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聖凛高校  作者: 夕都柚香
4/4

転校生と

芽「転校生が来たぞ!」

芽羅が威勢良く

教室に駆け込んで来たのは

幽霊騒ぎから数日後の朝のことだった


男「女子か!?女子なのか?」

芽「残念

うちのクラスは男子だ」

女「わぁ!かっこいいと良いね?」

「これ以上顔面偏差値

下がったら嫌だもんね」

男「なんか二重に

ココロを抉られる...」

「て、てかうちのクラスは

てことは、他のクラスに...」

芽「あぁ、女子の転校生がいる」

男「あーもう、羨ましすぎるっ!」

ガラッ

美「ちょっと何騒いでるの?

HR始めるわよ?」

女「先生!転校生の男子かっこいい?」

「ねぇ、もう来てるの?」

男「女子が来たクラスは

どこですか?

いまから殴り込みに...」

美「あー、ハイハイ

だいたい理解したから

一度落ち着きなさい

話はそれから」

「あと殴り込みに行かない

ここぞとばかりに

男子全員結託してどうするのよ」

ツッコミの多すぎるクラスに

美奈先生はハァ、と溜め息を吐いた

美「あと三十秒で席について

静かにしないんなら

今日の英語はテストにするわよ」

もちろん赤点のひとには

補習が待ってるわ

と、付け加えると

全員が一斉に席についた

美「よし、じゃあ今日〈は〉

テストはやめておきましょう

それにしても相変わらず

杞星君の情報網は凄いわね...」

ついつい苦笑いを浮かべてしまう

美「ま、バレちゃってるなら仕方ない

さぁ、入って来て頂戴」

美奈先生の呼びかけに

飴色の髪をした少年が入ってきた

美「時雨 遠矢君よ

家の都合でこちらに来たらしいわ」

遠「今日から宜しく

気軽に遠矢と呼んでくれ」


女「ねぇ、どこから来たの?」

「もうひとりの転校生とは知り合い?」

男「そいつ可愛いか?」

遠「生まれも育ちも京都だ

まど...その転校生とは知り合いだ

容姿は...まぁそれなりには」

HR後に生徒に囲まれた遠矢を

尚と芽羅は遠巻きに見ていた

尚「それにしても

すごい人気だな」

芽「こんな時期の転校生は珍しいし

あいつ自身明るいからな

まぁもう少し人が減ってから

話した方が落ち着けそうだ」

尚「だな...ところで龍は?」

芽「授業の準備に行ったぞ」

尚「へぇ、一時限目の...あーっ!

社会に変更されたんだった!」

尚は一人で先に行った龍に

文句を言いながら

教室から飛び出していった

遠「なんか大変そうだな?」

男「いやいや

あいつは特別なんだ」

龍「...すぐに仕事を溜め込んで

自分から忙しくしてる、て意味でな」

遠「あれ、戻ったのか?」

ようやく人が掃けた遠矢が

尚の無駄足かと思い

疑問を口にしたが

龍は首を横に振った

龍「伝言を伝えに来ただけだ」

そう言って彼が指差す先には

白いチョークで

第二理科室への移動指示が書かれていた


理科室には一年生全クラスが

集められていた

席の指定等は特にない

遠「こういうことはよくあるのか?」

遠矢の疑問に芽羅が否と答えた

芽「俺が知ってるなかでも

珍しい部類だと思う」

永「なに、同じビデオを流すなら

一度に終わらせた方が

早いと思っただけだよ」

芽遠「「うわっ!」」

龍「永岡先生...いつの間に...?」

芽「いや、お前もな?」

龍「俺はいま来て

二人が驚く姿を見ただけだ」

永「私はノーコメントとしておくよ

さて、そろそろ授業始めるよ」

永岡先生がその場から離れていく

遠「なぁ龍、今の先生...」

尚「俺と龍がいつも手伝ってるから

よく話すんだよ」

龍芽「「なんだ、終わったのか」」

龍「もうしばらく

かかるかと思ってたのに」

芽「てか、手伝ってるというより

手伝わされてる、だよな」

尚「二人揃って残念そうな顔するな!」



授業二時間分に当たるビデオのため

一時限目の終わりとともに

小休止が挟まれることになった

永岡先生は再び龍たちの元に来ていた

永「何事もなく終わると良いんだけどね」

龍「案外、動かないかもしれませんよ?」

永「そう願いたいものだね

いざという時はよろしくね?」

龍「...頼む相手が

違うんじゃないですか?」

永「そうかな?〈彼ら〉もだけど

君だって慣れてるだろう?」

龍「まぁ、それはそうですけど...」

永「それに、この場で

おおっぴらに動くなら

君の方が適役だろう?

