黒猫のルナ
でも、最後の一言が気になった。
優香にもう一度会いたいならっていったいどういう意味だろう?
いや、そもそも鍵ってなんだろう。
鍵と黒猫? そういえば……。
優香のケータイにぶら下がっているストラップには鍵と黒猫がついている。
そういえば、さっきは混乱していてよく分からなかったが、これを買った時、エステルは確かこう言っていた。
「――その鍵は『メビウスの鍵』と申しますの。とてもレアなアイテムですのよ」
もしかして、鍵ってこれか? でも、これに一体どんな意味があるというのか?
それに触れると、チャリっと涼しげな音がした。
――カリカリ……。
「ん?」
空耳かな、と思った。
耳を澄ましてみる。
――カリカリ……。
やはりなにか音が聞こえる。
何者かが玄関のドアを引っかいているような音。
まさかと思いながらドアを開けると、やはりそこには黒猫がいた。胸に白い三日月のような斑がある。
今電話を切ったばかりなのにもう迎えが来るなんて……。
正直かなり薄気味悪かった。エステルとはいったい何者なのだろう?
僕は黒猫の前にしゃがんだ。
「迎えの黒猫って君?」
答えなんか期待していなかったから、猫がいきなりしゃべり始めたのには正直かなり驚いた。
「そうよ! あたしがエステルの使いの黒猫のルナ。賢斗さんを迎えに来たのよ」
「うわ!? しゃ、しゃべった!?」
「……自分から話しかけといて驚くなんて失礼しちゃうわね」
「……夢だ。俺はまだ夢を見てるんだ。起きろ自分! さっきからなんかおかしいと思ってたんだ」
僕は立ち上がり、身を翻してベットに向かった。
そうか。夢ならこんな馬鹿げた現象が起きてもぜんぜん不思議じゃない。
しかし、それにしても夢の中で夢を見るなんて我ながら器用な真似をするもんだ。




