プロローグ
誰にでもあることでは無いが、自分が死ぬ夢をみたことは無いだろうか?
例えば川で溺れたり、崖から落ちたり、火で焼かれたり等あるだろう。
それらを夢で見るのは、自分自身が新しく生まれ変わるのを暗示しているらしい。
そして、今俺自身も体感している。
夢ではなく現実で。
腹から生えたナイフがその証拠だ。
腹に生えたナイフは青白く発光している。
幻想的で美しい、と思うがそれよりもーーー
「つっ!ぁ、ぐぅぅ」
熱いっ!刺された腹が燃えるように熱いっ!
刀身を抜こうと必死にもがこうとするが、まったく体に力が入らない。
「っ!?ぎ、いぁぁぁ!?」
この場から逃れようと考え始めた時、それは起こった。
刺された部分の中心あたりから、何かが体の中に入ってくるような、違和感を感じた。
眼を腹の辺りに向けるとーーー
ーーー無数の目玉と赤黒い肉塊が腹の上で蠢いていた。
「っっ!?」
悲鳴を上げた筈なのに声が出ない。
腹の上で蠢いていた目玉が一斉に自分を見つめる。
目玉と肉塊しかないのに、俺には笑ったように見えた気がした。
ついに、俺は意識を手放した。
視界が黒く染まるのを感じながら、妙な声を聞いた。
まるで、ガラスを引っ掻くような、それでいてはっきりと聞こえる声が。
ーーー今度こそ偽の神を殺してみせる、と。