じゃ、頼んだよ」

龍「あ、ちょ...せめて

可否の言葉くらい

聞いて行ってほしいもんだ」

芽「まぁまぁ、今に

始まったことじゃないだろ

それより、何が出るんだ?」

尚「そもそも出るのか?」

遠「なに言ってるんだ

コレ動く気満々だろう」

尚「え、遠矢わかるのか?」

遠「もちろん、このぐらいは基本だ」

尚「どこの基本だよ!」


異変は休憩が終わった

数分後に起きた

長々とした歴史のビデオを

投影していたスクリーンに

二人分の影が映し出された

?「うわぁ!人がいっぱいだ!」

?「ちょっと、待ちなさいよね!」

ぽかんと惚ける生徒を無視して

二人は会話を続けて行く

どうやら姉のレンゲと

弟のセイルの二人組らしい

二人分の影は地面から

数センチ浮き上がり

ふわふわと不安定そうに揺れていた

女「ど、どうなってるの?」

「ゆ、幽霊とか?」

男「おい龍...これどういうことだ?」

「お前なら説明できるよな?」

龍「そんな全てのことを

知ってるわけないだろ」

戸惑う彼らをよそに

二人は物珍しそうに辺りを見渡した

セ「ほんと、面白そうなとこだよな」

レ「そうね...っ!

セイル!早く戻るわよ!」

セ「姉ちゃん何いきなり

慌て...て...やばっ!」

二人は何かを見つけて

慌てた様子で姿を消した

尚「なんだったんだ?」

永「...さぁね」

ざわめく部屋の中で

一人の先生が渋い顔で首を傾げていた


龍「永岡先生、今日残業でしたよね?

差し入れに稲荷寿司でもどうです?」

その日の昼休み、龍は

職員室の永岡先生を訪ねていた

永「それは助かるな

よろしく頼むよ」


龍「と、いうわけで

二人とも協力頼む」

尚「えぇー、またかよ...

稲荷寿司だけなら

一人でも作れるだろう」

芽「だけなら、な

特典付きだから良いじゃんか

前やったときの学食の食券とか

貧乏学生にとっては

かなりお得なんだしさ」

尚「それはそうだけど...」


以前にも

同じようなことをした

経験があるため

龍の料理の腕は

職員室じゅうの先生に知られていた

先「ん?海森が作るのか?」

「なんだって?是非俺のも頼む!」

「私も欲しい!」

「なに作ってもらおうかな?」

美味しい差し入れを

再びもらうチャンスということで

話は一気に職員室全体に回ることになった

こういった話題の

伝わる速さは尋常ではない

気付けばその場にいた先生全員から

注文を受けることとなっていた

食材の手配や人手の確保

寮長への報告まで

手際良く決まっていった


話題の元となった二人が

目配せをしていたことには

気付かないままに


尚「こんな大量の食材

どうやって調達したんだ?」

龍「さぁ?家庭科の柏田先生に

手配してもらったからなぁ」

芽「ハハ、職権乱用だな」

龍「俺らが言えたことじゃないって」

遠「あれ、お前ら何してるんだ?」

尚「遠矢こそ何してるんだよ?

もうすぐ寮の門限だぞ?」

遠「それはそっちもだろう?」

芽「俺らはちゃんと事情説明して

許可もらってあるんだよ」

遠「事情ねぇ...ちょうど良さそうだな

よし、俺も手伝おう」

尚「へ?いきなり何を...」

龍「俺らはいいけど

まず寮長に許可もらってこい」

尚「え、龍、そんなあっさり

決めていいのか?」

龍「なにも問題はないからな

人手は多い方が楽だし」

遠「サンキュ!ところで寮長て誰?」

昌「呼んだか?」

芽「あ、ちょうどいいところに

彼が二年副会長で男子寮寮長の

岸本 昌幸先輩だ」

龍「こっちは転入生の時雨 遠矢です

例の夜食の件で彼にも

手伝ってもらいたいんですけど

いいですかね?」

昌「いいだろう

ただし、追加で生徒会室にも

適当に持って来てくれ」

遠「分かりました

ありがとうございます」


数十分後の家庭科室には

美味しそうな匂いが溢れていた

龍「いや、遠矢がいて助かったよ」

遠「なに、単なる利害の一致だ」

尚「さっさと運んで

俺らも晩飯にしようぜ?

