教会の人間が魔力を溜め続けていたのだと思う。
やがて魔法陣が光りはじめ、一瞬目の前が真っ白になったと思った次の瞬間には目の前に男二人と女二人の系四人が座っていた。
(聖女だけじゃない?)
最初は驚いたけど、後から聞けば勇者との同時召喚を試みたらしい。
流石に四人も召喚されるのは予想外だったみたいだけども。
私は聖女の世話係になるから、あの女の人のどっちかが主になるのかと見ていた。
一人は見た目は私とそんなに変わらない人で、昔の私と同じ様にアワアワしている。
もう一人は随分とラフな格好をしていたけども凛としていて格好いい感じの人で、そのオーラについつい見とれてしまった。
それは他の人も同じだったようで、勇者のことは忘れたかのように周りの貴族たちも彼女に注目している。
殿下も何か感じるものがあったのか彼女に手を差し出していた。
しかし、その次に目に映った光景は予想もしていなかった。
まさか殿下の手を叩き落とすとは……挙げ句この一言だ。
「この状況が分かる責任者! 今すぐここで正座して状況を説明なさい‼︎」
なのにそんな姿すらも格好良く映ってしまうのだから不思議な人だ。
結局、彼女を連れて今回の統括長が別室にて説明を始めた。
他の三人は混乱しつつもそれぞれの個室へと案内されていく。
詳しい内容は陛下が後日話すと言っていたから、あの三人は専属の使用人に軽い説明をされてお仕舞いなのかも知れない。
「ルカ、大丈夫?」
考え事をしていた私に声を掛けてくれたのは侍女長の叔母だった。
あの三人に使用人が付けられたということは、統括長たちは怒鳴っていた彼女を聖女と認定したということ。
つまり、私は彼女に仕えるということが現時点で決まったということになる。
私はその件に関しては役得だと思っていたから問題なかったのだけど、叔母は私が初めて任された仕事の相手が彼女であることに不安を抱いているのではないかと心配してくれたみたいだ。
「大丈夫ですよ侍女長。
むしろ、綺麗な方にお仕えさせて貰えて役得だと思っています」
「そう? ならいいのだけども……」
私が強がりを言っていると思ったのか、心配そうに見てくる叔母。
だけど、心配はない。
何かを予感するように私の胸は高鳴っていたのだから。
仕事をしていてここまでワクワクすることはなかった。
異世界人がどういった人間なのか純粋に好奇心に負けただけだったのかも知れない。
暫く、心配する叔母と話していると統括の人が呼びに来た。
部屋の前へ案内された私は呼ばれて中へと入る。
そこには、やはり彼女がいた。
「お初にお目にかかります聖女様。私はこの度、聖女様のお世話をさせて頂くことになりましたルカ・ルーザと申します」
部屋に入った瞬間、急に緊張してきた。
よくよく考えれば彼女はカルディア王国の客人。
異世界人だからと馴れ馴れしく出来る訳ではないのだから。
だから、自己紹介をした時は最善の注意を払った。緊張を悟られないように……
だけど、意外なことに彼女は優しい人だった。
「よろしくねルカさん。それと、聖女はやめて頂戴。私のことは才華でかまわないわ」
最初の怒鳴った様子が印象的すぎて勝手に厳しい人と思っていたのかも知れない。
まぁ、そんな印象の人相手に好奇心だけで近付こうとしていたのだから私も大概だ。
「畏まりました。それでは、サイカ様とお呼びさせて頂きます。サイカ様の国の文化を知らない為、至らない点もあるかと思いますがどうかよろしくお願いします」
でも、何となくサイカ様とは良好な関係を築けるとそんな予感がしていた。
皆さん、こんにちは。初仁です。
18時更新に変わってから三回目の更新になりますが、慣れて頂けたでしょうか?
そんなこんなで、治癒魔法に殆ど触れないまま気がつけば一応一区切り付いてしまった本編ですが、次は国の外へと旅に出ることになります。(「治癒魔法覚えます」はカクヨム版では編集したいです。真面目に……)
その前に幕間を……と思って書き始めた「見習い侍女とポンコツ聖職者」ですが、「あ、これ長くなるやつだ……」と察して、幕間ではなく本編として掲載をしました。
わざわざ章まで作っちゃったよ。
というわけで、今回から数話掛けてルカのお話を、その後にエルのお話を書いていきます。
では、また次回。18時だからね!(念押し)




