食事は誰かと食べたいモノ
悪魔は人の生みだす欲望を糧にして生きていくらしい。
そして普段は常闇と呼ばれる世界から人間の欲望を吸収している。
しかしルカのように抜け出してくる悪魔がいる。
抜け出してきた悪魔は自分では欲望の吸収を抑えることができない。
だから契約者を決め契約をし、契約者以外の欲望の吸収を断ち切ることで欲望を吸収し過ぎて暴走することを防ぐらしい。
そして俺はルカに選ばれた。
「ところで契約ってどうやるの? 」
「う、うん……えっとね。……交」
「え? 」
「だから性交だってば。何回も言わせないで……」
「つまり、その、俺とヤるってこと?」
「そ、そうだよぅ。契約は一人にしか出来ないから……は、初めてをあげた人としか結べないんだよ」
「ルカは処女なの? 」
「うん‥‥ユ、ユウリは? 」
「まだヤったことないよ」
「スッゴくスッゴくスッゴく嬉しい」
「え? 」
「ユウリに初めてを貰ってもらえるし、ユウリの初めてになれる」
「不安じゃないの? 」
「ユウリだから、怖くないよ。ユウリは怖い? 」
「少しね。もうちょっとしてからにしよ」
契約方法が性交なんて聞いてないよ。それに俺もルカも初めてだから何かと手際が悪くなりそうだ。何よりもやり遂げる自信がない。でもやらなければ俺は殺される。しかもルカに手を下させる。そんなことは絶対に嫌だ。
やるしかない。やるしかないん……
ぐうぅ~
お腹が鳴った。
その前にまずは夜ご飯だ。
「ねぇルカ、悪魔もご飯食べるの? 」
「食べても食べなくてもどっちでも変わらないよ」
「味はわかる? 」
「多分わかるよ」
「じゃあ一緒に食べよ、一人で食べるより二人で食べる方が楽しいし」
「うん!!」
ルカは嬉しいそうに俺の胸に顔をうずめてくる。俺はルカの頭
を一撫でしてから立ち上がった。
「じゃあ作ってくるね」
「まって……一緒に作りたい」
台所に行こうとする俺の袖を引っ張る。
「うん、手伝ってもらおうかな」
「やった!!」
ルカが無邪気に喜ぶ。
台所に向かう途中でもルカは俺と手を繋いだ。手を繋ぐ時は得意気な顔をする。そこが可愛い。
台所に着き
「ルカ……手繋ぎっぱなしじゃ料理できないよ」
「残念、もっと繋いでたかったのに」
「まずは手洗いだよ、こんな風に水で濡らしてから石鹸つけて両手をこすりあわせて」
「ユ、ユウリに何これ? スッゴい面白い。白いこのフワフワしたの何?」
石鹸の泡でこんなにはしゃでなんて、やっぱりルカは中身は子供らしい。
「それは石鹸の泡、手の汚れを落としてくれるの、よく手をすすいで」
「うん」
とりあえず今日はカレーでいいかな……簡単だし。
ルカに米のとぎ方と炊き方を教える。
釜から米をポロポロと落としているけど、まぁ上出来だろ。
「ユウリ次は!!? 」
包丁を使わせるのは怖いな……
「とりあえず材料切るまでは休憩ね」
少しルカは不服そうな顔をする。
俺はじゃがいもの皮を剥いていく、最初は苦手だった皮むきも今では難なくこなせる。
他の具材もどんどん切っていく俺を見てルカが目をキラキラさせながら
「ユウリって料理上手」
「うん、ばあちゃんにだいぶ仕込まれたからね、だいたいのものは作れるよ」
「私にも料理たくさんおしえて」
「いいよ」
具材を切り終えて煮込む。
野菜が柔らかくなってきたらルーを入れてさらに煮込む。
ルカは鼻をクンクンさせて
「いい匂い」
って言っていた。
良い頃合いにご飯が炊ける。
皿に盛り付けてテーブルに運ぶ。
「ルカ、食べ物を食べる時は手を合わせて”いただきます”って言ってから食べてね」
「うん、いただきます」
ルカはカレーをほおばる。
口をはふはふさせながら
「おいひい」
と満面の笑顔で言った。
カレーを気に入ってくれたみたいだ。ルカは残さず食べた。
やっぱり誰かと食べる食事は良いものだ。






