魔法取得そして出発
今回は少し長めに書いてみました。
いつもどおり文章が下手くそですがどうぞゆっくりとみていってください。
「あの、すいません!」
…え?
「聞いてましたか?」
…し、しまった!?あまりにも驚きすぎて思考が停止していた!なんて言ってたんだ?
「ご、ごめん!今なんて言った?」
「…はぁ〜、しっかりしてくださいよ冒険者さん。」
この状況で放心状態にならない方がおかしいと思うのだが?
「こほん。では改めて。」
場の空気が急に引き締められる。きっと次聞かなかったら八つ裂きにするぞ!という意味があるのかもしれない。全神経を耳に集中させなければ…
「私の名前はアグネスと言います。冒険者さん貴方の名前を聞いてもよろしいですか?」
…なんだ、自己紹介か!どんなやばいやつが来るかと思ったのだが、普通のでよかった。
よしではこちらも名乗らなければ。
名前だろ。俺の名前。俺の名前は……
………あれ?俺の名前なんだったっけ?
「どうしましたか?」
アグネスがまだなのか?と視線で訴えてくる。
記憶が混乱しているのか?どうにも思い出せない。
「まさかとは、思いますけど…」
あれ?なんだろう?また場の空気が…
アグネスの笑みが凍てつく。
「また聞いていなかったなんていわないですよね?」
こ、怖い!!お父さんの雷程度のものではない!
はやく答えなければ!!だけど全く思い出せない。
それ以外のどーでもいい記憶なら覚えているのだが…
くそ!!どうする?もうてきとうな名前を言うしかなか?
「ショート」
俺が口走ったのだと気付くまでに数秒の時間を必要とした。
俺は何を言ってるんだ!?そんな名前全く知らないぞ!?
「ショートさん…なるほどいい名前ですね。」
……結果オーライというやつか?とにかく乗り切れてよかった!どうやら俺の命は救われたらしい。
「ではショートさん私に何か質問したいことがありますか?」
きた。この時のためにいろいろ質問を考えておいたのである。では手始めに。
「ここは一体どこなんだ?見たこともない場所なんだが?」
さぁ、一体どんな回答が返ってくるんだ?
「ここは異世界へと通じる入り口があるいわば玄関のようなものですね。」
……え⁇異世界??なんでそんな話になるんだ?
日本のどこかではないのか?だ、だめだ他の質問を
「はーい、質問タイム終了でーす。」
はぁーーーーー!?
「ちょっと待て!!まだ質問したいことが!!」
「だめです。これで質問はおしまいです。」
んな無茶苦茶な!!
何にもわかんなかったぞ!?
「そんなどうでもいいことはほっといて本題に入りましょう、帰りたくないですか?」
「………どこにだよ」
「もちろん貴方のいた世界にですよ。家族の方も心配してまっているはずですよ?」
「心配してまっている」か。そうだといいがな。
「どうです?帰りたいですか?」
アグネスはイスに座りティーカップを口元に運びながらそんなことを聞いてくる。
そうだな...確かに退屈な世界だったけど目立つことのない生活ができていたのは事実だし「帰りたいか?」と聞かれればそれは勿論
「帰りたいかな?どうすればいい?」
アグネスの目が鋭く光る。そしてその言葉を待っていたかのようにスラスラと喋りだすのである。
「この地下深くにいる化け物を倒す。それが貴方が帰るための条件です。」
「地下深くにいる化け物?魔王とかではないのか?」
「はい、違います、魔王もいるのですがそちらのほうは討伐隊がでているので心配はないとおもいます。それよりも大変なのは地下の化け物なんです。」
「そ、そんなにやばいのか?」
「はい、これまで何人もの勇者クラスの冒険者が挑んだのですが誰も返ってきませんでした。」
………よし無理だな、そんな化け物相手に勝てるわけないし今回の件は断らせていただこう。
「ちなみにもう遅いですよ、絶対に行ってもらいますからね。」
く!こしゃくな!!
「そんな化け物相手にどうやって勝てばいいんだよ。
言っとくが、俺のパンチは新聞紙すら貫けないぞ。」
「大丈夫ですよ、貴方のパンチには全く期待してませんから。」
「じゃあ何に期待しているんだ?」
「貴方の魔法にですよ。」
魔法だと?
