第30話 才女、魔族と会う
累計9000PV突破!
ブックマーク登録ありがとうございます!!
引き続き宜しくおねがいします!!!
正直に言えばかなりの熱風が辺りを吹き抜けているはずなのだけど、生成した土の壁と私たちの周りの空気は風の精霊魔法と水の精霊魔法を使って冷却しているお蔭で特に問題はない。
一通りの現象が落ち着いて壁を崩してみれば灰になった魔物が見えた。
「やっぱり、魔物と言えど自然現象には敵わないものなのね」
「こんなあっさり倒せるとは……」
マイアちゃんもかなり驚いている。
やっといて何だけど、私も結構驚いているのよ?
「ハッハッハ! まさか、僕の自信作がこんなにもあっさり殺られるとは、つくづく人間は興味深い」
一安心していた私たちに聞こえたのはそんな声。
直後、背筋がゾッとするような悪寒が走る。
「誰!?」
気配のした方を見るがそこには誰もいない。
「こっちだよ」
振り向けば先程まで誰もいなかった場所に一人の男が立っている。
黒衣に身を包んだ彼からは悍ましいと表現すればいいのか、酷く気分の悪い気配が漂っていた。
周囲の精霊も忌避しているように感じる。
頭には角が生えている。なるほど、この人が――
「……魔族」
自然と出た言葉は今、一番口にしたくなかったものかも知れない。
現在進行形で敵対している魔族の国の種族だからだ。
特徴は以前、先生に聞いていたものと一致するから間違いないはず。
「流石、噂の聖女様だね。その通り、僕は魔族だ。
さっきの魔物も僕が生み出したものでね。僕の代わりに他の下級を指揮させてみたんだけど、思った以上に上手く行ったね」
「それなりの被害が出ていると思うのだけど、それでも貴方は研究だとでも言うの?」
「勿論。この程度の被害大したことではないだろう?
それに、戦争が始まればこの程度では済まないだろうさ。
短命な君たち人間は知らないだろうけどね」
そう言えば、魔族って人間より長生きするらしいわね。エルフ程ではないらしいけど。
繁殖力も低いとか書いてあったような?
「その割にしぶとい種族よね……まさか、Gと共通点があったり」
「しないからな?」
いや、そんな真顔にならなくても……
というより、Gで通じるの?
「昔、殺りあった異世界人に懇切丁寧に説明されたことがある」
そんな肩を抱いて震えなくても……。
確かにそこにいるだけで空間を支配するような存在感のある存在だけども、見たことない人が恐怖するような存在でもないような気はする。
というより、この人、魔族なのよね?
聞いただけの空想のGに恐怖する魔族っって――
「まぁ、そんなことより」
「切り替え早いな、おい」
来斗も流石に毒気が抜けたのか呆れている。
どうも、魔族と言ってもそこまでの怖さを感じないのは、彼が弱いのか、強くて余裕ぶっこいているのか……
どちらにしても、流石に消耗が激しくなってきた状態で相手にはしたくない。
魔力的には全然余裕なんだけどね。
「おや? 流石に連戦は辛いのかな?
だけど、逃げようとしても無駄だよ。
ここら一帯に結界を張らせてもらったからね」
「結界なんてあるの?」
「基本、精霊に助けてもらって使う魔法にはないだろうけどね。
僕たち魔族が使う魔術にはそれが可能だ」
魔術!
確かに数点だけだけど魔術に関する文献はあった。
魔法では表現しにくいものが多く、流し読み程度だったのだけど、なるほど魔族が使うものだったのか……
文献が少ないのも納得がいくわね。
「さてと、早速始めようか」
そう言って魔族が手をかざせば火の玉が連続して飛んでくる。
私も水の精霊魔法でこれに対抗する。
「手数には自信があったんだけどな」
「貴方は一人で戦ってるかも知れないけど、私は精霊たちと一緒に戦ってるのよ?
そう簡単に殺られるわけないでしょうに」
「ごもっとも!」
次に指を突き出してきた彼はそのまま雷を奔らせる。
え? 雷?
魔術って雷も操れるわけ?
これは厄介ね。
だけど、霊力を開放している私にはどうってこともないわ。
霊刀を抜いて振り抜く。
それだけで、雷は霧散した。
「無茶苦茶するね」
「そうかしら? 例え雷でも的確に切れば両断できない道理はないわ」
「「「……」」」
一斉に黙らなくてもいいじゃない。
「相澤、お前の動体視力はどうかしてる」
「才華さんが言うことは最もだけど、そもそも一瞬で迫るものを相手に的確になんて切れないよね?」
言われてみれば確かに……
感覚的にやったから大して難しくはなかったのだけど、やっぱり普通じゃないのかしら?