俺もう腹減ったよ」

芽「はいはい、じゃあ

尚の腹の虫が先生たちの前で

合唱を始める前に終わらせないとな」

龍「俺と遠矢は生徒会室に届けてくるから

二人は先に職員室に

運び始めといてくれ」

尚「え?なんで二人?」

芽「遠矢は生徒会室の場所知らないだろ」

尚「なら龍ひとりでも...」

龍「さぁ、さっさと持って行こうぜ」

芽「数多すぎて二人じゃまず無理だから

早めに戻ってこいよ」

遠「ほいほーい」

芽「尚、置いてくぞ」

尚「あ、待ってー...」


紅「二人ともご苦労様」

二人を迎え入れた紅葉は

扉を閉じて結界を張った

龍「やっぱりか。で、進展は?」

悠「あったらこんなことしてないって」

龍「それもそうか」

桃「隣の子は転入生だっけ?

通りで覚えがないわけよね」

咲「さて、何か進展あれば

連絡してもらえる?」

龍「もちろん。じゃ、失礼します」

昌「龍弥、受け取れ!」

生徒会室を出ようとした龍は

昌幸が投げてきたモノを

慌ててキャッチした

龍「ちょ...これって...」

昌「心配するな、もちろん後で

回収するって」

龍「...分かりました」


家庭科室に戻ると

他の二人もちょうど帰ってきていた

龍「あとどのくらいだ?」

尚「三分の一ってところだ」

芽「全員で行けば終わる量だよ」

遠「よし、ならさっさと終わらせよう」

尚「...あれ?龍、その腕時計

どうしたんだ?」

龍「あぁ、ちょっと借りてるんだよ」

尚「でもそのデザイン

どこかで見覚えが...」

芽「おい、二人とも!

何ぼさっとしてるんだよ?

職員室はすぐそこだぞ」

尚「あ、悪い悪い」

どこで見たのか考えていた尚は

芽羅に急かされて

考えていたことを忘れてしまった


先「いやぁ、やっぱり

海森たちの夜食は最高だな」

芽「じゃあ今採点してる

テストの点、お願いしますよ?」

先「それとこれとは話が別だ」

芽「えぇ、先生のケチ」

先「そもそもお前は底上げ必要なほど

低くないだろうが、この確信犯」

芽「へへ、バレました?」

龍「永岡先生、どうぞ」

永「ありがとう

本当に料理上手いね」

天井が小さく軋んで音を立てる

永「うん、やっぱり龍弥君に頼んで

正解だったな。まだ残りは

家庭科室にあるのかい?」

龍「はい、ありますよ」

尚「あっ、なんで言うんだよ?

後で食べようと思ってたのに...」

しょんぼりとした尚の姿に

周りから小さな笑い声が上がった

尚「な、なんだよ?」

遠「いや、尚があんまりに

残念そうなもんだから...」

芽「それじゃ寂しがりやの仔犬だって」

美「あ、なんか分かるかも」

尚「ちょ、美奈先生まで!