「俺に魔法があったなんて初耳なんだが?」
「今の貴方には魔法はありませんよ?これから取得するのです。」
「これから?」
「はい、これからです。」
それって大丈夫なのか?もし使えない魔法がでてきたらその時点で終わりではないか。
「早速始めますよ。さぁこっちに来てください。」
こっちに来てください?いや、行きたいのは山々なんだが……
「俺縛られてるからそっちいけないんだけど……」
手と足にがっちりと手錠がはめられているのが見えないのか?
「あ!すいませんすっかり忘れてました!」
「なぁそういやずっと聞きたかったんだけど、どうして俺両足に手錠はめられてんの?」
「それはですね、趣味です!」
……オー神様。
「………なんでこんな可愛い子にこういう趣味つけちゃうかな?」
「意外性があっていいと思いませんか?」
思いません。
全く、これからどうなるんだ?
「それでは魔法取得の為の儀式をとりおこないたいとおもいます!準備はいいですかショートさん!」
場所はさっきと変わらない少し狭い部屋の中、俺は魔法陣らしきものの中心に立たされていて外側にはアグネスがたっている。
「あぁいいぞ」
さっきよりもやたらテンションが高いな?そんなにスキル取得とはたのしいものなのか?
「ではいきましょう!私が質問したことには必ず答えてくださいね!」
質問で魔法が取得できるのか。なかなかかわってるな。
「では、いきます!質問1 貴方の好きな色はなんですか?」
普通の質問だな。そうだな〜茶色も捨てがたいがここはやっぱりここは……
「黒だな」
黒を見ているとなんか落ち着くし夜に歩いても目立たないで済むからな、俺に最適な色ではないだろうか?
「質問2 貴方の好きな食べ物はなんですか?」
なんだ、儀式と言ってもこんな簡単な質問しか出されないのか。好きな食べ物は……
「ケーキだ」
おいおいこんな簡単な質問で大丈夫なのか?
こんなんで地下にいる化け物とやらを倒せるスキルがてにはいるのか?
「質問3」
さて、次はどんな簡単な質問が………
「貴方には友達と呼べる人が何人いますか?」
…………え?と、友達?
友達か……何人いたっけな?俺の記憶が正しければ確か、ご、5人?いや10人ぐらいいたかな?
「どうしました?ショートさん?はやく答えてください。」
アグネスがニヤニヤしながらこちらを見ている。
こ、こいつ!!こういう悪質な質問があると知ってたからテンションが高かったのか!!
「じゅ、10人間ぐらいかな?」
そう、きっと10人ぐらいいたはず……たぶん。
「へー10人ですか。それは素晴らしいですね〜」
「……信じてないだろ」
「さぁ〜次の質問いきましょー!」
スルーしやがった!!
こうして、悪質な質問をなんとか乗り越えついに最後の質問をむかえたのであった。
「最後の質問 貴方が1番大切にしていることはなんですか?」
一番……大切にしていること?なんだ最後だけ簡単だったな。そんなの決まってる。
「目立たないことだ」
「………それはなぜですか?」
「何故って…目立たなければ面倒なことにあわないで済むだろう?それにいつも心が落ち着くしな。たまに目立ちたいと言う奴がいるがどうにも俺にはわからんな。」
「そう……ですか……」
?なんでそんなに悲しそうな顔をするんだ?今の話のどこに悲しむ要素があった?
「質問はこれで終了です。魔法取得までは5分くらいかかると思うので紅茶でも飲んで待っててください。」
手元に美味しそうな紅茶が置かれる。一口飲んでみたが意外にも美味しかった。一度も飲んだことがないはずなのだか、何か懐かしい気分になった。
アグネスは何か熱心に紙に文字を書いたりたまに目をはなし遠くから見たりしている。
頑張ってるなー。
そして丁度5分ぐらいだった頃
「ショートさん!!魔法がでましたよ!!」
おーー!!ついにきたか!!
