幕間 その頃の武神様
今月、最後の更新。明日も投稿予定。
今日はおまけなので超短い。
「二度目の人生は平穏に過ごしたい!」も更新してますので、時間がある方はよろしくおねがいします。
武神。
それは、異世界人の血を引く者の中でも武に優れた者に与えられる称号。
勇者や聖女には遠く及ばないものの、この世界の者を基準に考えれば異常とも言うべき能力を持っている。
実際、俺も生まれてこの方、喧嘩では負けたことがないし、今ではお世話になった師範すらも超えた。
生まれ持った才能が優遇されるこの世界に置いて、俺は非常に恵まれた存在だったのかも知れない。
挫折を知らず、やろうと思えば何でも出来た。
王に優遇され武神と呼ばれ、戦いに借り出されることもあったがやはり負け知らず。
俺には出来ないことなど存在しない。
そんな風に天狗になっていたのかも知れない。
「遂に負けちまったか……」
遠慮したつもりはなかった。
本気で、それこそ、自分でも抑えが効かないくらいに殺すつもりで斬りかかった。
冷静になった今にして思えば、幾ら刃のない峰で攻撃したとしても、あの威力をまともに喰らえば、死ぬ可能性だってあったし、後遺症くらいは残したかも知れない。
完全にやり過ぎだ。
だけど、あの聖女は平然と避けやがった。
こっちの考えも及ばない方法で。
まるで、白昼夢でも見ていたかのように聖女は消え、気が付いた時には模擬戦が終わっていた。
聞けば剣があたった瞬間に霧のように消え、気付いた時には俺の後ろに立っていたという。
曰く、見た目通り霧の魔法らしい。
聞いたこともない。
正確には水と風の精霊魔法を複合した魔法らしい。
それだけでは幻想を見せるなど不可能のはずなのだが……そこら辺は、今代の聖女には関係ないらしい。
『霧に幾ら魔力があっても幻影を作るなど不可能ではないですか?』
『それは、霧だけなら目隠しくらいにしかならないでしょうけど、精霊が力を貸してくれれば意外と出来るものよ?
私も精霊も結構ないたずら好きなの』
と、言っていたそうだ。
一体、精霊にどんなお願いをすればそんな摩訶不思議なことが出来るのやら……まったくもって謎だが、本人も詳しい原理は理解してないらしい。
思いつきで精霊に頼んだら出来たとかなんとか。
ハッキリ言って無茶苦茶だ。
だけど、だからこそ気付いたことがある。
今までは力技でなんでも出来たが、そのせいで魔法に関する知識が皆無。
流石に霧の魔法のような本人しか使えないような変わり種なら別だが、そうでない魔法にも的確に対処できるような知識は身に付けておいた方が良いかも知れない。
武神という地位に甘えていた自分にとっては本当にいい経験になった。
「失礼します」
「ん? ミナカタか」
武神の一人。魔法を得意とするミナカタが部屋へと来た。
「いえ、サイカさんにコテンパンにされたと聞いて様子を見に――」
「余計なお世話だよ」
からかいに来たのだろうか?
なら、お前も戦ってみろって話だ。
ミナカタの魔法も見事なものだが、聖女の魔法は奇天烈過ぎて魔法師のミナカタでも度肝を抜かれるはずだ。
「いえ、サイカさんが型破りなのはよく知ってますから、むしろ負けなしのミカヅチが不貞腐れてないか心配してきたのですよ」
「そこは問題ない。むしろ、いい経験になった。
本来、回復要員である聖女にここまでやられてしまったのだから、魔族との戦いに向けてもっと訓練しないとな。
お前とアイツに教えを請いたい。魔法の知識が致命的にないからな」
「確かに、魔族のことに関してはこの国に彼の右に立つものはいないでしょう。
魔法も、サイカさんみたいな常識外れな魔法は無理ですが、一般的なものならお教え出来るでしょうしね」
魔王が復活したかはまだ分からない。
全ての魔族が敵というわけではないということも重々承知している。
魔族は憎む対象ではない。
圧倒的な力で押し返すだけで済ませられるなら、余計な被害が双方に出ずに済む。
そして、成長できる余地はまだまだあるということも分かった。
ならば、ひたすらに進むだけだ……
皆さん、こんにちは。初仁です。
今月、今日で最後なのでおまけ程度にミカヅチのお話を30分くらいでサラッと書いてみました。
思いつきで書いたので、超短いです。
明日の分、まだ書いてないのでこれから急いで書かないと……明日、朝からバイトなので(汗)
「二度目の人生は平穏に過ごしたい!」はまだ、序盤で何も起きてませんが、2,3話中に新しい展開を加えたいです。
時間ある方は、こちらもよろしくおねがいします。
では、また明日。