「なるほど、これだけ無茶苦茶するならダムでの一件も納得出来るよ」
「ダムでの一件ですって?」
まさか、この魔族はあの怪魚にも関わっていたのかしら?
これは、拘束して詳しく聞かないと――
「まさか、あれは僕とは無関係だよ。
ただ、噂の聖女が精霊魔法だけで魔術まがいのことをして倒したと聞いただけでね。
そんな事が出来るとは欠片も思っていなかったよ。
何せ、人族と魔族には魔術が使えない決定的な違いがあるからね」
「決定的な違い?」
「魔族にはあって、人族にはないもの――魔術回路」
「魔術回路?」
日本の創作物ではよく見かけるアレ。
もしかして持って生まれるものなのかしら?
「魔術回路とは魔族が生まれる際に与えられる魔術の処理器官と言ったところかな。
精霊魔法と違って、魔術は『”魔”力を持って現象に介入する”術”』のことを指すからね。
どうしても、処理能力というものが必要になってくるのさ」
「精霊魔法で言うところの精神力的なものかしら?」
「そういう事になるね。
精霊魔法を使うことで人は精神力を使い気怠さを感じる。それが蓄積されて最終的には気絶するわけだ。
しかし、魔術は頭を使う。使いすぎて頭に負荷が蓄積されていくと、最終的には脳回路が焼ききれて死に至る。
ま、そういう意味でも魔族らしい邪道な技と言ったところかも知れないね」
強力な魔術にも弱点はあるということね……
逆に言えば根比べすれば勝てる可能性は十分にあるということ。
圧倒したほうが早いとは思うけどね。
「さてと、そろそろ自分がどういう状況に陥ったか分かって貰えたかな?」
「取り敢えず、今の私達では貴方に勝てないでしょうからね……
来斗! 鎮! 少しの間、時間を稼いで頂戴。恵子ちゃんは二人の援護!」
「「「了解」」」
一時的に戦線を離脱。
逃げるように外へ向かえば前方から違和感を感じるようになる。
手を伸ばせば目に見えない壁のようなものに触れる。
やっぱり、結界というだけあって物理的な障壁のようなもののようね。
試しに霊刀で切ってみる。
あっさり切れたがすぐに修復してしまった。
起点はどこかしら? やっぱりあの魔族?
しかし、処理能力の必要な魔術を結界に使いながら戦闘にも使えるほど便利なものなのだろうか?
そこで一つ気づいた事があった。
魔族の後ろに一本だけ木が残っていたのだ。
木は精霊の拠り所になるほどに魔力を蓄えている。
結界の起点としては十分とも言える。
私は銃を構えた。
狙いは当然、魔族の後ろの木だ。
「――っ!? 流石に気づかれたか!」
来斗と鎮の猛攻を受けているにも関わらずこっちの魔力に気付いた魔族がこっちへ向かってこようとする。
しかし、そこは恵子ちゃんが矢を射って牽制。
魔族に邪魔されないよう本気の威力で木を狙い撃つ。
魔族は防ごうと試みたが腕が吹き飛ぶのを恐れたのか諦める。
やはり、結界は木の消滅と共に霧散した。
「撤退よ! 走って!!」
私はそう言って複合精霊魔法である霧を使おうとした。
だけど、次の一言で止められてしまった。
「そこまでです。試験は合格と言うことにしましょう。
アウスナもその辺でお終いです」
「これからだったのに!?」
「いいから、国王陛下に報告してきて下さい。
私は彼らに説明をしていますから」
「了解」
そう言って、アウスナと呼ばれた魔族は飛び去った――王宮の方に。
「さて、どこから話しましょうか?」
混乱する私たちに声を掛けたのは、見慣れない服を着た先生その人だった。
皆さん、こんにちは。初仁です。
遂に9000PV超えました。
それはさておき、昨日から思いつきと勢いだけで「RelicCode」ともう一作ほっぽり出して新作を書いてみました。
昨日の投稿時から少しタイトルが代わりましたが「二度目の人生は平穏に過ごしたい!」というタイトルで今は書いてます。
お時間ある方は見てみて下さい。
転移モノじゃなくて転生モノになっただけなんで、いい加減、普通の書けやって話なんですが、そっち系のストックは新人賞用に取っておいているということで一つ……
では、また次回。