ひどいですよ!」

それからすっかり拗ねた尚は

今度龍が、好きなもの作ってやる

と言うまで口を利こうとしなかった


尚「龍!本当に何でもいいのか?」

龍「まぁいいけど...俺が

作れるものにしろよ?」

尚「もちろん!てか、大抵のもの

作れるじゃないか」

ようやく機嫌を直した尚含む四人は

家庭科室に戻ってきていた

鼻歌交じりの尚は

勢いよく家庭科室の扉を開けていた

遠「機嫌直してくれてよかったな」

芽「あれじゃむしろ良くなりすぎだろ」

尚「う、うわぁ!」

少し遅れて歩いていた二人は

尚の声に驚いて家庭科室の中を見た

芽「尚、どうした...て、昼間の二人⁉︎」

遠「あぁ、やっぱりか」

天井から見えない糸に絡まるようにして

ぶら下がる二人を見て

尚と同じく驚く芽羅とは対照的に

遠矢はむしろ納得した様子だった

尚のすぐ隣を歩いていた龍は

さも当たり前かのように

身動きできなくなっている

二人の元に歩いて行った

セ「あーもう!なんだよコレ!」

レ「もう...だから言ったじゃない

罠の可能性が高いって」

もがき続けるセイルと対照的に

諦めたらしいレンゲは静かに話していた

レ「ねぇ、いなり寿司に

したのはわざとなの?」

龍「まぁ、人の子の間じゃ

油揚げは狐の好物とされてるからな」

あと、これは永岡先生からの

リクエストだったし

と、龍は続けた

レ「やっぱりクヤか...

まぁ狐の好物なんて

それぞれ好き好きだし

セイルが好きだったのは

単なる偶然よ」

人を見に来たけど

クヤに見つかったから

山に帰らなきゃいけない

などとレンゲが語る間に

尚は更に驚きの声を上げていた

尚「え、あの二人って

狐だったのか?」

遠「あぁ、そうだけど

気付いていなかったのか?」

芽「いや、気付かないのが

普通だからな?」

呆れる遠矢に芽羅が常識で突っ込む

そのとき、家庭科室の扉が開いた

咲「話は聞かせていただきました」

永「最初から最後までね」

入ってきたのは生徒会役員と

永岡先生だった

芽「一体いつの間に来たんですか?」

紅「私たちは今着いたところ」

永「こちらは君たちが職員室を出てすぐだ」

遠「生徒会役員の方々は

どうやって会話を?」

龍「これだよ」

龍が掲げた腕には

例の腕時計が付いていた

昌「通信、位置情報etc...便利なものさ」

桃「さぁ、一年組は寮に戻りなさい

ここから先は私たちに任せてね」


悠「さて、紅葉もいることだし

この共用ロビーでいいか?」

遠「場所については特に指定はない

隠すほどのことでもないからな

ただ、話すなら円香...

同じく今日転入してきた

久遠円香を呼んでくれ」

紅「分かったわ、呼んでくる」

龍「借りていた腕時計は

ここに置いていくぞ」

俺たちは先に部屋に戻るからな

と、続ける予定だったのに

悠介と遠矢、両者から無言の圧力

そのくせ尚と芽羅が

こっそり席を立とうとするのは

止める気がないらしい

龍(だから、なんで俺を巻き込む?

まだ役員じゃないって)

思わずため息をついた時

紅葉が円香を連れて戻ってきた

尚と芽羅は逃げ損ねて

再び座り直す羽目になった

円「今晩は」

紅「状況についての

大まかな説明はしといたよ」

悠「じゃ、早速二人が何者なのか

聞かせてもらおうか」

二人の説明によると

悪霊払いを生業とする久遠家と

その補佐を担っている時雨家から

地域一帯に力が集まってきている

この学校に派遣されたらしい

紅「たしか久遠家といえば

京の護りで有名な名家よね」

円「はい。今は私の兄が

その御役目を果たされています」

悠「この周辺には他にも学校はあるぞ?」

遠「もちろん、他の学校にも

他の家の者が向かっている」

龍「力が集まっている原因とかは

分かっているのか?」

円「いえ、探ってはいるのですが

いまだ、掴めていません」

紅「じゃ、しばらくは様子見になりそうね

咲雪会長に報告して

生徒会も連携して動く、てことで

どうかしら?」

円「はい、ありがたいです

よろしくお願いします」

紅「じゃ、今日は解散!

芽羅くん、遠矢くんの部屋に

案内してあげて

あなたなら部屋番号知ってるでしょ?」

芽「はいはい」


芽「で?話すことはあれで全部か?」

遠「なんのことだ?」

芽「龍の事、最初から知ってただろ

人に囲まれていた割には

龍が一時限目の準備で戻った時

すぐ見分けがついてたし

さっきの話し合いに

龍を同席させたがってたし」

遠「...協力してもらえそうな人は

事前にピックアップしてあったんだ

まさか生徒会全体が

あんな風だとはおもってなかったがな」

遠矢が取り出した書類には

龍と悠介の名前と写真が入っていた



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