「先に見させていただきますね!!」
一体どんな魔法なんだろう?考えただけでもワクワクしてくる。炎系か?水系か?それとも……
「ふふっ」
なんだ?アグネスの肩が小刻みに震えている。い、いやな予感がする。
「ど、どうだった?どんな魔法だ?」
「い、いえ…あ、貴方らしい魔法だと思いますよ。」
そんなにおかしい魔法なのか?
アグネスから魔法が書かれている紙が渡される。これが地下にいるという化け物を倒す魔法、きっと一生世話になることになるであろう俺の魔法だ!
魔法 ブリンクフロード (目隠し) LV1
効果
王の器意外の生き物の目を見えなくすることができる。
見えなくした相手の攻撃力とマジックポイントを奪うことができる。
複数人目を見えなくすることができる。(3人)
強制解除時間5分。相手から奪ったものは倍にして返す必要がある
やっぱ冒険やめようかな?
「準備整いましたかー?」
「あー大丈夫だぞー」
期待外れの魔法でがっくりきた俺だったが、のってみるのもまた一興。こんな魔法だがいざという時には使えるかも知れないしな。
「ショートさん他に質問はありませんか?」
「あぁもうないよまだわからないことはあるけどあっちの世界にいってからいろいろ調べようと思ってる。」
「そうですか……頑張ってください。異世界にはそこの扉から入れますからね。」
アグネスが俺にエールを送ってくれる。人に応援されたことが最近なかったので妙に恥ずかしい。
「アグネス、短い時間だったけどなんか世話になったな、ありがと。」
「いえいえこちらこそお役に立てて何やりです。またどこかで会いましょう。」
ほんの少しだか寂しくなってきた。最初は頭のおかしい女だと思ったが話てみると意外にいい奴だったしな。
「一緒に冒険してみない?」なんて言ってみたいがきっとここにいることしかできないのであろう。このままここにいたら別れがさらに悲しくなってしまいそうだ。だからもう行こう。
「あぁそれじゃ、またどこかで。」
扉に向かって歩く。これだけのことなのに胸の鼓動が押さえられない。きっとこの先目立たなくても面白いことが俺の目の前に次々と降ってくるのであろう。扉をあけ大地を踏みしめ1歩足を前にだす。これが俺の最初の一歩だ。
「………なぁアグネス?」
「どうしました?」
「普通さ、異世界に行く時って転移魔法とか使って行くものじゃなかったっけ?」
「そうですね、ええそうだと思いますよ?」
「じゃあなんで扉の先にウォータースライダーがでてくるわけ?」
扉の先にあったのはワープホールなどではなく。子供の頃よく滑っていたウォータースライダーである。ただウォータースライダーと言ってもほぼ80度ぐらい傾いておりスピードがでること間違いなしであろう。しかもところどころ曲がっており先が全くみえないから怖い。
「さぁ私にもさっぱりわかりませんね。国が決めたことですから文句があるなら国に言ってください。あ、これゴムボートです。どうぞ。」
おいおい嘘だろ!俺はそういう高速で移動する乗り物に乗ると酔ってしまう体質なんだけど!
「なぁこれ他の方法とかないのか?」
「ありますけど50パーセントの確率で死んでしまいますがよろしいですか?」
「いや、急に滑りたくなってきたからやっぱいいや!」
そう言う急いでゴムボートに乗り込む50パーセントって低すぎだろ、もっと上げとけよばかやろー。
よ、よし心の準備をしなければな。まずは深呼吸をして心をリラックスさせて……
ドン!!
………え?
深呼吸しようとしていた俺に構わずアグネスがゴムボートを蹴り飛ばしたのである。ボケッとしているであろう俺に向かってアグネスはこういった。
「そんなにすきをみせていたら足元すくわれますよー。」
そう言い少し悲しそうに微笑んだ彼女に俺は心からこの言葉を贈ろう。
「このクソアマーー!!」
こうして俺の異世界への大一歩は、散々な形で終わりを告げるのであった。
さっきまで人がいたとは思えないほど静かになった部屋の中アグネスは一人静かに紅茶を飲んでいた。
「さて、これからこの世界どうなっていくのか見届けるとしましょうか。」
紅茶を置き水晶玉を覗き込むアグネスは一人呟くのだった。
最後まで読んでいただきありがとうございました。