謎の電話
見慣れたいつもの自分の部屋。
窓から差し込む淡い光が、今が朝の、それもかなり早い時間であることを示している。
やっと理解が繋がる。
昨日、優香の遺体を彼女の家につれて帰ってから、一旦自分のアパートに帰り、そのまま寝てしまったんだった。
僕の机の上では、昨日置いたままの優香のスマホが相変わらず聞き慣れた着メロを流し続けている。
奈津子さんからだろうか? といぶかりながら画面を見るが、誰からかは分からなかった。
「もしもし?」
ちょっと迷ってから電話を受ける。相手が驚くかと思ったが、相手はまったく動じてはいなかった。
「あ、もしもし? ごめんなさいね、朝早くに。起こしてしまったでしょう?」
上品な若い女性の声。聞き覚えはある気もするが。
「ええ、まあ。……それより、この電話の持ち主の優香なんですが……」
「存じ上げております。本当に残念なことです。あたしは、あなたに電話をかけたんですよ。賢斗さん」
相手が自分のことを知っているということに驚いたが、もしかすると優香の友達の一人かもしれないと思い当たる。
「わざわざありがとうございます。今のところ、今日が通夜で明日が葬儀の予定なんですが」
僕がそう言った次の相手の反応は驚くべきものだった。
「賢斗さん、さっきの夢で優香さんから鍵を受け取られましたね? その件でお電話差し上げました」
「な、なぜそれを!?」
いったい何者なのだろう? すべてを見透かしているようなこの女は。なぜ僕の見た夢の内容まで知っているのか?
「あなたは……だれですか?」
僕が訊ねると、相手はクスクスと笑った。




