ミッション始動
朝7時。我が真壁家ではこの時間に家族全員で朝食を食べると言う決まりがある。
今日は誰かが寝坊すると言うこともなく、全員が食卓に着いた。
上座には我が家の大黒柱である父が座り、父から見て右手側には母が。左手側には長男である自分が。それ以外は好きなように座るようになっている。
俺の隣に座るのを妹や弟達が何故かは分からないが毎日争っていたが、今日は五つ年下の長女が勝ち取ったようだ。
「よし、皆揃ったようだな。それでは今日も美味い朝食を作ってくれた達人に感謝して、いただきます!」
『いただきます!』
「ん、どうぞたくさん召し上がれ」
父に続き他の皆がそう言うと、朝食を作った俺はそう返す。
斯くしていつも通りに真壁家の1日がスタートした訳だが、今日は前々から家族に言おうとしていたことがある。この話をしようとすると何故かタイミングが合わなかったり、必死に話を逸らされたりして言えなかっただけなのだが…
かなり間を開けて誰もが忘れていると思うので、さりげなく言ってしまおうと思う。
「なぁ、皆食べてる所悪いんだけどさ。いい加減俺もニートやめて働かないといけないと思うんだけど、どうかな?」
俺がそう言った途端に賑やかだった真壁家の朝の食卓がピタリと静まった。朗らかに談笑しながら朝食を食べていた父と母は箸を止め、箸やご飯の入った茶碗を持っている手は心配になるくらいぶるぶる震えている。
隣に座る長女は静かに涙を流し始め、長女の向かいに並んで座る双子の弟達は腰を抜かしたのか、二人とも座っていた椅子からずり落ちている。
長女の隣に座る次女と三女はこの世の終わりを見たかのような表情を浮かべ、互いの肩を寄せあいながらガタガタ震えていた。
想像していた反応とはかなり違うリアクションが帰ってきたが、とりあえず話を進めよう。
「そりゃあ高校卒業して大学にも通わず今までアルバイトすらしたことがない俺が、いきなり働くってのは不安でしかないだろうけどさ」
いくらなんでもそこまで大袈裟な態度取らなくても良くない?お兄ちゃん傷つきましたよ?
「いや、違うんだ達人!心配なんかしてないんだよ。達人ならどこでだって働けるだろうし、どんな職種だろうと大成できると断言もしよう!だが違うんだよ達人…」
「違うってどういう…」
俺の返しになにやら考え込む父。少し間を開け、何かを決心したような顔つきで此方を見ながら立ち上がり大声でこう言ったのだ。
「ミッション〈ニート〉始動!!」
………は?